住宅ローンの金利引き下げ競争が限界を迎える中、銀行側が提示する「最低金利適用のための条件」で負担が増しています。
今回は、実際に大手2行の事例を確認しながら、この問題について解説します。
目次
最低金利を得るには、銀行の示した条件を満たす必要がある
今までは、顧客の個人信用情報に問題がなく、安定した職業に就いていれば、最低金利の適用を受けることが出来ました。
しかし、住宅ローンの金利引き下げ競争が進み、住宅ローンの利ざやだけではやっていけなくなりました。
そこで考え出されたのが、一定の条件を付けることで、顧客の金融資産を囲い込み、今後の手数料収入を増やすことで、付加価値を付ける方法です。
この方法は、既にメガバンクなどで行われていますが、メガバンクはあくまで金消契約(金銭消費貸借契約)までに、顧客のニーズに沿った提案をするだけで、それにより最低金利が適用されるわけではありません。
しかし、これから紹介する大手2行は、それをしなければ、最低金利の適用が受けられない仕組みとなっている点に、大きな違いがあります。
これを強制適用すると、優越的地位の乱用と取られることを知ってか、あくまで任意というスタンスですが、最低金利を得るためには、銀行の示した条件を満たす必要があります。
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1. 三井住友信託銀行では、3つの条件をクリアする必要あり
まずは、三井住友信託銀行の事例です。
三井住友信託銀行では、変動金利で年0.475%という金利を提示しています。
普通の大手行では、これだけでも十分に低いのですが、最近、以下の条件を満たすことで、さらに金利を引き下げ始めました。
それは、
(2)「NISA口座」または「ジュニアNISA口座」の申し込みで年0.01%
(3) 住信SBIネット銀行の口座開設の申し込みで年0.01%
(1)(2)(3)の利用で最大年0.03%の金利引き下げ
です。
これだけ見ると、三井住友信託銀行にとって都合の良い条件ですが、これで最低金利は年0.445%となり、少しでも低金利が欲しい顧客は思いのままに操れます。
なお、三井住友信託銀行ダイレクトの申し込みと、三井住友信託銀行を給振口座に指定することが大前提です。
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2. りそな銀行は、団信革命加入で最低金利が更に低下
りそな銀行では、変動金利で年0.470%という金利を提示しています。
ここも、これだけで十分に低いのですが、第一生命保険株式会社と共同開発した、団信革命という商品を売らなければならないため、団信革命加入で更に年0.05%の金利引き下げです。
団信革命は、年0.3%の上乗せで、7大リスク(死亡、高度障害、がん、急性心筋梗塞、脳卒中、病気・ケガによる16の状態、要介護)に対応し、仕事を続けられても続けられなくても、住宅ローン残高はゼロになります。
ただしホームページでは、「団信革命加入でさらに金利が▲年0.05%」とあり、単純計算すれば年0.42%となりますが、団信革命加入には年0.3%の上乗せが必要で、結局は年0.72%という金利になってしまいます。
この辺りの詳細について、ホームページには記載がなく、顧客が年0.42%と勘違いしないのか危惧しています。
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最低金利の低さだけに夢中になると失敗する
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私の今までの経験では、住宅ローン金利の低さだけに夢中になりすぎてしまった顧客は、オーバーローンなどで最終的に失敗しています。
上記の顧客は、いくら返せるかではなく、いくら借りられるかという、本来とは逆の思考回路に陥ってしまっているからです。
住宅ローンは、あくまで住宅購入の道具であるということを意識して、住宅ローンに夢中になりすぎないように注意してください。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)