目次
「賦課方式」の公的年金

日本の公的年金は原則的に、現役世代から徴収した保険料を、その時点の年金受給者に対して、保険料の納付実績などに応じて配分する、「賦課方式」になっております。
ただ保険料以外に税金も活用されており、例えば原則65歳から支給される老齢基礎年金の財源は、2分の1が税金になります。
これらに加えて人口構成がまだ若く、年金受給者が少なかった時代に貯めていた積立金を取り崩して、年金受給者に配分しているのです。
つまり公的年金は
「税金」
「積立金の取り崩し」
の3つを、主な財源にしているのです。
積立金の運用は国内債券の比率が下がり、株式が50%に引き上げへ
年金受給者に配分するために貯えている積立金は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、国内債券、外国債券、国内株式、外国株式などで運用しております。
従来は
・ 外国債券:11%
・ 国内株式:12%
・ 外国株式:12%
・ 短期資産(現金):5%
という、国内債券の配分を多くした、保守的な運用が行われてきました。
しかし安倍総理の意向により2014年10月から、国内株式と外国株式の比率が引き上げされたため、
・ 外国債券:15%
・ 国内株式:25%
・ 外国株式:25%
に変わったのです。
この引き上げを実施した後に、中国の景気減速などの影響を受けて、世界同時株安が起きました。
そのため2015年7~9月期の積立金の運用成績は、四半期ベースでは過去最大となる、7兆8,899億円の赤字を記録し、マスコミは株式の比率を引き上げした安倍総理を、いっせいに批判しました。
積立金の運用成績が赤字にならないと、マスコミは関心を示さない
最近は積立金の話題を、あまり見かけないと思っていたら、2017年10~12月期の積立金の運用成績は、6兆549億円の黒字になったと、新聞の中に小さく記載されておりました。
しかも積立金の運用成績が黒字になるのは、6四半期連続だと記載されておりました。
積立金は上記のように、皆さんが受給する年金の財源の一部になっておりますから、多くの方が知っておいた方が良いニュースだと思うのです。
しかし残念ながらマスコミは、赤字が発生した時は政権を批判するためのネタとして、積立金の話題を大々的に取り上げるのですが、黒字が発生した時には、ほとんど取り上げません。
これでは日本の公的年金の現状に対して、誤った認識を持つ方が増えてしまうと思うのです。
積立金の運用成績をさらに調べてみる
株式の比率を50%に引き上げした後も、赤字より黒字の四半期の方が多く、市場運用開始以降の累積でも黒字を維持しております。
ですからiDeCoやNISAなどを活用して、老後資金の準備をしている方は、資産を分散して長期的に渡って運用すれば、いずれは黒字になると信じて、短期的な運用成績に一喜一憂しない方が良いのです。
ただそうはいっても赤字額が大きくなってくると、精神的に耐えられなくなってしまい、運用を止めてしまう方がおります。
このような状態になりそうな方は、株式の比率を引き上げする前の、国内債券を多くした資産配分をマネして、赤字額が大きくならないようにすれば良いと思います。
定年退職後も運用を継続して、老後資金が枯渇しないようにする
積立金の2015年7~9月期の運用成績が、四半期ベースで過去最大となる7兆8,899億円の赤字を記録した当時、上記のように多くのマスコミは、株式の比率を引き上げしたことを問題にしました。
しかし一部のマスコミは年金財政にかかわる、もっと根本的な点を問題にしておりました。
それは
というものです。
そうなると株式の比率を引き上げしたのは、やむを得なかったのかもしれません。
またそれぞれが定年退職するまでに準備した老後資金も、取り崩しが続いていくと、いずれは枯渇する可能性があります。
ですから定年退職した後も、iDeCoやNISAなどによる運用を続け、老後資金の枯渇をできるだけ先延ばしするのです。
もちろん株式の比率が高いと、老後資金の増減が激しくなり、必要額を引き出せなくなる可能性があるため、定年退職後は株式の比率を下げて、国内債券の比率を上げる必要があると思います。
収入を増やしたり支出を減らしたりして、老後資金の枯渇を防ぐ
積立金の枯渇を先延ばしする方法は、取り崩し額を上回る黒字を、継続的に確保するだけではありません。
・ 年金の保険料を値上げしたり、パートやアルバイトなどに対する、社会保険の適用を拡大したりして、収入となる保険料を増やすという方法
・ 年金の支給額を減らしたり、支給開始年齢を引き上げたりして、支出となる年金を減らすという方法
国民からの反発が大きいため、これらは簡単には実施できませんが、積立金の枯渇が近づいてくれば、実施せざるを得なくなると思います。
それぞれが準備した老後資金も積立金と同じように、定年退職後も働いて収入を増やしたり、節約により支出を減らしたりすれば、枯渇するのを先延ばしできるのです。
もっとも現実的なのは定年退職後も働いて、収入を増やすという方法であり、そのためには健康の維持が、欠かせないものになってくると思います。(執筆者:木村 公司)