公的な医療保険や介護保険は、リタイアした高齢者であっても負担を求められます。
確実に徴収できるよう、現役世代の給与天引きと同様に年金天引きも(金額によっては)行われています。
ただ種類によっては口座振替にすることもでき、現役世代の子に払ってもらうことも考えられます。
年金天引きと口座振替を選べる場合はどのような観点に注意すべきでしょうか?
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目次
年金天引きの要件
公的年金の受給者が支払う社会保険としては、国民健康保険・後期高齢者医療保険・介護保険が考えられますが、一定の要件が当てはまる方が天引きとなります。
・ 国民健康保険または後期高齢者医療保険の場合、介護保険との合計額が年金額の2分の1以下
・ 国民健康保険の場合は、加入者が全員65歳以上で世帯主が含まれている
口座振替を選択できるか?
後期高齢者医療保険
75歳以上が加入する後期高齢者医療保険は、年金天引きの対象者であっても加入者が申請すれば口座振替にすることが可能です。
また口座名義は加入者本人以外にすることもできます。
国民健康保険
国民健康保険は現役世代が世帯内にいると対象外になるので、年的天引き対象者は後期高齢者医療保険より限定されますが、こちらも納付義務者である世帯主が申請すれば口座振替にすることが可能です。
こちらも口座名義は加入者本人以外にすることもできます。
介護保険
介護保険だけは、年金天引きの要件にあてはまると口座振替は選択できません。
口座振替利用の注意点
口座振替にする場合に、考えておいたほうがいい点を考えます。
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計画的に払えるか?
年金天引きに代えて口座振替にすることはできますが、納付書払いにすることはできません。
口座名義は加入者本人でなく親族のものでも構いませんが、指定した口座が残高不足にならないだけの資力があるかが問題です。
万が一滞納が発生すると、年金天引きから振り替えた方は年金天引きに戻る場合があります。
天引き後の年金が極端に少なくならないよう、年金天引きには前述の要件が設けられています。口座振替を選んだ場合は計画的に払えるかが問題です。
税金への影響
例えば親の後期高齢者医療保険料を、同じ世帯にいる子の口座から負担した場合は、負担した子の所得税・住民税の節税になります。
具体的に言えば、子が負担した保険料は社会保険料控除という所得控除になります。
所得税は課税所得が高いほど、税率は高くなります。
例えば親の税率が10%、子の税率が30%であれば、子に負担してもらったほうが節税効果は高くなります。
ただ親側が、相続税がかかるほどの財産を所有している場合は、このようにするのが得であるとは言い切れません。
親に十分な財力が無く、同世帯にいる子の所得税率が高くなる場合は、子の口座名義で口座振替を検討してみるといいでしょう。(執筆者:石谷 彰彦)