2017年度に入ってからも、社会保障の保険料の値上げや給付減が相次いでおり、暗い気持ちになります。
ただ明るい話題もないわけではなく、例えば雇用保険については、失業率の改善などを受けて、他の社会保障とは逆に、保険料の値下げや給付増を実施しているのです。
雇用保険の保険給付というと、失業した時に受給できる基本手当、いわゆる失業手当を思い浮かべるかもしれませんが、例えば育児休業給付であれば、在職中でも受給できます。
目次
父母が共に育児休業を取得すると、受給できる期間が2か月延長へ
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「育児休業給付」とは雇用保険の加入者が、1歳未満の子を養育するため、育児休業を取得した時に、最大で休業を開始する前の給与の67%が、数か月ごとに支給される制度です。
このように「1歳未満の子」という要件があるので、育児休業給付を受給できるのは、原則として
になります。
「パパ・ママ育休プラス制度」
ただ父母が交代、または同時に育児休業を取得し、「パパ・ママ育休プラス制度」を利用する場合には、子が1歳2か月に達する日の前日まで、育児休業を取得できるのです。
そのため育児休業給付を受給できる期間も、同じ日まで延長されるのですが、育児休業給付が支給されるのは、父母それぞれで1年(母は産後休業の8週間と併せて1年)が、上限になっております。
保育所に入所できない場合などには、受給できる期間が6か月延長へ
このように育児休業給付を受給できる期間は、子が1歳に達する日、または1歳2か月に達する日の、前日までになります。
しかし次のいずれかに該当したため、子が1歳に達する日、または1歳2か月に達する日以後も、育児休業を取得する場合には、子が1歳6か月に達する日の前日まで、育児休業給付を受給できるのです。
・ 保育所(無認可保育施設は除く)に入所を希望し、申込みを行っているが、入所できない場合
・ 子の養育を行っている配偶者が死亡した、病気になった、産前産後休業に入ったなどの、やむを得ない事情により、養育が困難になった場合
2017年10月1月からは、受給できる期間が更に6か月延長へ
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保育所への入所は基本的に年度初めになるため、子が1歳6か月に達する日の前日まで、育児休業給付を受給した直後に保育所に入るのは、スケジュール的に難しくなります。
また保育所に入れなかったとしても、育児休業を更に延長できない場合があるため、仕事を続けながら育児をするのが難しくなります。
そこで2017年10月1月からは、上記のいずれかに該当したため、子が1歳6か月に達する日以後も、育児休業を取得する場合には、子が2歳に達する日の前日まで、育児休業給付を受給できるようになりました。
育児休業給付の受給を延長するには、改めて確認書類を提出する
この改正の対象になるのは、
になります。
また子が1歳6か月に達する日の翌日以後についても、上記のいずれかに該当することを確認するため、改めて確認書類をハローワークに提出しなければなりません。
なおパートやアルバイトなどのうち、雇用期間の定めがある方については、子が1歳6か月に達する日の翌日時点において、子が2歳になるまでの間に、その労働契約が満了することが、明らかでない必要があります。
子が3歳になるまで利用できる、年金を減額させない「養育特例」
このように育児休業給付が利用しやすくなっても、長期間に渡って仕事から離れることへの不安などから、男性はなかなか育児休業を取得できないと思います。
そこで育児休業を取得しながら一部だけ働く、「半育休」という働き方が注目を集めているのです。
育児休業の期間中に働いてしまうと、育児休業給付が受給できなくなってしまう気がしますが、短時間勤務などにより、月80時間以内の勤務にすれば、引き続き受給できます。
注意点
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・ 給与と育児休業給付の合計額が、休業を開始する前の月給の80%を超える場合には、育児休業給付は減額されます。
・ 給与だけで休業を開始する前の月給の80%以上になる場合には、育児休業給付は支給されません。
・ 短時間勤務による僅かな就業であっても、出勤日、出勤日数、出勤時間などが明確に定められている「定期的な就業」の場合には、育児休業は終了したものとみなされる場合があります。
そうなると育児休業の期間中の、社会保険(健康保険、厚生年金保険)の保険料の免除(保険料を納付したものとして取り扱われる)が、受けられなくなってしまうのです。
こういったケースに該当した場合には、年金の減額を抑えるために、子が3歳になるまで、年金を減額させない特例、いわゆる「養育特例」を活用するのです。
「養育特例」により子が生まれる前の月給で、老齢厚生年金が算出される
短時間勤務になると年金が減額する場合が多いのですが、それは原則65歳から支給される老齢厚生年金は大まかに表現すると、
です。
また養育特例を受けると年金が減額しないのは、
です。
この養育特例を受けたいという場合には、「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」という書類を、年金事務所に提出します。
お勤め先が養育特例を忘れていたら、自分で手続きを行う必要がある
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養育特例は育児休業給付や保険料の免除のように、多くの方に周知されている制度ではありません。
そのためお勤め先の社会保険事務の担当者が、養育特例を受けられる従業員に対して、必要な手続きを説明していない場合があるのです。
もしこのようなケースに該当した場合には、社会保険事務の担当者に対して、養育特例を受けたいとお願いしてみるのが良いと思います。
すでに退職している場合
「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を自分で記入し、お勤め先の所在地を管轄する年金事務所に行って、または郵送で提出します。
いずれにしろ遡って養育特例を受けられるのは、過去2年間になりますので、できるだけ早めに手続きをする必要があるのです。(執筆者:木村 公司)