周知のとおり、「かぼちゃの馬車」というシェアハウスを運営していた株式会社スマートデイズが破たんしました。
当初は民事再生法による再建を目指していたようですが、結局は破産の道をたどることになるようです。
元来、日本人は不動産投資に対する信頼度が高くなっており、好景気・不景気に関わらず不動産に関連したセミナーはいつでも活況を呈しています。
現在は仮想通貨やFX投資で儲かっているという人々も、将来的には不動産経営による不労所得で暮らすという将来を描いているケースが多々みられます。
一般的な不動産投資としては、「ワンルームマンション投資」あるいは「アパート投資(ワンルーム等)」が考えられますが、どちらも基本的に「一人暮らし」をターゲットにしたものです。
ファミリータイプの住居用の不動産に投資することも考えられますが、家賃収入の利回りが相対的に低くなってしまうので、最初から投資用にファミリータイプのマンションを買うケースは少数派です。
自宅用に買ったけど、転勤等で必要なくなったから貸すといったケースが一般的です。
ただ、ワンルーム等においても、不動産価格の高騰により利回りの低下が避けられない状況となってきました。
その状況の中で編み出された戦略が「シェアハウス」だったのです。
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共同賃貸の形式をとることで、一人あたりの借主の負担を減らし、大家としては平米あたりでより高い家賃を得ることができます。
単純に考えれば、とても賢い仕組みです。
投資経験のない会社員といった方々が、スマートデイズの口車に乗ってしまったのも、ある意味ではうなずけるところです。
とはいえ、落ち着いて考えてみれば、かなり無理のあるビジネスモデルです。
昨今、麻雀をしようと思っても、友人4人を集めるのは大変な作業です。
ましてや、いっしょに暮らしてくれるような友人を見つけるのは、2~3人でもさらに難しいでしょう。
加えて、ライフスタイルが多様化する中で、赤の他人と同じ居住スペースで暮らすことを望む人が増えると考えるのは、さらに難しいことでしょう。
約3畳の超コンパクト物件が人気と言われているのも、上記のビジネスモデルに逆行していて皮肉です。
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現在、これらのシェアハウスに投資した人たちが、スマートデイズや融資した銀行を相手どって訴訟を起こす動きがあるそうです。
訴訟の結果がどうなるかは分かりませんが、需要を見誤ったことくらいは認めないと、次の投資で成功するのも難しくなってしまうでしょう。
また、私たちも「騙された人が悪い」とバカにしているだけでは、いつか同じ目に遭ってしまう危険性があります。
スマートデイズのケースで問題視されたのが、時価よりもかなり高額となっている物件価格です。
まさに高値で掴まされていたわけですが、これは仮想通貨の高いスプレッドに近い側面があります。
シェアハウス投資や仮想通貨といった比較的新しい投資に関しては、事前に得られる情報が少ないので、販売者に大きな粗利をとられてしまう傾向があります。
高額な賠償負担をしても黒字を維持できた仮想通貨取引所があったのも、記憶が新しいところです。
オフショア投資等、これからも聞き慣れない投資案件に遭遇することがあるはずです。
そのような時こそ、「まぁ、素人だから分からないや」と理解を放棄するようなことは避けましょう。
聞き慣れない投資ほど、「やらなくても生きていける」ものがほとんどです。
その投資が本当に自分に必要なのか、投資によってどのようなメリットやデメリットがあるのか、冷静に判断する姿勢を保つことが大切です。(執筆者:小山 信康)