多くの投資家は、そう感じていることでしょう。
築浅物件の利回りは、せいぜい10%程度。新築の利回りとなると、10%には遠く及びません。
利回りが良い物件が見つかったとしても、その多くは築古物件が占めています。
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そう思って、高利回り物件を諦めてしまっている人も多いことでしょう。果たして本当にそうなのか、検証してみようと思います。
目次
なぜ築古物件に対する融資審査は厳しいのか?
金融機関は担保をどのようにして評価するのか。まずは、このことから考えてみることにしましょう。
金融機関が担保評価を行う上で用いるのは、「積算評価」という手法です。
積算評価とは、別々に評価された土地と建物の価値を積算(合算)することで、担保全体の価値(積算価格)を把握するというもの。
積算評価における土地の価値と建物の価値は、それぞれ次の計算式によって求めることができます。
・ 建物の価値=延べ床面積×再調達価格 × 残耐用年数 ÷ 法定耐用年数
木造アパートの積算価格を求めてみる
販売価格3,000万円・築20年・延べ床面積150㎡・敷地面積200㎡・路線価10万円/㎡の木造アパートの積算価格を求めてみることにしましょう。
この場合、土地には10万円 × 200㎡ = 2,000万円の価値があります。
しかし建物の価値は150㎡ × 15万円 × 2年 ÷ 22年 = 205万円にとどまり、土地と建物の積算価格は、2,205万円ということになります。
このことから、このアパートを担保として提供しても、建物にはほとんど価値を見いだしてもらえないということが、お分かりいただけるでしょう。
ちなみに、木造住宅の再調達価格と法定耐用年数は、それぞれ約15万円/㎡および22年です。
建物を新築した場合の単価を再調達価格と言います。
再調達価格は、建物の構造によって異なり、金融機関によっても多少の差異があります。
では、このアパートを購入するとしましょう。
600万円の自己資金を用意して、残り2,400万円を融資に頼るとします。
しかし、この物件の積算評価額は2,205万円と、融資希望額の2,400万円には届きません。
そのため、この土地と建物では担保力が不十分という判断が下り、金融機関は融資に難色を示すことでしょう。
築古物件の場合、建物の価値がゼロに近いということ。これが、融資を難しくしている大きな要因と言えるでしょう。
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融資が受けられる築古物件とは
築年数が古くても、土地値に近い価格で購入できる物件であれば、融資を受けることは可能でしょう。
上記の例で路線価が15万円だったとしましょう。
すると、土地の価値だけで3,000万円となり、物件全体では融資審査の通過に十分な3,200万円ほどの積算価格となります。
ただ、金融機関は、担保保全力をより確実なものにするために、「掛目」という係数を用いて担保評価を行います。
一般的に、不動産を担保とした場合、80%の掛目が入ります。
それを考慮すると、金融機関によるこの物件の積算評価額は、3,200万円 × 80% = 2,560万円ということになります。
この場合、物件価格の2割に相当する600万円の自己資金を用意しさえすれば、残りは融資で賄うことができるでしょう。
この物件の利回りが20%だとすると、満室時の年間家賃収入は600万円になります。
年利2.5%・元利均等返済・期間10年という条件で融資を受けたとすると、毎月の返済額は約22万6,000円。
返済比率は45.2%で、おおむね良好な賃貸経営が可能です。返済期間を20年に延ばすと返済比率は低くなり25.4%に。
理想的とされる返済比率40%を下回る返済比率を、実現することができます。
土地の価値が高い築古物件は、とても魅力的であることがお分かりいただけるでしょう。(執筆者:内田 陽一)