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生産緑地は売れない?
生産緑地に指定された農地をたくさん持っている知人から、
今回この農地のお陰で多額の相続税が発生してしまったが、売れないのでは困った!!」
と、相談されました。

生産緑地は死亡により指定解除できる
原則、指定されてから30年間(相談者の地域は2022年まで)解除できなですが、実は、相続が発生すると30年以内でも指定解除でき、売却可能です。
主たる従事者(当該生産緑地に係る農林漁業の業務に、当該業務につき国土交通省令で定めるところにより算定した割合以上従事している者を含む。)が死亡し、若しくは農林漁業に従事することを不可能にさせる故障として国土交通省令で定めるものを有するに至つたときは、市町村長に対し、国土交通省令で定める様式の書面をもつて、当該生産緑地を時価で買い取るべき旨を申し出ることができる。≪生産緑地法より抜粋≫
生産緑地法第10条には上記のようにありますが、実務的には、ほとんど
(1) 主たる農業従事者 = 土地所有者である
(2) 市町村に買い取申出する → 買い取らない
結果的に
となります。
このことを知らない相続人は多いです。
ミスの多い生産緑地の相続税評価
知人の相続税申告書を参考にみたところ、生産緑地の農地の評価が過大に計上されていました。
生産緑地は市街化区域内にある農地に指定されていますが、固定資産税の課税明細書には、生産緑地である区分が記載(市町村より違いますが)されていません。
制約のある農地のため、相続税評価では最低5%の減額ができる旨を、通達で決められています。
(1) 買取り申出ができない生産緑地は10%から35%の減額
(2) 買取り申出ができる生産緑地は5%の減額
相続の場合、多くは主たる農業従事者の死亡で「買取り申出ができる」農地となり、5%しか減額できません。
申告書をみたところ、最低でもできる5%の減額がありません。
市役所に行き農務課等で基本農業台帳にて耕作権の確認

都市計画課にて生産緑地等の現地調査していないのが原因かと思われます。
現地に行けば生産緑地の立て札があります。
5%の評価減ですが相続税で300万円ほどの還付が見込まれました。
広大地の評価減の適用の可否
平成16年以降の相続より広大地に該当すれば40%以上の評価減ができる通達がでました。
知人の相続は平成15年なので、16年以降用の計算式は使えません。
面積が広い場合
面積が大きければ評価減ができるルールはありました。
公共公益的施設用地が必要となりその面積部分は除いて評価できます。
公共公益的施設用地の面積計算が土地の形状などによるため、分譲業者さんによりさまざまな形が取れるためこの評価減の面積に迷いがありました。
また実際、税務裁判でもいろいろ判決がありました。
閃いて相続税還付に成功
国税にて
という回答と解釈し、不動産鑑定士さんに合理的な公共公益的施設用地の図面を作成してもらい、更正の請求をしました。
それは30%減となりましたがその土地の場合の個別事情とみて割り切りました。
税務署の対応は早かったです。
ちょうど「広大地」の改正が出たところで、16年以降なら40%以上減額でき、それ以前の場合は
という通達通りに申告したためか、すぐに1,000万円の税金が戻ってきました。
タイミングが良かったのだと思います。
タイミングが悪い場合

広大地に該当するのか否かのさまざまな判例がその後出てきて、そこの判断が悩ましいものになっていたので、「合理的でない判例」が出た直後に更正の請求をすると否認されることもありえたわけです。
そのため平成30年以降は形式的に判断できるように再改正されました。
また、タイミングにより更正の請求をすれば、税務署としてはついでに名義預金等の申告漏れの調査もした上で検討され、税額が上がることもあり得ます。(執筆者:橋本 玄也)