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年金の支給開始年齢の引き上げを考える
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2017年も終わりに近づいたので、今年話題になったニュースを振り返ってみると、個人的には「年金の支給開始年齢の引き上げ」に関連したニュースが、もっとも印象に残っております。
その発端になったのは、日本老年学会と日本老年医学会のワーキンググループが、2017年1月に実施した会見において、
ことになります。
これ以降に週刊誌などを読むと、政府は専門家のお墨付きをもらったため、現在は原則65歳になっている年金の支給開始年齢を、75歳程度まで引き上げすると予想した記事を、よく見かけるようになりました。
またこれを具体化するような動きもあり、年金の支給開始を繰下げ(遅くする)すると、年金額が増額していく「繰下げ制度」の上限を、現在の70歳から75歳程度まで引き上げする案を、内閣府の有識者会議が発表したのです。
退職金の減額幅は職種によって違う
退職金は全体的に減っているが、職種によって減額幅に違いがあります。
2017年の後半になってくると、衆議院選挙などの影響により、年金の支給開始年齢の引き上げに関する議論は中断されます。
そのため週刊誌などを読むと、年金に関する記事は見かけなくなり、その代わりとして退職金に関する記事を、よく見かけるようになりました。
退職金を特集した理由
厚生労働省が5年ごとに発表している調査によると、例えば民間企業に35年以上勤続して定年退職した方の退職金の平均額は、下記のように減っています。
そのため年金の支給開始年齢の引き上げと同様に、老後を脅かすからだと思うのです。
2008年
・ 大学卒(管理・事務・技術職)の平均額:2,491万円
・ 高校卒(管理・事務・技術職)の平均額:2,238万円
・ 高校卒(現業職)の平均額:2,021万円
2013年
・ 大学卒(管理・事務・技術職)の平均額:2,156万円
・ 高校卒(管理・事務・技術職)の平均額:1,965万円
・ 高校卒(現業職)の平均額:1,484万円
全体的に退職金が減っているのは、企業が従業員の給与を上げることより、株主への配当を上げることを、重視するようになったからだと考えられます。
また「管理・事務・技術職」より「現業職」の方が、減額幅が大きくなっているのは、
と考えられます。
日本人の平均寿命は過去最高を更新
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2017年7月には厚生労働省から、2016年の日本人の平均寿命が発表されました。
それによると男性は前年比で0.23歳延びて80.98歳、また女性は前年比で0.15歳延びて87.14歳となり、男女共に過去最高を更新しました。
また国際比較では男女ともに、香港(男性:81.32歳、女性:87.34歳)に次いで世界2位となり、男性は前年の4位から順位を上げたそうです。
厚生労働省は平均寿命が延びた理由について
と分析しております。
住宅ローンの残高が多い方に影響する
このように生涯に受給できる年金と退職金が減り、平均寿命が延びることにより、もっとも影響を受けるのは、
だと思うのです。
理由1
年金の支給開始年齢が65歳の場合、それも以降も働き続ければ、年金と給与の2つの収入を得られるため、住宅ローンを返済する資金を確保しやすくなります。
しかし年金の支給開始年齢が75歳になった場合には、仮にその年齢まで働けたとしても、収入は給与だけになるため、住宅ローンを返済する資金を確保するのが難しくなるのです。
理由2
退職金で一括返済もできますが、退職金が減っているのですから、すべてを一括返済に使ってしまうと、老後資金が少なくなってしまいます。
また日本人の平均寿命は延びているのですから、住宅ローンの返済が終わる前に死亡して、団体信用生命保険で一括返済される可能性は低くなってくると思うのです。
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ローン返済について再度考える
定年退職を迎えた時などに退職金を支給することは、労働基準法などの法律に定められた事業主の義務ではありません。
ただ就業規則やその一部である退職金規程に、退職金を支給する旨を記載した場合には、事業主の義務に変わります。
そのため退職金が支給されない企業もあり、また退職金の支給基準や計算方法なども、企業によってかなりの違いがあるのです。
自分の退職金を試算
上記の平均額は参考程度にとどめ、就業規則やその一部である退職金規程などを活用して、自分がもらえる退職金の金額を試算してみます。
そして
・ 試算した金額
・ 返済予定表などに記載されている定年退職時の住宅ローンの残高
を照らし合わせ、退職金で一括返済できるのかを調べます。
再就職や再雇用の必要性
もし住宅ローンを一括返済できなかったり、一括返済した後の退職金の残高が少なかったりした場合には、就業規則を再び活用して、
「再雇用された後の給与の減額幅」
などについての、目安を調べてみます。
このようにして漠然とした不安を、具体的な不安に変えた後でないと、それぞれに合った対策は見つからないと思うのです。
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「所有者不明」、「空き家」が増加する日本の土地
2017年6月に増田寛也元総務大臣などの民間有識者でつくる研究会は、増加が問題になっている所有者不明の土地が、2016年時点で約410万ヘクタールも存在するという推計を公表しました。
これは日本全国にある土地の2割くらいに当たり、九州の面積を上回っております。
また総務省が5年ごとに実施している「住宅・土地統計調査」によると、2013年時点で日本全国に空き家は、820万戸(空き家率:13.5%)もあり、これは過去最多の水準になるようです。
これからマイホームを購入する予定のある方は、このような不動産の問題や、上記のように年金や退職金が減っていく可能性があることを、十分に考慮すべきだと思います。(執筆者:木村 公司)