確定拠出年金を掛けていたため確定拠出年金から老齢給付金を受給できますが、これも在職老齢年金と同様に支給停止されますか。

目次
「確定拠出年金」について
「確定拠出年金」は、「公的年金(国民年金、厚生年金保険)」と違い、掛金が個人ごとに明確に区分され、掛金とその運用した利益との合計額で年金給付額が決定されます。
平成29年1月から、iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者の範囲が拡大しました。
確定拠出年金の老齢給付金などの給付決定(「裁定」といいます。)するのは「記録関連運営管理機関等(主には金融機関が共同で設立した会社)」が行います。
しかし、公的年金である老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)などを給付決定するのは「厚生労働大臣」が行います。
このことからも、「確定拠出年金」と「公的年金(国民年金、厚生年金保険)」が別年金制度といえるでしょう。
在職老齢年金が支給停止されていても、確定拠出年金の老齢給付金は受給することができます。
なお、老齢基礎年金は給与の低い高いにかかわらず受給することができます。
在職中に受ける老齢厚生年金(在職老齢年金)と給与との調整
在職中に受ける老齢厚生年金(在職老齢年金)を受給されている方の年金額は、受給されている「老齢厚生年金の月額」と「総報酬月額相当額」により、年金額が調整されます。
また、60歳から64歳までの特別支給の老齢厚生年金と65歳以降の本来の老齢厚生年金とでは支給停止額が異なりますのでご注意ください。
「老齢厚生年金の月額」とは
加給年金額を除いた、特別支給の老齢厚生年金の月額又は老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額
「総報酬月額相当額」とは
給与月額(その月の標準報酬月額) + 直近1年間の賞与合計額(直近1年間の標準賞与額の合計) ÷ 12
60歳から64歳までの在職老齢年金
※年金の支給停止の基準額は、平成29年4月1日現在
・ 「老齢厚生年金の月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が、28万円以下であれば年金は全額受け取ることができます。
・ 「老齢厚生年金の月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が、28万円を超えると以下の一定の計算式に基づき年金が減額されます。
(1) 「総報酬月額相当額」が46万円以下で「老齢厚生年金の月額」が28万円以下の場合
在職老齢年金(調整後の年金支給額)=「老齢厚生年金の月額」-(「総報酬月額相当額」+「老齢厚生年金の月額」-28万円)÷ 2
(2) 「総報酬月額相当額」が46万円以下で「老齢厚生年金の月額」が28万円を超える場合
在職老齢年金(調整後の年金支給額) = 「老齢厚生年金の月額」-「総報酬月額相当額」÷ 2
(3) 「総報酬月額相当額」が46万円を超え「老齢厚生年金の月額」が28万円以下の場合
在職老齢年金(調整後の年金支給額) = 「老齢厚生年金の月額」 - {(46万円 + 「老齢厚生年金の月額」 - 28万円) ÷ 2 +(「総報酬月額相当額」 - 46万円)}
(4) 「総報酬月額相当額」が46万円を超え「老齢厚生年金の月額」が28万円を超える場合
在職老齢年金(調整後の年金支給額) = 「老齢厚生年金の月額」 - {46万円 ÷ 2 + (「総報酬月額相当額」 - 46万円)}
65歳以上の在職老齢年金
(※年金の支給停止の基準額は、平成29年4月1日現在)
・ 「老齢厚生年金の月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が、46万円以下であれば年金は全額受け取ることができます。
・ 「老齢厚生年金の月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が、46万円を超えると以下の計算式に基づき年金が減額されます。
最後に

このように、給与などの報酬額が多いと支給される老齢厚生年金額が調整をされてしまいますので、注意しましょう。
また、調整をされるなら繰下げをする方もいらっしゃいますが、65歳時の本来の老齢厚生年金額から在職支給停止額を差し引いた額が、繰下げによる増額の対象となります(調整後の年金が増額の対象となります)ので、こちらも注意が必要です。(執筆者:社会保険労務士 高橋 豊)