後輩に相談された夫が、私に尋ねました。
職場に出入りしている保険販売員が、特に若手社員に、外貨建て保険をオススメしているんですって。
そして彼らは、社会人経験も短く保険についての知識も浅いため、頼りになる先輩である(?)夫に相談してきたのだとか。
う~ん、「金融ビギナー × 外貨建て保険」。危険な匂いしかしません。

目次
外貨建て保険のウリ
外貨建て保険をしきりに薦める保険外交員たちの主な主張は、以下です。
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(1) 日本では考えられない利率でお金が殖える
米ドル建てでも豪ドル建てでも、マイナス金利を継続する日本国内の金融商品では考えられない利率がつきます。
年率3%以上保証なんてものもありますね。
それが長期運用になるわけですから、30年も続ければ2倍以上になります。
ただし、それは外貨ベースでのゲインになります。
(2) 為替リスクはドルコスト平均法でかなり回避できる
ですから、外貨建て商品の最大のリスクは、為替レートの変動となります。
外貨ベースでゲインしても、日本円に両替するときに損が発生しては元も子もありませんからね。
しかしそのリスクについては、保険料を毎月納めることで積立投資と同じようにドルコスト平均法の効果を得ることができ、長期運用ではかなり高い「勝率」を見込めるということです。
(3) 税制の優遇を受けられる
個人年金保険なら条件を満たすことで個人年金保険料控除が得られます。
それ以外の保険でも、生命保険料控除や死亡時の相続税軽減という効果が得られます。
確かに、一見理にかなっていますね。
それって、外貨建て保険だけのウリなの?
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しかし私は思うのです。
それって外貨建て保険でなければ得られないメリットなのかと。
そして、数十年にもなる運用期間、最大で数百万円にもなる資金を「1つのカゴに盛る」ことは果たして賢明なのかと。
(1) 外国の金融商品は利率が高い
これは何も保険に限ったことではありません。
外貨建て金融商品は保険ならずとも存在します。
もっともシンプルなものは外貨預金。普通預金も定期預金もあります。
確かに利率は外貨建て保険ほどではありませんが、外貨ベースでの元本割れがないことが最大のメリットとなります。
保険は解約返戻金が総払込保険料を下回る、すなわち「元本割れ」する期間がなかなか長く続きますから、一度加入すると短期間での解約は心理的負担が大きい。
利率に不満があるのなら、外債や外国株またはそれらを組み入れた投資信託で運用するという手もあります。
また外貨預金の為替手数料(片道1円とか…)に不満があるのなら、FX取引も面白いですよ。
私が利用しているSBI証券なら、米ドルの場合片道0.5銭で交換できますから。
(2) ドルコスト平均法も、別に保険商品でなくても使える手法です。
外貨預金、外債や外国株を組み入れた投資信託でも使えますね。
むしろ満期と死亡という2種類の積立終了期日が設定されている保険商品よりは、それがない上記金融商品の方が、ドルコスト平均法の有利を存分に活かせるのではないでしょうか。
(3) 税制の優遇だって、他の金融商品でも得られます。
個人年金保険料控除は現行制度では、年間8万円の保険料支払で最大の効果(4万円の所得控除)が得られる制度です。
本気でためる気があるなら、年間8万円くらいは低リスクの日本円で節税効果を確保しておいて、高リスクの運用は別の方法を採るほうが賢いのではないでしょうか。
それに家族をもてば、生命保険料控除の満額くらいまでは掛け捨ての保険に加入することになりましょう。
また保険以外の金融商品には別の節税制度もあります。
投資信託などで使えるNISAやiDeCoといった制度も、それぞれに制約はあるものの、なかなかの節税力を持っていますもの。
外貨建て保険に加入する前に検討してほしい、比較対象
ということで、保険外交員のセールストークに乗って外貨建て保険に加入する前に、ちょっと立ち止まって以下の金融商品も比較検討してほしいのです。
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1. 積立投資信託
ドルコスト平均法の効果が得られます。
外債や外国株を組み入れているものなら、高リスクですが高いゲインを期待できますね。
積立NISAを利用すれば運用益が非課税になります。
2. 外貨預金
為替手数料がかさむものの、日本円による普通預金よりも高い金利が得られます。
3. FX取引
レバレッジを上げすぎると一夜にして全財産を失う怖さはありますが、最低の米ドル1取引単位なら1万ドル(≒110万円)の取引にしかなりません(SBI証券の場合)。
100万円強なら、貯蓄型保険を長く続ければ支払う金額ですよね。
さらに小さな取引単位を設定しているFX会社もあります。
これらの外貨建て保険に対する共通した強みは、いつでも止められることでしょう。
必要なときに低いリスクで現金(日本円)化できるというのは、けっこうな価値があることなのです。
あれ?保険ってそもそも、必要に備えるものじゃあなかったっけ…。
節税を得たいなら、他にこんな比較対象もあります。
4. iDeCo(個人型確定拠出年金)
結局投資信託を使って積み立てることになるのですが、運用益が非課税なだけでなく、その拠出金が全額所得控除なのがうれしい制度です。
ただし60歳以上かつ10年以上積み立てを続けなければ取り崩せません。
5. 貯蓄型保険(円建て)
個人年金保険料控除や生命保険料控除が得られます。
最大の効果を得るための支払保険料はそんなに大きくないので、ひとまず円建てでこれらの節税を得ておいてはいかがでしょうか。
さいごに
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外貨建て保険のメリットだけに喰いついてしまうのではなく、少なくともこれら5つの金融商品と比較してみて、それでもやっぱり外貨建て保険が良いというのであれば、私はもう止めません。(執筆者:徳田 仁美)