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「国民皆保険」

日本は1961年4月に、すべての国民が何らかの公的な医療保険に加入するという、「国民皆保険」を実現しました。
そのため
・ 会社員やその被扶養者の方は「健康保険」
・ 公務員やその被扶養者の方は、各種の「共済組合」
に加入しております。
またそれ以外の自営業者、農林水産業者、失業者、非正規雇用者、年金生活者などは、都道府県と市区町村が運営する「国民健康保険」に加入しております。
国民健康保険
自営業者や農林水産業者のため、公的な医療保険として創設されたため、制度が創設された当初は、こういった方が加入者の約7割を占めておりました。
しかし現在は自営業者や農林水産業者よりも、失業者、非正規雇用者、年金生活者などの方が多くなっており、こういった方が加入者の約8割を占める状況になっているのです。
国民健康保険の保険料は原則
収入に応じたものになっているため、このように収入がない、または収入が低い加入者が多くなると、制度を維持するために必要となる保険料収入を確保するのが、難しくなってしまいます。
そのため国民健康保険の加入者から徴収した保険料、被用者保険(健康保険、共済組合)や、国・都道府県からの交付金などの、自主財源で足りない分については、市区町村の一般会計から公金を投入してきたのです。
こういった公金の投入は市区町村の財政に負担を与え、この負担が大きくなっていくと、他の住民サービスのために使う予算を、削減する必要があります。
公金を投入してきた市区町村は、国民健康保険の保険料が上昇

公金頼みになっている財政基盤を強化するため、2018年4月から国民健康保険の運営主体は、市区町村から都道府県に移ったのです。
これまで国民健康保険の保険料は、それぞれの市区町村が独自に決定できたため、他より税収に余裕がある市区町村は、一般会計からの公金の投入により、保険料の上昇を抑えてきました。
しかし運営主体が都道府県に移った後は、市区町村が保険料を決定する仕組みは変わらないのですが、都道府県がそれぞれの市区町村ごとに示した「標準保険料」を参考にして、保険料を決定するようになったのです。
そのため一般会計からの公金の投入により、保険料の上昇を抑えてきた市区町村は、保険料が上昇する可能性があるのです。
当面は「激変緩和措置」の実施により、保険料の急激な上昇は抑えられるようですが、都道府県内での保険料の統一、また一般会計からの公金の投入をなくすという目標に向かって、保険料の上昇は続いていくと予想されます。
国民健康保険の財政を支えている「前期高齢者納付金」
60歳くらいで定年退職を迎えてから、75歳になって後期高齢者医療に加入するまでの間は、国民健康保険に加入する場合が多いと思います。
そのため国民健康保険は、65歳以上75歳未満の「前期高齢者」の加入率が、他の公的な医療保険より高くなってしまい、その結果として保険給付のために使うお金が多くなるのです。
この不均衡を調整するため、前期高齢者の加入率が低い健康保険や共済組合は、「前期高齢者納付金」を負担しております。
これらは健康保険などの保険料の一部として徴収されているため、求められる負担が増えれば、保険料も上昇してしまうのです。
つまり国民健康保険の財政の問題は、会社員や公務員の方にとっても他人事ではないのです。
手口1:妊娠した後に入国して、出産育児一時金を請求する
このように財政難に直面している国民健康保険に、追い打ちをかける悪質な外国人が存在するようです。
その手口は例えば妊娠が発覚した後に、日本に3か月超に渡って滞在できるビザを取得して入国し、住民登録を行うのです。
この理由は原則として3か月超の在留資格があると、国民健康保険の保険証を取得できるからであり、取得できたら自国に帰って出産します。
そして市区町村に42万円の出産育児一時金を請求したうえで、日本には戻らずに自国で育児を続けるのです。
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問題点
日本に来たばかりの外国人は、保険料の算定基礎となる前年の国内収入がないため、保険料の減免が適用される場合が多いのです。
そのため納付する義務のある保険料が安く済むため、市区町村にきちんと保険料が納付されたとしても、わずかな金額になってしまいます。
それにもかかわらず42万円の出産育児一時金は、しっかりと請求するのですから、こういった方が増えていけば、国民健康保険は更に財政難になっていくのです。
手口2:病気やケガの治療を目的に入国する
例えば留学と偽って、3か月超の滞在ビザを取得し、国民健康保険の保険証を取得します。
そして日本に滞在している間に、1割~3割の自己負担で病気やケガの治療を受け、自国に帰っていくのです。
こういった方についても、上記と同じように保険料の減免が適用される場合が多いため、納付する保険料はわずかな金額で済みます。
また医療費の自己負担が高額になった時に、一定の自己負担限度額を超えた分が払い戻しされる「高額療養費」を活用すれば、例えば100万円の手術を受けたとしても、9万円程度の負担で済んでしまう可能性があるのです。
手口3:偽造した領収書で、「海外療養費」を請求する
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国民健康保険の保険証を取得した外国人が、海外の病院で診療を受け、「海外療養費」を請求するというものです。
この海外療養費とは、海外旅行中や海外赴任中の急な病気やケガで、やむを得ず現地の病院で診療を受けた場合に、申請により本人負担の1割~3割を除いた、医療費の7割~9割が払い戻しされる制度です。
市区町村に海外療養費を申請する際には、海外の病院で診療を受けた際に発行される、「領収書」が必要になるのですが、これを偽造する悪質な外国人がいるのです。
それぞれの市区町村は、診療を実施した病院に問い合わせを行うなどの、対策を実施しているのですが、言葉の問題でコミュニケーションが上手くとれないなどの理由により、十分な確認ができておりません。
公的な医療保険の知識は、家計の節約のために役立つ
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こういった悪質な外国人の手口を見ていると、公的な医療保険の保険給付などについて、よく勉強していると思います。
この点は日本人も見習うべきあり、また決して安くない保険料を継続的に納付しているのですから、もっと公的な医療保険をフル活用した方が良いと思います。
そうすれば民間の医療保険から支払われる給付金の金額を、もっと低く設定できるはずであり、給付金の金額が低くなれば、以前より保険料は安くなるのです。
つまり公的な医療保険の知識は、病気やケガをした時に役立つだけでなく、家計の節約のためにも役立つのです。(執筆者:木村 公司)