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意外に身近な介護事故
介護施設内での事故って聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

なんて思われる人も多いと思います。
しかし、介護施設内での事故は決して珍しいことではありません。
すでに事故に遭ってしまった利用者の家族さん、今後施設入所を考えている家族さんにぜひ、目を通していただきたい内容となっています。
介護施設で多い事故は転倒・転落
私が勤務する特別養護老人ホームでは事故の7~8割が転倒・転落となっています。
全国的に事故の傾向を見ても同じような結果になるでしょう。
・ 車椅子から立とうとしてバランスを崩しそのまま転倒するケース
・ ベッドから車椅子に自分で移ろうとしてバランスを崩して転倒するケース
このようなことで事故になるのです。
なので、介護施設なで転倒・転落による事故がいかに多いのかここでは理解していただければと思います。
なぜ転倒・転落が多く発生するのか?
例えば特別養護老人ホームに入所している方の多くは認知症があります。
そのため、下肢筋力が低下している等、自分の身体状況を理解できていな場合が多いのです。
結果として無理に車椅子から立ち上がろうとしたときバランスを崩して転倒するようなことがあるのです。
ここまでなら、「傍に職員がいたら防げるのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、自室やトイレなどの普通は利用者一人でしか過ごす事がない場所では、職員は立ち入る事はなのです。
職員が転倒・転落を未然に防ぐには、どうしても限界があるのです。
事故が不可抗力的に起これば施設には責任はない?
ここで、実際に起きた事故を事例にして説明をします。

利用者Aさんは、普段は自宅で生活されていましたが、家族の都合で急遽、ショートステイ(短期間施設に宿泊して介護を受ける)を利用することになりました。
施設に来られて初日の朝方、ベッド横のポータブルトイレを自分で使おうとしたのですが、バランスを崩したようで、床に倒れこんでしまったのです。
そのまま施設の判断で病院を受診すると、下肢を骨折していおり、頭部打撲もありました。
その利用者は入院して手術するというケースになったのです。
その後、その利用者の家族が私の勤務する施設側に対して「防ぐとができた事故ではないのか?」ということで、施設側に医療費の支払いを求めてきたのです。
実は、介護施設はこのような場合のために保険加入が義務付けられていましたので、保険会社に相談したのです。
すると、保険会社の判断では今回のケースは保険適用の対象外であると判断され、結局は本人(家族)負担で医療を受ける事になったのです。
どんなに努力しても防げない事故は存在する
先にも述べましたが、いくらプロの職員が在籍していても防げない事故もあるのです。
運悪くそのような事故に遭ってしまった場合は自己責任となり、今回のような保険の対象にはなりません。
逆に、完璧に事故を防ごうと思ったら、利用者のプライベートな時間も空間もなく、常に職員が1対1で見守りをするしかないのです。
このようなことは通常考えられませんよね!?
また、寝たきりの人でも骨折をすることもあります。
高齢者は非常に骨がもろく、特に寝たきりになると骨粗しょう症は避けては通れないのです。
そのため、職員がおむつ交換や体位を変える場合にも骨折する場合があるのです。
もちろん、介護職員は十分に気をつけて介護をしていますが、それだけ骨がもろくなってしまっているのです。
事故が起こり入院するような事態になったときの対応方法
転倒・転落はとても身近な事故です。
その事故に遭遇してしまったときは、きっと施設側は適切に誠意を持って対応をしてくれるでしょう。
ここで必ず確認して欲しい事があります。
それは、なぜそのような事故になってしまったのか、原因を明らかにしてもらうことです。
この原因を聞いて納得できなければ、さらに詳しく尋ねてみてもいいです。
そして、職員の過失やミスによって起きた事故の可能性があるのでは? と感じたなら、保険の話をしてもいいでしょう。
介護保険施設は保険の加入を義務付けらていますので、適切な対応をしてくれるはずです。
万が一、施設側の対応に納得がいかなければ保険者(自治体)に相談して、介入してもらうのも一つの方法です!

上記の表は、ひとつの例として参考にしてください。
おわりに(大切なこと)

今回のお話は法的な視点よりでなく、実務的な視点でこの記事を書かせていただきました。
実は、介護事故によって訴訟沙汰になるケースは年々増加しているのです。
施設側の説明に納得できず、弁護士に依頼して解決するケースも少なくはありません。
弁護士に依頼すると、当然のことながら100%法的な視点から話が進み、最終的には法律上での話として解決への導かれることになります。
どうしても納得ができず、事故が起きた施設での対応に不満や疑問があれば、専門家への相談をお勧めします。(執筆者:陽田 裕也)