来年度に予定されている健康保険制度の大きな変更として、国民健康保険の財政運営がこれまでの市区町村単位から都道府県単位となります。
この都道府県移管により、どのような影響が出てくるのでしょうか?
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お住まいの地域によっては大きな影響も考えられますし、高額療養費制度の利用にあたってはメリットもあります。
目次
住民税より大きい国民健康保険の地域差
住民税が地域により高い・安いという話もありますが、地域差があり大きいのは国民健康保険のほうです。
市町村単位で違いがあり、保険料方式なのか(地方税の扱いとなる)保険税方式なのかという違いもあります。
個人単位で定額の均等割と、所得に応じた所得割で構成される自治体が多いです。
中には固定資産税額に応じて変わる資産割や、世帯単位で定額の平等割を課す自治体もあります。
東京都内の例
例えば同じ東京都内の例で、葛飾区と三宅村の所得割料(税)率と均等割額・平等割額は下記のとおりです。
平成29年度で介護分を含めています。
所得割の料率(税率)は4%弱の差があり、また葛飾区の均等割だけで、三宅村の均等割 + 平等割を上回っています。
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都道府県移管で何が変わるか?
国民健康保険が都道府県運営になった場合でも、保険料(税)率は市町村ごとに決める点に変更はありません。
都道府県内で保険料率が同じになるとは限らず、市町村ごとの標準保険料率を都道府県が(管内での医療費と所得情報を基に)決めます。
とはいえ、今回の都道府県移管で平準化を目指してはいます。
平成29年8月17日の日経新聞では、大阪・宮城・広島など9府県では府県内で保険料統一を検討すると報道されました。
一方で東京など都道府県内の保険料格差が大きいところでは、統一を検討していないと回答しています。
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高額療養費制度の利用では有利な変更も
以上の話では長所・短所が明確な形では言いにくいのですが、1つだけメリットもあります。
国民健康保険加入者の高額療養費制度に関しては、同一都道府県で転居する限りは多数回該当の通算も認められるようになります。
高額療養費制度・多数回該当とは
ある1月の間で、保険適用医療費については高額療養費制度により自己負担上限額が設けられています。
窓口で上限を超えた負担をした場合は、超えた分が給付されます。
上限額は年齢(70歳未満か以上か)・所得・個人/世帯単位によって変わってきます。
また1年間に高額療養費制度を3回利用すると、4回目からは「多数回該当」となり上限額はさらに引き下げられます。
例えば61歳・単身の住民税課税世帯で一番下の所得区分であれば、自己負担上限額は月5万7,600円です。多数回該当になると、月4万4,400円に下がります。
都道府県移管で得するケース
多数回該当に関してカウントする場合、違う市町村に転居するとリセットされてしまいます。
平成30年度に都道府県移管された後は、同一都道府県内に転居し世帯が維持される場合には通算されます。
例えば船橋市の住民が平成29年4~6月に高額療養費制度を利用していて、8月に浦安市に転居した場合、10月にまた高額療養費制度を利用したとしても多数回該当にはなりません。
しかし都道府県移管後の平成30年4~6月に利用していて、8月に転居するようなケースでは、同じ千葉県内のため転居後も多数回該当が利用できます。(執筆者:石谷 彰彦)