衆院選終了後には、政府・与党で教育無償化についてどこまでやるかの議論がなされ報道されていましたが、推移をみると衆院選における与党の公約とは食い違いも見られます。
2017年11月27日の首相国会答弁では、2018年夏までに制度の詳細を設計して具体化するとのことでした。
その前段階として、2017年12月8日には教育無償化に関する政策パッケージが閣議決定されました。
2020年度に全面実施予定ですが、このパッケージに挙げられた内容を中心に、どこまで話が出ているか整理しておきましょう。
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目次
0~2歳児
幼稚教育のうち、0~2歳児に対する無償化の対象は、すでに行われている生活保護世帯向けの他、住民税非課税世帯向けに限定するとされています。
住民税非課税世帯の第2子以降は2017年度よりすでに無償化されているのですが、第1子に対しても無償化される方向です。
住民税非課税世帯とは
住民税(所得割・均等割のいずれも)非課税者のみで構成される世帯のことです。
世帯年収約250万円未満とは言われていますが、住民税非課税者の要件は地域によって要件が変わります。
生活保護基準の級地(地域一覧)により、住民税非課税者となる合計所得金額が異なり2017年度現在の基準では
1級地:35万円×(本人+扶養親族等の数)+(*)21万円
2級地:31.5万円×(本人+扶養親族等の数)+(*)18.9万円
3級地:28万円×(本人+扶養親族等の数)+(*)16.8万円
(*)扶養親族等がいる場合のみ加算
となります。
なお2024年度導入予定の森林環境税も、住民税非課税者は免除となる予定です。
また2018年度税制改正で基礎控除額や給与所得控除額等が改正予定ですが、それに伴い教育無償化実施までに上記の基準が引き上げられる可能性が高いです。
3~5歳児
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3~5歳児に関しては、政府方針では幅広く無償化される方向ですが、実際にはその保証があるとは言いきれない状況です。
認可保育園と認可外施設で費用が変わるため無償化の方法も変わりますが、認可保育園・認可外施設のそれぞれでどう無償化するかについても、調整中の状態で2018年夏に決まります。
認可保育園・幼稚園・認定こども園
閣議決定された政策パッケージでは、所得に関わらず完全無償化の対象ですが、自民党側と言い分が食い違っています。
官邸や一部野党(立憲民主党など)の思惑と異なり、自民党や内閣府は財源確保の問題で、所得制限つきでの無償化を望んでいます。2018年夏までに詳細が決まってくると考えられます。
現在でも保育料は市町村民税の所得割額(住宅ローン・ふるさと納税などの税額控除を行う前)に応じた形で決まっており、完全無償化なら高所得者ほど恩恵を受けることになります。
認可外施設
今でも自治体の裁量で補助金を出していますが、国レベルで補助金の上限を設けて広く負担軽減する方向です。
この金額上限が月3万5,000円とも月2万5,700円とも言われ、その分だけ実質的に値下げされることになります。どこまで無償化の対象にするかも含め、2018年夏までに詳細が決まる項目です。
高校授業料無償化
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すでに年収約910万円(市町村民税所得割額30万4,200円)未満世帯では、公立高校授業料の無償化はされています。
公明党が、年収約590万円(市町村民税所得割額15万4,500円)未満世帯の私立高校授業料無償化を衆院選公約に盛り込んでおり、これを受けて2020年度実現に向け
・住民税非課税世帯は実質無償化
・年収約350万円(市町村民税所得割額5万1,300円)未満世帯では最大年35万円補助
・年収約590万円未満世帯では最大年25万円補助
の方向で政策パッケージに盛り込んでいます。財源が確保できれば、年収約590万円未満世帯まで実質無償化の方向です。
なお大阪府などでは私立高校授業料実質無償化を実現しており、これらの自治体では国に肩代わりしてもらうことになります。
また高校授業料無償化に関する所得制限では、税額控除した後の市町村民税所得割額を基準としています。
ふるさと納税(寄付金税額控除)を行うと有利になるのですが、大阪府が問題視しているため、私立高校授業料無償化を進めていくにあたって基準が変更になる可能性はあります。
高等教育(大学)無償化
住民税非課税世帯向けには授業料減免措置・給付型奨学金を拡充する案があります。国立大は無償化、私立大は授業料軽減がされる方向です。
また奨学金を拡充したものとして、オーストラリアのHECSに基づいた「出世払い」方式を導入する案があり、2018年夏までの検討項目となっています。出世払い案については以前
参考記事:大学授業料の出世払い「教育国債構想」ってなに? 奨学金との違いを教えて。
で詳しく解説していますが、一定ラインの住民税課税所得を上回った年に、返還額が給与から天引きされる方式です。
財源としての「こども保険」は見送りの公算
自民党の小泉進次郎議員らが、現役世代が社会保険料を追加負担する形で導入を検討していた「こども保険」案は、見送りになる公算です。
参考:話題の「こども保険」は年金保険料と児童手当の増額案では批判が多い。そこで出てきた新たな方向性。
代わりに政策パッケージで出ているのが、企業拠出金増額分と消費税増税分で賄う案です。消費税増税の使途変更に関しては衆院選で問う形になっていました。
企業拠出金は、企業が支払う給与額に率をかけて金額計算する「子ども・子育て拠出金」の率を増やすことが想定されます。
こども保険方式で無いので個人負担は無くなりますが、政府が推進している「賃上げ」に対してブレーキをかけるのが気になる点です。(執筆者:石谷 彰彦)