国民年金の給付額減少や支給年齢の上昇など、いま現役のサラリーマン世代は公的年金だけに頼れない「老後のお金事情」が問題となっています。
そこで60歳以降の私的年金として選択されているのが、貯蓄型保険の個人年金保険です。
しかし個人年金保険は、いま加入すべき「お得な」保険商品なのでしょうか?
利回りや他の貯蓄方法、非課税枠などとの比較で、個人年金保険のおすすめ度を検証してみましょう。

目次
個人年金保険とは
個人年金保険は働く現役世代のうちに、60歳以降の老後生活に備えて長期に貯蓄する保険です。
定年退職(給料がなくなる時期)から公的年金が支給されるまでの間、収入が細くなる補填として加入するケースが多いようです。
金融機関で販売されている売れ筋は外貨建て個人年金保険で、円建て個人年金保険は取扱いが休止されている会社もあるぐらい売れていません。
だからと言って、老後生活を補填する大切なお金を、外貨建てで預けておくことに不安を感じることもあるでしょう。
ここでは円建て個人年金保険のポイントと、課題を見ていきます。
運用利回りは?
いまの日本はマイナス金利政策を取っているぐらい低金利で、その低金利が数十年の貯蓄期間中変わらないことを考えても、「銀行預金金利よりはマシな金利」という程度だと考えた方が良い環境です。
具体的に日本生命「みらいのカタチ」で、利回りを見てみましょう。
同HPに掲載されている「30歳、男性、年金開始60歳、10年確定年金」のケースでは、次の通りです。
・10年確定年金72万円×10年 = 約720万円
・720万円 ÷ 685万円 = 105.14%
・30年間の利回り105.14% ÷ 30年 = 0.17%/年
三大疾病等になった場合の払込免除特約による保険機能も付いていて銀行預金と直接比較するのが正しくないということを考慮しても、これからの30年間の物価上昇(インフレ)に勝てないことは明らかです。
30年前のバブル時代金利ならともかく、現在の低金利環境で長期固定金利の運用はおすすめしない商品となります。
中途解約すると元本が戻らない?
年金開始年齢に至るまでに中途解約してしまうと、掛金総額(投資元本)が戻らない場合が多いのが、個人年金保険です。
生活環境が変わったり、自然災害など急な一時金が必要となった場合など、掛金が続けられなかったり中途解約するしかない場合のリスクが考えられます。
ので、余剰資金の中でもその一部が投資資金となります。
投資、というより銀行預金に数十年預けておくならまだマシな金利が付く個人年金保険に移す、というイメージでしょうか。
とにかく老後資金準備のメイン手法にはなり得ない商品です。
それでもメリットはある?

個人年金保険は、所得税の控除が適用となります。
所得税4万円、住民税2万8,000円まで還付されることがあります。
無いよりマシですが、個人でも加入できる確定拠出型年金(以下、iDeCo)なら、どうでしょうか?
iDeCoなら平均的なサラリーマンで年間上限27万6,000円の掛金のうち30%に当たる8万2,800円が還付されます。
元本保証の付いた運用商品も選べ、選択肢が広いiDeCoで老後の資産形成を考える方が現実的だと思われます。
まとめ
以上のように、現在の環境では円建て個人年金保険はおすすめしません。
現役世代で住宅ローンがあれば、そちらを繰上返済したり毎月の返済額をアップさせた方が投資効果は高いでしょう。
返済した元本に付いてくる利息まで返済することとなるので、返済の倍額が返済効果と言えます。
加入する場合は、余剰金の一部かつ住宅などのローン(借入)がなく、iDeCoにも上限加入している方が初めて検討する商品なのです。
外貨建ての場合は利回りが高いため検討に値するかも知れませんが、為替変動を理解できる方のみご検討ください。
円建てが低金利だから外貨建て、という安易なセールスには惑わされてはいけません。(執筆者:中野 徹)