日本年金機構の委託業者が、年金データ入力を(契約に反して)国外業者に再委託していた問題が原因で、自治体とのマイナンバー連携が再延期となりました。
1度目は、平成28年に起きた個人情報漏洩により、管理体制が問われたことから延期しています。
連携が延期されることは、連携で得られるメリットを享受するのも先延ばしになるように見えます。
マイナンバー制度が導入されて2年以上経っておりますが、進まぬマイナンバー連携、いったいどうなっているのでしょうか?
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目次
マイナンバー問題になるまで年金機構に関する報道は小さかった
年金過少支給に関して当初あまり大きく報道されなかったのは、そもそも日本年金機構が報道機関向けに発表していなかったことに大きな原因があります。
その他、2か月ごとに支給される老齢年金に関して、
・申告書の提出が2月までに間に合っていれば、2月15日の誤支給が4月13日の支給で早期に調整されること
・源泉徴収される所得税はあくまで仮徴収の意味があり、確定申告で最終的な税額が決定される(ただし年額400万円以下の確定申告不要制度を利用する場合は別です)
ことが考えられます。
委託業者がこの年金支給を巡ってマイナンバーの処理も行っており、日本年金機構と自治体とのマイナンバー連携が再延期するまで発展したため、委託業者の処理ミスおよび再委託の問題が大きく報道されることとなりました。
課税証明書・住民票の添付省略も延期?
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配偶者などがいて一定要件を満たす場合には、老齢基礎・厚生年金の上乗せ年金として加給年金・振替加算が支給されます。
このようなケースにおいて、支給開始年齢になった際の請求手続きでは、課税証明書や住民票・戸籍謄本の提出が必要です。
マイナンバーカードとカードリーダーを使用して参照できるマイナポータルでは、ご自身の住民税所得情報や住民票の情報を参照できます。
マイナンバーはこれらの情報を管理しているため、日本年金機構がマイナンバーの連携を開始すれば、課税証明書や住民票などの提出は不要にするという方向付けがされていました。
マイナンバー連携の再延期により、加給年金・振替加算が支給されるケースでは、課税証明書や住民票・戸籍謄本(いわゆる3点セット)の提出が必要な状態が続いています。
この点に関しては、国民のメリットが享受できる形になっていません。
年金以外でもマイナンバーの情報連携うまく進まず
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日本年金機構の場合、個人情報管理体制が原因で情報連携が2度延期になっていますが、マイナンバー制度がもたらすメリットである情報連携が全般的に進んでいません。
例えば平成29年分からの医療費控除の改正は、マイナンバーにより健康保険の情報(保険適用医療費の額)が税(確定申告)の情報に紐づけられることが前提でしたが、情報紐づけという形では浸透していません。
・医療費のお知らせを使っての申告が可能になった
・領収書の提出が不要になった
など、紐づけと関係ない部分でのメリットが目立つ結果となりました。
また平成29年にマイナポータルが稼働したからと言って、即座に全ての自治体などで電子申請や添付省略が進んだわけではありません。
マイナンバーを記載するような義務のみが先行し、メリットが後回しになっている状況は大変残念です。(執筆者:石谷 彰彦)