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【投資信託】運用手数料引き下げ競争が激化 低コストの「インデックス運用」で指摘される問題とは

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【投資信託】運用手数料引き下げ競争が激化 低コストの「インデックス運用」で指摘される問題とは

投資信託の運用管理手数料に相当する「信託報酬」の引き下げ競争が激しくなっている

若者層をはじめ投資の運用コストに敏感な個人投資家が増えていることが背景にあるが、そういったニーズを取り込もうと、投信業界では2010年代に入ってから、信託報酬を競って引き下げる傾向が続いている。

信託報酬の引き下げ競争がここにきてさらに激しくなってきた理由には、2018年1月から導入が決まっている「積立NISA」があると考えられる


現行NISAと運用できる金額が異なる「積立NISA」とは

そもそもNISA(少額投資非課税制度)とは、毎年120万円の投資枠の範囲内であれば、株式や投信の取引による売却益や配当金などの所得に対して5年間は課税がされないという制度(2023年までの投資が対象)のこと。

「積立NISA」は、2018年1月から新設される非課税投資制度で、現行NISAと運用できる金額が異なる

現行のNISAは年間120万円まで非課税で運用できるのに対し、積立NISAでは年間40万円までに引き下げられている

現行と比較すると年間の投資枠はかなり少額になるが、非課税で投資できる期間は現行の5年から20年へ大幅に延長される。

つまり、毎年40万円いっぱいまで非課税投資枠を活用し、20年間続けて積立投資をすれば、非課税の恩恵を受けながら投資できる金額は最大800万円となり、現行NISAの最大600万円よりも多い

2018年からは現行NISAと積立NISAの2つが併存することになるが、両制度の併用はできずどちらかを選択して非課税投資をすることが決まっている。

将来的には「積立NISA」のみへ

国民の長期にわたる資産形成を支援する非課税投資制度という趣旨に照らせば、将来的には「積立NISA」へ制度が一本化されるであろうと筆者は予想している。

尚、現行のNISAは株・投資信託・ETF・REITを買うことができるが、積立NISAでは基本的に投資信託に限られているので、その点は注意が必要だ。

運用管理費用の引き下げ競争であるが、りそなアセットマネジメントが2017年8月29日、信託報酬が業界最低水準のインデックス投信を4本新たに立ち上げた。

これに対抗して、三菱UFJ国際投信は既存のインデックスファンド商品シリーズの信託報酬をりそなアセットの新商品と同水準へ引き下げる方針を示している。

翌年1月から制度が始まる積立NISAをにらみ、運用会社各社はまさに運用手数料の「安さ」を売りにして主導権を握ろうと競い合っているのだ。

ちなみに、東証株価指数TOPIXに連動するインデックスファンドで、これまで信託報酬がもっとも低い商品は、三菱UFJ国際投信が運用する「eMAXIS Slim」シリーズのTOPIX型で年率0.18%(消費税抜き)だったが、りそなアセットマネジメントが投入したTOPIX型が0.17%で業界最安値になる


≪画像元:りそなアセットマネジメント

日経平均株価に連動するインデックスファンドであれば、大和証券投資信託委託の「iFreeシリーズ」日経225型が、2017年10月2日に信託報酬をこれまでの年率0.21%から0.18%(消費税込み)へ引き下げ、業界最低水準となる見込みである。


≪画像元:大和証券投資信託委託iFree

金融庁が発表している「適格投信」の基準とは

「積立NISA」で非課税運用・購入できる投資信託は、「適格投信」として金融庁に選ばれる必要がある。

国内の資産で運用するインデックス投信の場合は信託報酬率0.5%以下などが条件となっており現在も選定作業が進んでいる。

金融庁から2017年3月30日に出された「積立NISAで運用できる投資信託の基準」によると、現在販売されている公募型投資信託5,400本余りのうち、株式がメインの投資先となる投信は3,088本で、そこから積立NISAの選定基準でふるいにかけると、インデックス型・アクティブ型双方の株式投信の中でも基準に合致するファンドは約50本に絞り込まれてしまう。

これは、現在販売されている公募型の株式投信の1%にも満たない。

金融庁が発表している適格基準を具体的にあげると、

・ 運用期間5年以上
・ 存続期間の3分の2以上で資金流入超
・ 純資産50億円以上
・ 毎月分配型でない
・ レバレッジをかけていない
・ 信託報酬が一定水準以下(国内資産インデックスで0.5%以下・国内資産アクティブで1.0%程度以下)など

となっている。

つまり、積立NISAで運用できる商品は、一定水準以上の運用実績と純資産があり、低コストで長期投資に向いている投資信託に限定されているため、株式や毎月分配型投信は適格基準からは除外されるというわけだ。

運用各社は信託報酬の引き下げで目先の利幅を削っても、長期的な視点でみれば顧客層の拡大につながると判断している。

運用業界において健全な競争が浸透する中で、各社が切磋琢磨して良質な投資信託が次々に登場してくることは、個人投資家にとっては大変喜ばしいことだ。

特に、信託報酬の低下が著しいインデックスファンドの活用を中心に、長期にわたって資産形成をめざすべき若年層の人たちにとっては、2018年から始まる「積立NISA」は、低コスト・長期投資・時間分散・運用益非課税といったメリットを享受できる大きな契機となることだろう

低コストのインデックス運用で指摘される問題とは

低コストのインデックス運用が拡大する裏側でしばしば指摘される問題についても触れておきたいと思う。

そもそもインデックス運用とは、市場平均並みの運用を目指すものであるから、市場全体の値動きに連動する投資成果となるよう、例えば日本株投資であれば、平均日経株価を構成する225銘柄の株式へ投資することであるし、あるいは東証株価指数TOPIXを構成する約2,000銘柄の企業の株式を保有することである。

つまり、株価指数の構成銘柄を全て丸ごと買うことがインデックス運用というわけだ。

インデックス運用が急速に広がった結果、日本株市場では投資信託の約8割、年金資金運用の約7割に達してきたといわれている。

低コストで市場平均並みの成績を狙うのが効率的との見方が強まっているからだが、インデックス運用が益々勢いを増していけば、「企業業績や将来の成長期待で個別企業を選別する」という市場の大切な機能が衰えてしまいかねない

アクティブ運用が、業績向上期待のある企業や割安な株価に放置されている銘柄を発見して投資をすることで、市場による価格決定・調整機能が発揮されていることを忘れてはいけない。

もし、世の中の運用全てがインデックス運用になってしまったら、業績の良し悪しや株価の割高・割安に関係なく、全ての銘柄の株価が一斉に上昇もしくは下落していう事態(市場のゆがみ)になってしまう。

アクティブ運用をしているからこそインデックス運用も機能する


インデックス投資を志向する個人投資家の人たちが理解すべきことは、アクティブ運用をしている多数の運用会社・ファンドに頑張ってもらってこそ、インデックス運用も機能するということだ。

市場にゆがみが生じたら、それこそアクティブ運用が収益を狙えるチャンスである。

優良なアクティブファンドが増えていけば、市場は効率化する。そうであれば、優良なアクティブファンドがもっと増えて、アクティブ運用で成果を出すファンドマネージャーが多く出てきてほしいと筆者は願う。

インデックス運用とアクティブ運用は両輪であり、双方が適切に成長していくことが市場の効率化・拡大に繋がり、ひいては私たち個人投資家にとっても有益になる

ただし、インデックス運用同様に、アクティブ運用においても信託報酬の健全な引き下げ競争がおきて欲しいことも付け加えておきたい。(執筆者:完山 芳男)

《完山 芳男》
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完山 芳男

完山 芳男

独立系FP事務所 FPオフィスK 代表 米国公認会計士(ハワイ州)、日本FP協認定CFP(国際上級資格)、1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格) 慶応義塾大学商学部卒業。大手自動車メーカーや外資系企業等の経理財務部勤務を経て、カリフォルニア大学バークレーへ1年間留学し、ファイナンスを履修。帰国後、米系・欧州系企業において経理責任者を務める。2004年愛知県名古屋市にて、独立系FPとして事務所を開所し現在に至る。 寄稿者にメッセージを送る

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