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養育費の約束
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養育費の約束は絶対的なもの。
何があろうと満額を最後まで受け取ることができると信じ、離婚に応じる妻が圧倒的多数ですが、残念ながら、病気やケガは不可抗力です。
そんなふうに(元)夫の尻をたたいたところで病気や怪我で働けず、収入も貯金もないのにお金を借りても返済する元手がないので借金で借金で返す…自転車操業に陥るのは目に見えています。
そうやって(元)夫が再起不能になるまで突き放したところで「ないものはない」のだから養育費は早晩、完全に停止するのです。
離婚後の保険に関する注意点
(元)夫の病気やケガのリスクは保険で対応するのは現実的ですが、離婚して
・ 保険に新規加入する
・ 加入済みの保険を見直す
などの場合、どんな点に注意すべきでしょうか?
実際の相談例
夫:川田祐樹(36歳) 会社員(年収600万円)
妻:川田瞳(34歳) 専業主婦【今回の相談者】
長女:川田美緒(7歳) 川田夫婦の娘
瞳さんは夫との話し合いですでに養育費の条件(夫が妻に毎月10万円を20歳まで。計1,800万円)は決まっていました。
結婚前から加入している保険がありました。
具体的には
です。
誰しも病気やケガなどで働けなくなる可能性はありますが、元夫に何があろうと妻子が路頭に迷わないようにしなければなりません。
元夫に万が一のことがあっても養育費をもらい続けるのは、どうしたら良いでしょうか?
私はそんなふうに瞳さんを諭してきました。
夫と再婚相手との間の子が産まれたら、妻と子を養いながら、元妻(彼女)の子にも養育費を支払わなければなりません。
とはいえ、収入が大きく増えることは期待できず、金銭的に息詰まるでしょう。
だから、長時間の残業を引き受けたり、休日にアルバイトをしたりして、何とか両方を維持しようとするのです。
無理がたたって養育費が止まるというケースは決して珍しくありません。
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保険内容に不安をもつ
「この保険で大丈夫なのでしょうか?」
瞳さんは不安そうな顔をしますが、前述の通り、現在の保険は日額9,000円の医療保障です。
夫の手取は毎月27万円です。
万が一、夫が入院した場合、毎月27万円(日額9,000円×30日)が支給されますが、これは手取と同額なので、夫が保険金のなかから養育費を支払うことは問題ないでしょう。
しかしよく約款を見ると、
と書かれていました。
入院せずに済み、通院や投薬、カウンセリングなどの方法で治療を続けた場合、保険金は支給されないないという意味です。
夫が貯金を食い潰して養育費を捻出している間は良いですが、早晩、貯金が底を付き、養育費がぱったりと止まるに違いありません。
「精神及び行動の障害」の患者の50%は通院
厚生労働省の「平成26年・患者調査」によると「精神及び行動の障害」の患者数は入院が265万人、外来が257万人なので入院と外来は半々です。
2分の1の確率で夫が入院せず、保険金が支給されず、養育費が復活しないシチュエーションが起こるのだから現在の保障内容では不十分です。
就業不能保障
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「入院を伴わない病気、ケガにも対処できるよう入院時の医療保障は残しつつ、就業不能保障をつけた方がいいのでは?」とアドバイスをしました。
「就業不能保障」とは医者が一定期間、就業できないと判断した場合、保険金が支給される特約です。
入院の有無は支給条件に含まれていないので、これで「入院を伴わない病気、怪我による休職、退職」にも対処できます。
もし、「月9,000円の就業不能保障」を追加した場合、保険料は以前と比べ月額5,000円増えるようです。
瞳さんは保険料の増額分を自分で支払うことと引き換えに、夫に保険の見直しを認めてもらったそうです。
実際には毎月10万円の養育費から5,000円を差し引き、夫が瞳さんへ支払う月額を9万5,000円にするという形です。
離婚前の保険を離婚後の親権、養育費、家族構成などを踏まえて見直すのは大事なことです。
保険料との兼ね合いを考えなければなりませんが、万全に備えるのならやむを得ないでしょう。
瞳さんはその代わりに心配事の1つを解消することができたのです。(執筆者:露木 幸彦)