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教育こそ、最大の投資
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筆者は、子どもへの教育こそ最大の投資と考えます。
しかし、教育を投資と捉えることに抵抗がある人もいるでしょう。
「子どもに見返りを求めているわけではない、教育は愛情そのもの」なんて、声も聞こえてきそうです。
しかし、教育にはお金がかかります。
教育をただの消費や浪費にしまって良いのでしょうか。
子どもの将来を考えるとき、やっぱり生活に困らない程度の収入は得ていてほしいはず。
低収入で結婚も考えられず毎日がジリ貧…なんて将来をのぞむ親はいないと思います。
将来、子どもが豊かな生活を送るためにも、教育を投資と捉えて、それなりのリターンを求めるのは当然のことではないでしょうか。
教育を投資とみるべき理由
教育の投資対効果でわかりやすい例が、大学進学への投資。
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日本の私立大学文系の4年間の学費は、約695万円(参照:日本政策金融公庫「平成28年 教育費負担の実態調査結果(PDF)」)ですが、それを投資するとどのようなリターンが得られるのでしょう。
厚生労働省の「平成28年 賃金構造基本統計調査」によると、高卒者と大卒者の生涯賃金の格差は約3,000万円。
調査に含まれない退職金の差額を加味すると、4,000万円超。大学の学費695万円が、5倍以上のリターンをもたらすのです。
もちろん、大卒者だからといって必ず就職できるわけでもなく、高卒者でも自らの努力で高収入をつかむ人はたくさんいます。
しかし、高卒者と大卒者の初任給時点で差額はすでに4万円。
多くの企業は、学歴により賃金差をつけており、日本がまだまだ学歴社会だということがわかります。
大学費用を捻出するかしないかで、子どもが将来的に住宅1軒分の賃金格差を抱えることになる可能性もあるのです。
だからこそ、大学進学だけでなく教育全体の費用をどのような目的で投資するのか、それによりどのようなリターンが得られるのかを考えることが大切です。
過熱する早期教育市場に思うこと
子どもの教育を考えるとき、大学進学とともに気になるのが、就学前の早期教育。
最近では0歳の頃から脳を育む方法などを提唱する超早期教育もあり、早期教育市場は過熱する一方です。
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筆者も子を持つ母として、早期教育に関する本は片っぱしから手に取りました。
さまざまな種類がある早期教育には賛否両論が飛び交い、専門家たちの意見もばらばら。
たとえば、脳神経科学の権威、久保田競氏は、「もっとも脳が発達する1歳までに、頭の良し悪しが決まる」と主張しています。
しかし、脳神経外科医の林成之氏は、「3歳までの未熟な脳に負担をかけるインプット教育を否定し、脳の発達段階に合わせた教育」を主張しています。
私が数多くの早期教育本から学んだことは、現段階で、早期教育が良いか悪いかを結論づけることはできない。
それよりも大切なことは、そもそもの教育目的と投資によるリターンとリスクがどれほどあるのかを考えるということでした。
早期教育がハイリスク、ハイリターンになる可能性
早期教育の中でも、代表的な「早期英語教育」を例に考えます。
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幼児期の子どもは、2つの言語を容易に取得できるといわれています。
事実、筆者も、子どもが2歳の頃、1度読み聞かせした絵本を暗記して、その場で読み上げてみせる言葉の獲得力に驚かされました。
しかし「母国語の形成があってこそ、第2言語の取得が活きる」ということは、アメリカのジル・スタム(教育心理学者)氏のほか多くの識者が主張しております。
日本の英語学者、渡部昇一氏にいたっては、「母国語もマスターできていないのに、外国語を教えることは極めて危険かつ無意味」だと見解を述べています。
また、人工知能の研究家である黒川伊保子氏も、「言語脳が完成する8歳までは、母国語に集中すべきで、早期の英語教育は将来深刻なコミュニケーション障害を引き起こす可能性がある」と指摘しています。
早くから英語を身に着けることで得られる投資リターンが、「将来英語の学習に苦労しなくてすむ」程度のことであるならば、母国語の形成に弊害を及ぼす可能性というのはあまりにハイリスクではないでしょうか。
もちろん、問題なく2言語を取得できれば良いのですが、それは成長してからでないとわかりません。
これはハイリスク・ハイリターン投資と言わざるをえません。
早期教育を考えるとき、その学習がもたらすリターンを得るために、どれだけのリスクを子どもが背負う可能性があるのか、そこまでして学習を急ぐべきなのか?
投資の優先順位も含めて考える必要があるでしょう。
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まとめ
子どもへの教育投資は長期の資産形成のようなものです。
子どもがあまりにも小さい段階で早期教育に投資をすることは、ハイリスク・ハイリターン投資になる可能性があります。
また、初期段階の投資によって、その後の教育資金の投資配分が狂う可能性もあります。
将来的にどのような大人になってほしいのか、子どもが幸せになるために必要なリターンとは何か?
そのリターンを得るためにどこまで投資をするのか、教育に投資する費用の配分をしっかり考えたうえで、計画的な投資を心がけましょう。(執筆者:服部 椿)