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日銀が金融政策の修正に動く

7/31、これまで山の如く動かなかった日銀が、金融政策の修正に動きました。
受け止め方はさまざまですが、
ということを前提とした微修正の位置付けでした。
これを踏まえ、これからの日本経済の見通しおよび2018年後半に期待できる日本株式の投資戦略を考えていきましょう。
日本にカードはなくなった
米国や欧州のように、日銀が金利の利上げを発表するのは2019年10月に予定されている消費税増税の後。
それまでは株価も買い支え、金利も低水準に維持することで経済成長を促すスタンスとなり、
「そうこうしている間に、消費税増税で景気減速イベントが見えている環境だ。」
ということです。
為替は大きく円安にならない
日銀政策決定会合が開かれる1週間前、新聞などで政策変更を議論することが報道されただけで為替は約2円の円高(ドル安)になりました。
日米の金利差が縮小するとの観測から円が買われましたが、前述のように政策は長い期間変わらないとの内容だったため、すぐに元の水準に戻りました。
しかし今後、微修正を繰り返しながら正常な金融政策に戻すことを考えると、円高に引っ張られる前提を持っておく必要があります。
またトランプ米国大統領がドル高をけん制していることを考えても、120円を越えるような円安ドル高は望めない見込みです。
日本を起点にした株式上昇のカードは無くなった

2018年の日経平均採用225社の当期利益は、前年比-6%程度となっています。
さらに、日銀短観で想定している為替相場は@109.66円。
金利を上げるほど景気は良くないと日銀が宣言したいま、日本起点で大きく株価相場を上昇させるカードはなくなりました。
3つの回避すべきリスクとは
そんな環境の中、海外起点の3つのリスクに注目し、それをうまく回避する投資戦略が有効だと考えられます。
2018年後半に株式相場を左右するリスク要因は、次の3つが挙げられます。
3つの回避すべきリスク
1. 米国の保護主義的な貿易政策の過熱
2. 中国経済の減速
3. 世界的な長期金利上昇
どれも方向性を予測するのが難しいリスクであり、日本企業が主体となって解決できる問題でもないので、投資戦略としては回避することが最も得策だと思われます。
グロース株よりバリュー株を
経済成長が見込まれ、株価上昇が期待できるタイミングでは売上高がどんどん伸びるような、成長株(グロース)を選好するのが定石ですが、現在はその反対。
経済成長が弱まり、景気踊り場の兆しが見えてきたいま、収益の柱があり業歴も長く、財務体質が良い割安株(バリュー)に投資するのが定石です。
さらに為替相場にあまり左右されない、国内営業中心の銘柄であれば、保守的ではあるもののお勧めの投資戦略です。
2018年後半の投資戦略

今すぐに株式相場が急落することはないと私も思っていますが、米国を含め「景気踊り場の兆し」が見えてきているため、投資銘柄の中でバリュー株の比率を高める、または注目して株価をチェックすることを始めてみましょう。
注目したい業種とは
バリュー株の業種といえば、
・ 電力
・ ガス
・ 商社
・ 卸売
・ 食料品
など、生活に密着して景気が良くても悪くても利用する業種を指します。
具体的にはキリン、サントリーBFなどの食料品、イオンなどの小売、りそなHDなどの銀行が挙げられるでしょう。
なお石油などのエネルギーやアルミなどの鉄鋼・非鉄業界、自動車業界もバリュー株の業種ですが、前述のリスク要因に直結する業種につき回避しましょう。
注目したい業界とは
バリュー株の業種ではないのですが、3つのリスクを回避する国内需要が好調な業種もあります。
・ ネットセキュリティー対策の企業は、工場の自動化・省人化へ向けた大きな時代の流れに加え、IoTや自動車の自動運転技術には欠かせない業界です。
・ ウイルスバスターを主力商品にしているトレンドマイクロは、その代表格です。
・ 東京オリンピックのセキュリティ対策も支える企業、セコムなども今後注目度が高まってくるでしょう。
2018年後半は、日経平均225など株価指標で相場全体が上昇することは望めず、個別銘柄の選別が皆さんの投資結果に直結すると考えています。
アベノミクスに乗った日本株式相場の上昇トレンドは「踊り場の兆し」です。
運用が少しい難しい環境ですが、1つ前の動きを想定しながらご自身のポートフォリオに活かしてください。(執筆者:中野 徹)