大学は本当に、お金がかかります。
万全の用意をしたつもりでも、いざ進学を目前にすると受験料が予想外にかかったり、滑り止めの入学金が必要だったり、新生活への準備、と次から次へと必要経費がでてきます。
そんなときの救世主、低金利のお得な資金調達方法といえば、「独立行政法人・日本学生支援機構(JASSO)の奨学金」もしくは「日本政策金融公庫の国の教育ローン」ではないでしょうか。
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しかし、この2つの借りるという選択、実は色々と異なる点があります。あなたにとって、どちらがお得で使い勝手がよいのでしょう?
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目次
1. 契約者の違い
奨学金は、契約者は学生です。従って、返済の義務も本人が負うことになります。
手続きに関わる説明会や賃借に関わる手続きも、本人が行うことになります。一方、教育ローンでは、保護者が契約者となります。
奨学金にしても、国の教育ローンにしても貸与ならば借金をすることに変わりはありません。返済するのは誰か、しっかり親子で話し合いましょう。
2. 借りられる金額
現在、奨学金には給付型と貸与型があります。
平成29年度より始まった給付型は文字通り、返済不要で頂ける奨学金です。
ただし、家計支持者が住民税(所得割)非課税もしくは生活保護受給世帯の学生が、大学、短期大学、専修学校に進学する場合に限り月額2万円から4万円給付されます。
成績についても、調査書の学習成績概評は「A」であることが求められます。
貸与型には、無利子で借りられる第一種、有利子となる第二種があります。
無利子で借りられる第一種
第一種は月額で
国公立
【自宅通学】 3万円または4万5,000円
【自宅外通学】 3万円または5万1,000円
私立
【自宅通学】 3万円または5万4,000円
【自宅外通学】 3万円または6万4,000円
有利子となる第二種
第二種は、月額3万円、5万円、8万円、10万円、12万円の中から選択することになります。
但し 私立大学に限られますが、
薬・獣医学は、12万円に2万円
の増額が可能です。
奨学金の場合、いずれも月額金額が毎月口座に振り込まれます。
そのため、学費などまとまった金額が必要なときは、積み立てる感覚で手を付けないことが必須条件となります。
とはいえ、4年間継続して借りるとしたら、第一種では144万円~約307万円、第二種では144万円~576万円まで借りることができます。第一種、第二種と併用することも可能です。
また、入学時には「入学時特別増額」として10万円から50万円まで10万単位で増額することができます。
しかしこれは、「国の教育ローン」に申し込んだけれども利用できなかった学生が対象です。
加えて、入学した月の奨学金の増額となるため、入学前に必要となる入学金としては使用できません。
国の教育ローンでは、今後1年間に必要な教育資金が子ども一人につき最高350万円まで、(外国の短大・大学・大学院に6か月以上在籍するときは450万円まで)一度に借りることができます。
ここでいう教育資金とは、入学金や授業料などの納付金だけでなく、受験に伴う交通費・宿泊費などから進学後必要となる住居費や教科書などの教材費、パソコン購入費、学生の国民年金保険料など多方面にわたります。
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3. 金利
奨学金第二種の金利は、申し込み時に「利率固定方式」もしくは「利率見直し方式」を選択します。
貸与終了時に決定した利率が返還完了まで適用される「利率固定方式」に対して、「利率見直し方式」はおおむね5年ごとに3%を上限に見直されます。
ちなみにH29年4月中に貸与終了した学生の貸与利率は、固定が0.23%見直しは0.01%です。
しかし契約時に、貸与終了後の状況を読み取ることは難しいともいえるでしょう。
利率の算定方法は、貸与期間が終了する月の一定期間前までなら、変更できることを覚えておきましょう。
国の教育ローンの金利は、平成29年8月現在、固定金利1.81%です。
しかし母子・父子家庭、世帯年収200万円以内の方、または子ども3人以上かつ世帯年収500万円以内であれば、年1.41%の金利となります。
4. 申し込み方法・申し込み期間
奨学金の申し込み方法は、2つあります。
高校3年在学中に高校を通じて申し込む「予約採用」と進学後大学から行う「在学採用」です。
予約採用は、平成29年の場合、2回申し込み時期が設けられています。
とはいえ5月中旬となる第一回目は給付型、第一種、第二種の全ての申し込みが可能ですが、2回目の10月は第二種のみです。
また、在学採用についても、受付は1年に1度です。募集時期は学校によって異なるため、時期を逃すと借りることはできません。ご注意ください。
一方教育ローンは、受験前、合格前でも365日いつでも申し込みOKです。
・ 「住民票の写しまたは住民票記載事項証明書」
・ 「運転免許証」
・ 「源泉徴収票または確定申告書」
・ 「最近6か月分以上の預金通帳」
・ 「住宅ローン(家賃)と公共料金の支払いを確認できるもの」
・ 「利用内容が確認できるもの」
など必要書類を日本政策金融公庫に郵送すれば、口座振り込みまで約20日です。
全ての手続きは、郵送またはスマホやタブレットでもできるため、来店する手間も省けます。
5. 採用基準
奨学金にも国の教育ローンにも、採用基準が設定されており、誰もが採用されるわけではありません。
奨学金の場合、成績と世帯所得に以下のような条件があります。
予約採用:第一種
【成績】
・ 高校の成績平均値が3.5以上
【所得】
・ 世帯人数により異なります。3人世帯なら給与所得上限は657万円~5人世帯なら922万円までです。
予約採用:第二種
【成績】
・ 高校の成績が平均水準以上。
・ 特定の分野において、特に優れた資質や能力がある
【所得】
・ 給与所得上限1,009万円(3人世帯)~1,300万円まで(5人世帯)
在学採用:第一種
【成績】
・ 大学1年 … 高校最終2年成績が3.5以上
・ 大学2年以上 … 大学での成績が属する学部(科)の上位1/3 以内
【所得】
・ 在学採用では、世帯人数、大学の国公立か私立か、自宅か下宿かの3つの点について、以下のように給与所得の上限額が決められています。
・ 3人世帯の国公立・自宅通学者上限662万円~5人世帯私立下宿者1,124万円まで
在学採用:第二種
【成績】
・ 大学における成績が平均水準以上
・ 特定の分野で特に優れた資質・能力がある
・ 大学での学修意欲があり、学業を確実に修了できる見込みがある
【所得】
・ 3人世帯の国公立・自宅通学者上限1,012万円~5人世帯私立下宿者1,502万円まで
国の教育ローンでは、扶養している子どもの人数によって、世帯年収の上限が変わります。
・ 子ども1人790万上限~5人1,190万円まで
6. 返済方法
奨学金の返済は、貸与が終了した月の翌月から数えて7か月目から始まります。
返済方法は、
・ 1月と7月に増額して返還する「月賦・半年賦併用返還」
を選択できます。
さらに平成29年度からは第一種には、「所得連動返還方式」が採用されました。
これは、毎年の所得に応じて返済額が変わるもので、課税対象所得に9%を乗じて12で除した額が返済金額とされます。
教育ローンでは、返済は借入日の翌月または翌々月からの開始となります。
しかし、設定することにより、卒業までの期間内毎月のお支払を利息のみにすることが可能です。
また、返済期間は、銀行などの教育ローンより長めの15年以内が設定されています。
さらに、交通遺児家庭、母子・父子家庭、世帯年収200万円以内の方は、18年以内にすることもできます。
さいごに
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進学は、子どもが描いた夢へ続く道です。
しかし、近年奨学金の返済が卒業後の学生の大きな負担になっていると、メディアで報道されています。
奨学金には経済困難、傷病、災害等によって返還が難しい場合は、手続きにより減額や期限の猶予ができます。
また国の教育ローンにも、災害による被害を対象に「災害特例措置」があります。
それぞれの方法をまずは精査してください。
そして「使用明細」、「必要な時期」を明確にし、手持ち資金とも考え合わせて、将来の「返済可能額」、「返済時期」についてしっかり検討しましょう。
親も子も、大切な夢が大きな負担に変わらないために。(執筆者:吉田 りょう)