昨年以降、生保会社や損保会社から続々と「認知症リスク」に関連した保険商品や特約等が続々と発売されており、異例の大ヒットを遂げているようです。
これは、長寿化が進む中で自分や家族が認知症になった場合の費用負担などに対する漠然とした不安感が根強いことの表れでしょう。
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今回はその「認知症リスク」についてお話したいと思います。
目次
65歳以上の認知症患者数はどんどん増加する見込み
下図をご覧ください。
これは内閣府が作成した資料ですが、これによれば65歳以上の認知症患者数は、平成24(2012)年の時点で全国に約462万人と推計されております。
平成37(2025)年には約700万人前後とされ、13年で約1.5倍にも増える見通しです。
これは、65歳以上の高齢者のうち、5人に1人が認知症に罹患する計算となります。
あくまで推計ですので現実との乖離はあるかもしれませんが、現在ご家族の中に60歳以上の方がいらっしゃれば、約20%の確率で遭遇するかもしれないということです。
認知症状が重い場合、介護費用は倍以上
家計経済研究所の調査では、要介護1の場合で1か月の介護にかかるお金は「平均2万1,000円」とされていますが、同じ要介護度でも認知症状が重い場合は「平均5万7,000円」と認知症状が中程度以下と比べて倍以上も違うと報告されています。
平均寿命と健康寿命との差、すなわち健康上の問題で日常生活に影響がある期間は、最新の統計から推計しますと男性が8.84年、女性が12.35年となります。
この期間すべてに上記の介護費用がかかる訳ではありませんが、少なくともライフプランニングにおいて、男性は5年程度、女性は8~10年程度は介護費用を組み入れてシミュレーションしてみて対策の是非を判断されても良いのではないでしょか。
認知症となれば周囲の方へもかなりの負担が出ます
単純な介護だけでも費用負担や就労制限、精神的負担等周囲の方々にとってはかなりの重荷ですが、認知症の場合はさらに監督責任が重くのしかかる場合があります。
民法714条で、重い認知症の人のように責任能力がない人の賠償責任を「監督義務者」が負うと定めてあります。
記憶に新しいのが2007年に愛知県大府市で起きた列車事故の訴訟事例です。
上図のような背景があり、介護する家族に賠償責任があるかどうかが問われた裁判です。
最終的には、最高裁判決で妻や長男は上記の「監督義務者」に当たらず、賠償責任なしとされましたが、一審、二審ではそれぞれそれなりの賠償責任が言い渡された経緯があります。
状況等によっては結果が大きく異なることがある裁判において、これは、認知症徘徊者をお持ちのご家族にとってはかなりのプレッシャーになり得る事例です。
「認知症リスク」をどう考えればいいのでしょうか?
ここまで話してきた認知症リスクですが、それでは一体どう考えればいいのでしょうか。
私は次のように分けて考えたらいいのではないかと思っております。
(2) 監護・介護負担リスク
(3) 資産管理リスク
当たり前ですが、個々の資産状況や家族状況等によってどこまで考えなければいけないかは異なります。
(1) 費用負担リスク
介護費用等を含めたライフプランニングの結果、必要であれば冒頭で触れました認知症リスク関連の保険で補填するのがひとつの選択肢です。(お金の準備は保険商品だけが得策とは限りませんが、目的ごとに準備することには有益です)
(2) 監護・介護負担リスク
先に述べました賠償責任リスクと人的負担やそれに伴って発生する諸々の諸問題も考えなければならないでしょう。
賠償責任リスクについては、発生した場合高額になる可能性がありますので認知症リスクまで補填できる賠償責任保険特約などを付帯されるといいでしょう。
人的負担やそれに伴って発生する諸々の諸問題とは、施設に全て任せる場合は別ですが、家族等で監護・介護する場合はその監護・介護する方のライフプランの変更、経済的悪影響、その方への感謝や誠意の表明などです。
このことを軽くみますと、後々、家庭状況や相続・遺産分割にまで悪影響が出る可能性がありますので、お気を付け下さい。
(3) 資産管理リスク
お金や人が揃っていたとしても、資産管理上の問題が発生することも想定されます。
法定・任意後見制度、民事(家族)信託制度、遺言制度等の利用の検討も含めてどのように管理していくのがいいかを考える必要もあるでしょう。
このことも相続・遺産分割に悪影響を及ぼす可能性があります。
最後に
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まずは、認知症リスクに対しては費用面だけでなく、トータル的な視野と対策が必要であることを理解し、御自身にはどのリスクがどの程度あるのかを具体的に想定してみて下さい。
漠然とした不安感で保険に加入するだけでは周囲の方が安心できるとは限りませんので…。(執筆者:小木曽 浩司)