ふるさと納税は、返礼品の魅力で普及してきました。
しかし加熱する返礼品競争に規制がかかってきており、ふるさと納税ポータルサイトも新たな方向性を発掘しました。
「ふるさとチョイス」のようなポータルサイトも発掘する新たなふるさと納税の方向性が、ガバメントクラウドファンディング(GCF)です。
ふるさと納税の本来の趣旨とも合致しており、規制のリスクなく根付くことが期待されます。
目次
地域プロジェクトを実現させるための寄付

ふるさと納税の本来の趣旨は、都市部への人口流出が進む社会状況の中で、故郷などに寄付を促すことで、都市部と地方の税収格差を少なくしていくことです。
自治体は返礼品をつけることで少しでも多くの寄付者を獲得すべく競争してきましたが、ふるさと納税の使途に関心を持ってもらえるとは限りません。
プロジェクト単位で不特定多数からふるさと納税を募ることで、使途により関心をもってもらえるようにしたのがガバメントクラウドファンディングです。
個人事業などで出資を募るクラウドファンディングが普及してきましたが、これをふるさと納税に応用したのがGCFと言えます。
目標金額はあるが未達中止はない
クラウドファンディングには目標金額があり、達しない場合はプロジェクトが中止になるのが一般的です。
しかしGCFは目標金額未達でも中止になることは無く、ふるさと納税はそのまま寄付金(税額)控除の対象となります。
GCFの事例
鉄道整備を使途とした地方の例

地方の路線は維持が難しく、今でも廃線に至るケースは後を絶ちません。
維持コストが旅客収入に見合わないことが原因ですが、自治体やファンには残してほしいという思いもあります。自治体が整備費用をGCFで賄おうとする例があります。
廃線対象の路線に関して、GCFで維持費用を賄おうとした自治体もあります。
もともと近鉄の一路線だった養老鉄道(近鉄の子会社で沿線自治体も支援)ですが、近鉄の移管から10年近く赤字経営が続き、施設や車両を保有することになる第三セクター会社へ沿線自治体は出資をすることになりました。
その一自治体である岐阜県の池田町が、「存続活動プロジェクト」として支援金をGCFで賄うことにしました。
新会社設立前の2016年と設立後の2017年の、2回にわたり行われました。
その他滋賀県日野町の駅舎改修費用や、群馬県のみなかみ町・安中市が行うSL維持整備の費用に充当するGCFもありました。
ふるさと納税流出に悩む東京特別区が見出したもの

東京特別区は、ふるさと納税により税収が減少していることを問題視しています。しかしGCFによりうまく寄付を集めている特別区もあります。
例えば墨田区には、墨田区ゆかりの葛飾北斎に関する美術館(すみだ北斎美術館)があります。
開館は平成28年ですが、その前年にすみだ北斎美術館の整備費用に関してGCFが行われました。
第1弾プロジェクトの目標額は1,500万円でしたが、それを上回るふるさと納税を集めることができました。その後も複数のプロジェクトを立ち上げてGCFを活用しています。
インフラ整備だけでなく、社会保障に充当している自治体もあります。
文京区は、NPO法人と協力して貧困のひとり親家庭に食品を届ける「こども宅食」プロジェクトでGCFを活用しています。
2017年度(2018年3月まで)は、目標額2,000万円の4倍超ほどのふるさと納税を集めることができました。2018年度も継続しています。
都市部にも恩恵があり、ふるさと納税が見直される機会

GCFによるふるさと納税でも、寄付先が返礼品を用意していれば、当然返礼品の恩恵を受けることはできます。
ただ返礼品を目玉にふるさと納税を獲得するやり方が見直される風潮になってきているため、GCFを推し進める自治体は増えてくると考えられます。
またふるさと納税は、東京特別区などの大都市で税収減に悩む原因となっています。
ただ東京特別区も前述のようにGCFでは事業推進の財源確保に成功している例もあり、制度に苦言を呈するだけでなく、創意工夫で財源確保できるいい機会であるとも言えます。
寄付者にとっても、文化的な財産やインフラを残すためにふるさと納税を生かしていくことは、(価値観にもよりますが)返礼品とは異なる形で充足感もあるはずです。(執筆者:石谷 彰彦)
得するふるさと納税は「さとふる」 申し込みはこちらから↓