正社員の夫とパートの妻がともに家計を支える世帯は今や現役世代で6割超となりました。
中にはパートの妻が103万円の壁を超えて105万円を稼ぐことも。
「たった2万円超えただけ」と軽く見て確定申告をスルーしたら、後日夫に10万円の追徴課税される案件が最近頻発しています。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
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目次
マイナンバー制度の開始で夫婦の収入が筒抜けになった
冒頭でご紹介したケースが発生した背景にはマイナンバー制度の定着があります。
2016年にスタートしたマイナンバー制度により、あらゆる給与所得がマイナンバーで紐づけされるようになりました。
結果、かつて手間がかかって大変だった夫婦の所得申告の照合が、税務署にとって非常にカンタンになったのです。
そのため、次のような「パート収入に関する夫婦のうっかり」が、税務署のチェックにひっかかり、「お尋ね」が届くようになりました。
(2) 妻がパートをかけもちするようになったが、それぞれのパート先で稼いだ金額が少ないため、夫は「103万円は超えていないから配偶者控除の適用OK」と思った
(3) 夫に隠れて妻がこっそりパートで働いていたら年間給与収入が103万円を超えてしまった。「ウチの妻は専業主婦」と信じていた夫は配偶者控除を申告していた
税金に日頃なじみがない給与所得者は追徴課税で痛い目に遭いやすい
(2) については、2か所以上の会社で給与所得を得ているので、金額にかかわらず確定申告が必要になります。
しかし、日頃、確定申告や税金になじみのない正社員やパート・バイトの場合、うっかり対処をスル―しがち。
(1) も(3) も含め、「103万円を超えたとしてもたった2万円だから大丈夫」と思いこんでしまうのです。
こういった事態も、10年前なら税務署のマンパワーの限界やお目こぼしにより見逃されていました。
しかし、マイナンバーで行政が効率化した今、夫婦の所得は厳しくチェックされています。
その結果、ある日夫が会社の人事部に呼び出されて「税務署から『年末調整での申告額と実際の奥さんの所得が違う』と言われたんだけど」と指摘されて恥をかく事態が頻発しています。
配偶者控除を外して年末調整をしなおした結果、会社が本税と不納付加算税(源泉徴収の納付が遅れた場合のペナルティ。税務署から告知された場合は税額 × 10%)で10万円近くを納めなくてはならなくなるケースは珍しくありません。
これだけ押さえよう! 103万円超のパート収入になったらやるべきこと3つ
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「たった2万円のために会社で恥をかき、ムダな税金を納めてしまった」。
このような事態を防ぐにはどうしたらいいのでしょうか? 最低限、次の3つに気をつけましょう。
1.年末~翌年3月15日までに妻の源泉徴収票を確認する
このような追徴課税のそもそもの原因は「夫が妻の年間の稼いだ額を知らない」ことにあります。
「『103万円を超えない範囲で働いてね』とクギをさしておいたのに」と言ったとしても、働きを評価されたり、稼ぐ喜びを知ったりすれば、よりがんばりたくなるのが人間というもの。
夫が100%妻の働きをコントロールするのには無理があります。
起きたことについては冷静に受け入れ、「妻が実際にいくら稼いだのか」を把握するようにしましょう。
具体的には、妻のパート代の源泉徴収票をすべて確認することです。
そのうえで年末調整や確定申告で正しく申告してください。
130万円を1円でも超えたら配偶者控除の適用から外れること、金額に関係なくパート先が2か所以上になっていたら妻の確定申告をしなくてはならないことは認識しておきましょう。
2.配偶者特別控除を知っておこう
妻が103万円を超えて働いたとしても配偶者特別控除という制度で節税することができます。
配偶者特別控除とは、配偶者の給与収入が103万円を超えても条件を満たせば一定額は納税者の所得から控除されるという制度です。
ただしいくつかの要件があります。詳細はこちらのサイトで確認してください。(参考:国税庁 配偶者特別控除)
3.気づいたらすぐに自己申告を
先述の「不納付加算税10%」は、税務署から指摘をされて修正申告を行う場合のペナルティです。
自ら気づき、すみやかに会社に申し出て年末調整をやり直した場合、不納付加算税は5%に軽減されます。
また、納税者が自ら期限後申告で申告しなおすこともできます。
無申告加算税5%などは課されますが、会社で恥をかくよりずっとマシです。
夫婦共稼ぎはもともと家庭を幸せにするためにあります。
日頃から夫婦間で積極的にお金について話し合い、税金を含めた家庭円満を図るようにしましょう。(執筆者:鈴木 まゆ子)