働き方が多様化し、転職も珍しくない時代。
毎年どのくらいの方が起業しているかはわかりませんが、法務省の登記統計によると、平成27年に設立された会社の件数は約8万9千件にもなるようです。
脱サラして自営業者になったAさんも、いつかは法人化したいと考えています。
そんなAさんがもしも亡くなったら、遺族年金はどこからどのくらい支給されるのでしょうか。
妻(38歳)と子ども(3歳)の三人暮らし。
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Aさんは会社に20年ほど勤め、最近独立開業しました。
大きな目標もあり、毎日充実した日々を送っています。
しかし、漠然とした不安を感じているのが奥さま。
子どももまだ小さく、もしもAさんが亡くなったら、自営業者は会社員と違って遺族年金が少ないと聞いたからなおさらです。
目次
Aさんがもしも亡くなったら、遺族基礎年金が支給される。
Aさんが万が一の時は、加入している国民年金から遺族基礎年金が支給されます。
支給要件
・ 国民年金、厚生年金または旧共済年金の加入者や加入者だった人(60歳以上65歳未満で日本国内に住んでいる)が亡くなった場合
・ 老齢基礎年金の受給権者や受給資格期間(原則25年以上加入※)を満たした人が亡くなった場合
保険料納付要件
・ 保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上あること
・ 平成38年4月1日前の場合は死亡日の前日において65歳未満で、死亡日の属する月の前々月までの1年間に保険料の滞納がないこと
対象者
・死亡した人によって生計を維持されていた「子のある配偶者」又は「子」
この場合の「子」とは、18歳年度末までの子(1級、2級の障がい状態にある20歳未満の子)のことを言います。
Aさん夫婦には3歳の子どもがいるので、その子が高校を卒業する頃までは、遺族基礎年金が100万3,600円(平成29年度の場合・子の加算含む)支給されます。
もしもAさんが会社員のままだったら、遺族年金は?
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Aさんが会社員であったなら、遺族基礎年金に加えて、厚生年金からも遺族厚生年金が支給されます。
年金額は加入期間中の平均収入や加入期間によって異なりますが、厚生年金加入期間が短かったとしても、300月加入したものとして計算されます。
子どもが成長して年齢制限を超えた時に奥さまが40歳以上の場合は、遺族基礎年金に代わって「中高齢寡婦加算」が58万4,500円(平成29年度の場合)65歳になるまで支給される見込みです。
しかし、Aさんは現在会社員ではありません。奥さまが不安を感じるのはわからないでもありません。
過去に厚生年金に加入していたのに、遺族厚生年金は支給されないの?
ところで、Aさんは会社員時代があったので、厚生年金加入期間があります。
それなりに保険料を支払っていたわけですが、亡くなった時に自営業者だったからと言って、遺族厚生年金は全く支給されないのでしょうか。
脱サラした場合でも、条件があえば遺族厚生年金が支給される!
年金の受給資格期間25年以上※を満たしていれば、以前加入していた厚生年金から遺族厚生年金が支給されます。
Aさんは20歳から国民年金に加入。
25歳から43歳まで厚生年金に加入し、現在は国民年金の加入者です。
年金加入の期間はトータルで25年以上となっているので、万が一亡くなった場合には、遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金も支給されます。
※平成29年8月1日施行の法律改正により、老齢基礎年金、老齢厚生年金の受給期間は10年以上となりました。
遺族厚生年金は支給される見込みだが、留意点もある
厚生年金加入中に亡くなった場合、厚生年金の加入期間が短かい場合でも300月加入したものとして計算できます。
しかし、現在厚生年金に加入していないが受給資格期間を満たした人が亡くなった場合は、実際に加入した厚生年金期間で計算します。
Aさんは、19年分のみ。
それでも、過去に払っていた厚生年金保険料が無駄にならないのはありがたいですね。
なお、この場合の中高齢寡婦加算は、厚生年金加入期間が20年以上ならつきます。
よって、Aさんの奥様には、中高齢寡婦加算はつかないということになります。
遺族年金は何もしなくても振り込まれるの?
年金は請求主義です。
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遺族基礎年金のみを請求する場合
亡くなった方の住所地の市区町村役場の年金窓口に、厚生年金加入者だった場合は住所地を管轄する年金事務所となります。
必要書類については、遺族年金の種類や加入年数の長短等によって異なるものもあるようなので、確認してから行くようにしましょう。
「今は自営業者だから、過去に入っていた厚生年金から遺族厚生年金はもらえない」と考える方もいるようです。
自分がもしもの場合の年金を確認しておくようにしましょう。
平成29年8月1日施行の法律改正により、老齢基礎年金、老齢厚生年金の受給期間は10年以上となりました。
しかし、遺族基礎年金、遺族厚生年金の受給権はこれまでどおり、原則25年以上の加入期間が必要となっています。(執筆者:横井 規子)