最近はお金に関する情報が掲載された雑誌やウェブサイトを見ると、ビットコインをはじめとする仮想通貨の話題が、よく特集されているという印象があります。
この理由としては2017年の終わり頃に、ビットコインのドル建て価格が過去最高値を記録し、2018年もその勢いが続くのではないかという、期待が高まっているからのようです。
ちょうど1年前を振り返ってみると、今まで加入資格のなかった公務員や専業主婦などが、個人型の確定拠出年金(以下では「iDeCo」で記述)に、新たに加入できるようになりました。
そのためiDeCoが注目を集めましたが、現在の仮想通貨はその頃のiDeCoよりも注目を集め、ブームになっていると感じるのです。

目次
仮想通貨と外国為替証拠金取引は、通貨取引という共通点がある
現在の仮想通貨のブームは17世紀のオランダで発生した、「チューリップ・バブル」に似ているという方がおります。
この頃には珍しい品種のチューリップの球根が、家一軒分くらいの値段で取り引きされたと言われておりますが、ある日突然に球根の値段は暴落していき、チューリップ・バブルは終わりを迎えるのです。
仮想通貨がこの先にどうなっていくのかが気になる方、またはこの時と同じ過ちを繰り返したくないという方は、チューリップ・バブルについて調べてみるのが良いと思います。
また個人的には通貨取引という共通点がある、外国為替証拠金取引(以下では「FX」で記述)に関するデータなども、参考になるのではないかと思うのです。
FXが定着したあとも、利益を上げている人は2割程度しかいない
2008年9月にリーマンショックが発生する前は、長期の円安トレンドが続いていたため、円を売って何かしらの外貨を買っておけば、それほど勉強しなくてもFXでもうけることができました。
そのため現在の仮想通貨と同じように、まったく投資に興味がなかった方も、新規に口座を開設してFXを始めたのです。
しかしリーマンショックが発生して、急激な円高が進んだため、早いタイミングで外貨を売らなかった方は、大きな損をする結果になりました。
これによりFXのブームは、いったんは沈静化していくのですが、金融庁の規制が強化されて、より安全な取引ができるようになった影響などにより、FXは個人投資家の間に定着していきます。
ただ2012年6月1日の日経新聞(電子版)に、FXで利益を上げている方は2割程度しかいないというデータが発表され、驚きを与えました。
その中でもうかっている方はさらに少ないと考えられるため、1~3年以内に9割程度の個人投資家が、FXから撤退すると言われております。

ビットコインは通貨よりも、激しい値動きを繰り返している
為替相場は経済や政治だけなく、自然災害などの影響も受けて変化しているため、銀行などで為替取引にかかわっているプロであっても、正確に予想できない場合が多いのです。
そのため適切なタイミングで通貨を売買して、継続的に利益を上げていくのは、簡単なようで非常に難しいのです。
これが個人投資家の8割程度がFXで利益を上げることができない、一番の理由ではないかと思います。
なお2017年の終わりにビットコインのドル建て価格は、5日で4割程度も下落しており、多くの通貨よりも激しい値動きをしております。
ですから適切なタイミング売買して、継続的に利益を上げていくのは、FXより難しいのではないかと思うのです。
そのためいずれは9割程度の個人投資家が、「投資は難しい」や「投資は怖い」などの言葉を残して、仮想通貨から撤退していくのかもしれません。
仮想通貨でもうけても、利益の半分以上が手元に残らない場合がある
このように仮想通貨で利益を上げるのが難しいとしても、他の方よりも熱心に勉強して、また運にも恵まれ、もうかっている方がいるのも事実です。
また仮想通貨は大きな下落があっても、それを越える上昇が続いておりますから、現在はFXより利益を上げやすい状況にあると思います。
ただ取引がうまくいき、大きな利益を上げたとしても、その後にやっかいな問題が、頭を悩ます可能性があるのです。
それは利益に対する税金であり、ビットコインをはじめとする仮想通貨は現在のところ、所得の区分が雑所得になるため、給与所得などと合わせて総合課税されます。
この総合課税は所得が高くなるほど税率が上がる累進課税のため、大きな利益を上げた方については、所得税の最高税率である45%が適用される場合があるのです。
これだけでなく住民税(10%)や国民健康保険の保険料も、負担が大きくなる場合があります。
他の方より熱心に勉強して利益を上げたのに、その半分以上が手元に残らないとしたら、やる気をなくしてしまうのではないでしょうか?
iDeCoはタイミングを判断しないので、精神的な負担が少ない
iDeCoに加入する際に、毎月拠出する掛金の金額と、その掛金で購入する金融商品(定期預金、投資信託など)を決めた場合には、途中で変更しないかぎり、継続的に同じ金融商品を、同じ金額分だけ、定期的に購入していきます。
このように定期的に一定額の金融商品を購入していく投資法は、「ドル・コスト平均法」と呼ばれており、価格が安い時には多く、また価格が高い時には少なく購入するため、結果的に平均購入単価を抑えることができるのです。
このドル・コスト平均法を活用できるiDeCoであれば、金融商品を購入するタイミングを、その度ごとに判断する必要はないので、精神的な負担は少なくなります。
また判断を誤って高値で購入してしまい、損失がどんどん膨らんでいったり、自己嫌悪に陥ったりすることはないで、投資を継続しやすいと思うのです。

税制面でみるとiDeCoは、仮想通貨より遥かに優遇されている
iDeCoの口座を通じて金融商品の売買を行った場合、たとえ利益が発生しても、それに対しては課税されないようになっているため、利益の金額が同じだったら、仮想通貨より手元に残せる金額を多くできます。
またiDeCoはその掛金を拠出する段階や、拠出した掛金とその運用益を受け取る段階でも、税制面で優遇されているため、手元に残せる金額をさらに多くできます。
もちろんiDeCoにも弱点はあり、拠出した掛金とその運用益は、原則として障がい状態になったり、死亡したりしないかぎり、最低でも60歳にならないと引き出せません。
ただこういった弱点を考慮しても、仮想通貨よりiDeCoの方が、貯蓄の割合が多い日本に、投資を普及させる力があると思うのです。(執筆者:木村 公司)
関連記事:仮想通貨どこで買うのがよいの? お勧めの「取引所」はココ!