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11年ぶりの標準死亡率改定

日本アクチュアリー会が、11年ぶりに標準死亡率を改定したのを機に、生保各社は来春にも保険料に反映させるだろう。
標準死亡率は、死亡保険用と医療保険用に分かれ、来春からそれぞれの率が変わる。
死亡保険用:0.086%(現状) → 0.068%(2018年度~)
医療保険用:0.040%(現状) → 0.041%(2018年度~)
【50歳男性の場合の実際の死亡率0.264%に対して】
死亡保険用:0.365%(現状) → 0.285%(2018年度~)
医療保険用:0.259%(現状) → 0.191%(2018年度~)
実際の死亡率に対して、生保各社の死亡率は高く、医療保険用は低く設定されている。
死亡保険の保険料は、実際よりも多く死ぬことを前提に、医療保険の保険料は、実際よりも少なく死ぬことを前提に、設定されているのだ。
※医療保険は契約者が長く生きれば生きるほど支払いが多くなるので、死亡保険用とは逆になっている。
実際の死亡率に応じて保険料を設定すれば、死亡保険の保険料は安くなる。
多めに徴収した保険料と実際に支払った保険金との差額が、保険会社の利益だ。
この利益のことを「危険利益」と言う。
保険会社の危険差益の積み上がり額は巨額だ
この「危険差益」は、大手4社(日本・第一・住友・明治安田)の合計で1兆3,500億円(2016年度)と言われている。
生命保険会社の基礎的利益としては、「危険差益」以外に、
設定した事業費率と実際の事業費率との差である「費差益」がある
が、圧倒的に「危険差益」の割合が高く約7割を占める。
今回の標準利率の改定により、生保各社が死亡保険の保険料を引き下げる可能性は高いのだが、改定後も現実とは差があり、既存契約については従来の死亡率で計算された契約が多く残るので、巨額な「危険差益」は急には減らない見通しだ。
県民共済などの共済の場合、多く徴収された保険料は、事業費などを除いて大半が還付される。
これに対して、生保各社は内部留保に回す金額が大きく、契約者への配当は大手4社合計で16年度は5,000億円ほどだ。
生命保険会社は、健全性確保のためとはいえ、死亡率に余裕を持たせて保険料を設定し、巨額の利益を得ているという事実に、契約者はもっと目を向けるべきだ。

生命保険会社により、保険料に差がある事実
生命保険に加入する場合だが、保険会社によって保険料が全く違うということを分かっていただきたい。
例えば、40歳男性の10年定期保険の保険料を比べると、
・大手生保VSチューリッヒ生命の非喫煙優良体割引:約6割
ほど、それぞれ安くなるのだ。
生命保険に契約する場合、保険料は「危険差益」分を見込んで高めに設定されていること、保険会社によって保険料の違いがあることを理解した上で検討していただきたい。(執筆者:釜口 博)