47歳の女性の読者から、財産分与や年金分割などに関する、質問をいただきました。
その中で加給年金に関する質問を抜き出し、要約して紹介すると次のようになります。
前妻とは年金分割を2分の1にしているが、年間40万円の加給年金も分割されてしまうのでしょうか?」

以上のようになりますが、他の質問を読んでみると、夫婦共に再婚になるため、夫側には子供が一人いることがわかります。
前妻の年齢はわからないのですが、年金の支給開始年齢には達していないようなので、60歳未満と推測されます。
またその前妻は離婚した時に今の夫から、2分の1の年金分割を受けているようです。
これらの情報を元にして、読者の質問に対する回答を考えてみると、次のようになります。
目次
加給年金は定額部分の支給開始時、または65歳から加算される
加給年金とは老齢厚生年金に上乗せして支給される、家族手当のようなものであり、その加算要件は次のようになります。
「厚生年金保険の加入期間が原則として20年以上ある者が、定額部分の支給開始年齢に到達した時点、または65歳に到達した時点で、その者によって生計を維持されている65歳未満の配偶者、18歳年度末まで(一定の障害状態の時は20歳未満)の子がいること」(引用元:日本年金機構)

老齢厚生年金の支給開始年齢は、原則として65歳になりますが、現在は60歳から65歳に引き上げしている最中のため、生年月日によっては65歳になる前に、支給される方もおります。
65歳になる前に支給される老齢厚生年金は、65歳から支給される老齢厚生年金と区別するため、「特別支給の老齢厚生年金」と呼ばれているのです。
この特別支給の老齢厚生年金は、65歳から老齢基礎年金に変わる「定額部分」と、65歳から老齢厚生年金に変わる、「報酬比例部分」で構成されております。
また前者が先に65歳に引き上げされ、それが終わった後に後者が、65歳に引き上げされます。
男性は定額部分の引き上げがすでに完了し、報酬比例部分が引き上げされている最中のため、「定額部分の支給開始年齢に到達した時点」ではなく、「65歳に到達した時点」から、加給年金が加算されるのです。
また加給年金の加算対象になるのは、「65歳に到達した時点」で婚姻している配偶者になりますから、その前に離婚した配偶者については、加算対象にはなりません。
配偶者と子の加給年金は別枠のため、両者で分割する必要はない
今回のケースを見てみると、65歳になる前に離婚した前妻は、加給年金の加算対象にはならないので、今の夫が65歳になると、他の要件を満たしている場合には、読者のみを対象にした、加給年金の加算が始まります。
ですから前妻に対して、年間40万円程度になる加給年金の2分の1を、分割する必要はありません。
なお加給年金の加算要件である「生計を維持されている」とは、加給年金の加算対象になる方の前年の年収が、850万円(所得では655.5万円)未満であることを示します。
また必ず同居している必要はなく、別居であっても養育費などの支払いがあれば、生計を維持されていると認められる場合があります。
そうなると前妻の子は年齢によっては、加給年金の加算対象になる可能性があります。
ただ次のように配偶者とは別枠で加算されるため、前妻の子と分割するわけではありません。
また配偶者に加算される加給年金が、年間で40万円程度になるのは、次のような特別加算額が上乗せされるからです。
(参考元:日本年金機構 加給年金額と振替加算)
年金分割をした分だけ、受給できる遺族厚生年金が少なくなる

他の質問を読んでみると、読者はiDeCo(個人型の確定拠出年金)に加入しているとわかりますが、これは積極的に利用した方が良いと思います。
その理由として今の夫が死亡した時に支給される「遺族厚生年金」は、夫が受給する老齢厚生年金の、4分の3程度になります。
老齢厚生年金の金額によっては、かなりの金額になるのですが、今回のケースでは離婚する時に、前妻に対して老齢厚生年金の2分の1を分割しているため、その分だけ読者が受給できる遺族厚生年金が、少なくなってしまうからです。
また社会保険(健康保険、厚生年金保険)の加入の有無は、他の質問からはわからなかったのですが、こちらにも加入した方が良いと思います。
その理由として月収が17万5,000円未満であれば、「国民年金の保険料 > 厚生年金保険の保険料」となり、厚生年金保険に加入した方がお得になるからです。
また読者が厚生年金保険と同時加入の健康保険に加入して、今の夫を被扶養者にすれば、夫婦で国民健康保険に加入するよりも、保険料が安くなる場合があるからです。
それに加えて健康保険に加入すると、病気やケガで仕事を休んだ時に「傷病手当金」という、国民健康保険にはない保険給付を受給できるので、加入する価値はあると思います。(執筆者:木村 公司)