目次
介護認定を左右する2つの調査
介護保険サービスを受けるためには申請をしないといけません。
その申請後は2つの調査を基に専門家による話し合い(介護認定審査会)が行われ、結果を出していくことになります。
ここではその2つの調査について概要をご説明致します。
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訪問調査
実際に対象となる人が生活している場所に調査員が訪れて、身体状況を確認していきます。
寝たきりの人に対しては直接体を触ることもありますし、認知症の人にも会話をして実際の状況を観察するのです。
所定の用紙を見ながらチェックをしていきます。
主治医意見書
病気などについて理解している主治医が記入する書類です。
訪問調査に比べて医学的観点が強い書類になります。
様式があり、医師はその内容に添って書き込んでいく形になっています。
訪問調査における内容
それでは訪問調査の内容について、初めての人にでも分かるように詳しく解説させて頂きます。
特にご家族さんにとって参考になる部分ですので、目を通して頂けると幸いです。
担当ケアマネジャーの関わり方
訪問調査の日程の調整は、調査員と家族が直接相談して決めます。
初めて調査を受ける場合、心配であるならば担当のケアマネジャーさんに相談して、調査時に同行してもらうのも一つの方法です。
ケアマネジャーさんは調査のポイントを理解していますので、その対象者にとって、どの部分が重要になるか判断し、調査員に的確に伝えてもらえることが期待できます。
私も訪問調査には度々同席させて頂いています。
調査時には分らない、日常の様子も伝え、正確な結果が出るように努めています。
普段できないことを無理して行う本人
介護保険制度が開始された当初から、課題になっているのがこの「普段できないことを無理してやってしまう」ということです。
調査の基本は普段の様子を知ることですので、調査のときだけできたのでは正確な結果が出るとはいえません。
仮に、調査の際、無理してベッドから車椅子へは自力で移動できると判断されても、普段は家族が手伝っているのなら実情と認定結果に誤差が生まれることになります。
このようなことも含めて調査の際には家族や担当ケアマネジャーの関わりが重要だと言えるでしょう。
最大限できること引き出そうとする調査員
国は言葉にはしませんが、年々調査自体が厳しくなっているのは事実です。
「厳しくなっている」とは、最大限本人のできることを引き出して、なるべく要介護度を現状より上げないようにしています。
これは私の主観ですが、業界では有名な話です。
私の経験を少しお話させて頂きます。
「自分では歩けますか?」という問いかけに対して「普段から自宅の中では車椅子です」と答えると…
「壁を伝ってならどうですか?」
「1mぐらいはあるけるのでは?」など
どんどん追求してくるのです。
もし、ここで「壁を伝ったらあるけるかも」というような返事をしたとします。
そうするとそこをさらに突っ込んできて、それなら「ベッドの横にポータブルトイレを置けば自分で使えそうなか…」等の話がでてくるのです。
こうやって、ひとつの「できる」ということをきっかけに、どんどん追求してくるのです。
ここはやはり調査専門のプロです。
訪問調査において正しい調査をしてもらうために
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それでは、実情と認定をズレ防ぐ方法をいくつかご紹介します。
私の経験も含めてなるべく具体的にお伝えしたいと思います。
本人に事前に伝える
特に意思の疎通が可能な状態である本人には、調査員が来ることを事前に伝えておく方がいいでしょう。
私が施設内でケマネジャーをしている時も、可能な範囲で伝えていました。
しっかりした人なら、1週間前に伝えておいて、さらに前日に確認をしておきます。
伝え方のポイントですが、
(2) 普段していることをそのまま行動(話す)するように伝える。
(3) 難しそうなら無理しないで、私(同席者)が助ける事を伝える。
この3つがあります。
(1)に関しては、ある程度の心構えをしてもらうために行います。
仮に忘れても全く問題ありません。
私は調査員に対して
「このようにして物忘れて多く生活に支障が出ています」
と逆に物忘れに対してアピールするようにしています。
こうやって普段から認知症による症状があることを説明できるきっかけにするようにしています。
ズレを無くすために担当ケアマネジャーさんにフォローしてもらう
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初めて調査を受ける家族さんは不安があると思います。
そこで助けてくれるのが担当のケアマネジャーさんです。
担当のケアマネジャーさんが同席する事は義務付けられていませんが、家族が同席をお願いすると応じてくれることがあります。
ケアマネジャーさんは、調査のポイントをよく理解していますので、大切な場面でフォローしてくれることが期待できます。
私の場合は、普段できない事をやろうとしたときに、すかさず「危ないから無理しないで!」とサラッと割り込んだりしていました。
調査員は、調査する事によって体調を崩したり、ケガをすることを最も恐れています。
なので、このようにして、的確に割り込むことに対しては、その調査をそれ以上続ける事は考えられません。
チェック項目の確認は必須
初めての調査なら、どんなことを質問されたりするのか分かりません。
そこで、チェック項目を事前に把握しておくことをおすすめします。
質問内容について
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調査の時間は30分前後ですが、どのようなことを聞かれるか分からないよりも、先に目を通しておくとなんとなく安心ですよね。
ちなみに、私達プロは、調査の都度本人ができたことできなかったことをチェックしておきます。
そして、ケアマネジャーとしてフォローしたこともメモに残しておいて、それに目を通しておいて次の調査を受けるようにしています。
こうすることによって、本人の状況の変化も分かります。
例えば「前回は自分でトイレ自分で行っていたけど今では尿取りマットを使用して家族の助けがいります」などと 正確に伝えることができるメリットがあります。
立場が変われば気持ちも変わる
介護認定の結果については、それぞれの立場によって気持ちは変ってくるのもです。
ここでは3者の視点から考えてみます。
在宅介護をしている家族
在宅介護をしている家族や本人からすれば、一般的には要介護度が高く出る(重度になる)方が嬉しいのが本音ではないでしょうか?
要介護の段階に応じて介護保険内で受けられる限度額(支給限度額)が決まっており、要介護度高くなればなるほど、サービスをたくさん受けられるからです。
ただし、サービスの量に変化がなければ、サービスの単価は高くなるので嬉しい事ではありません。
下の表をご覧下さい。
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このように要支援1と要介護5では30万円ほどの差があるのです
施設介護をしている家族
例えば、施設に入所している状態で要介護3から要介護5に上がった(重度になった)とします。
そうすると、家族の立場からすれば料金が値上がりする事になるので嬉しくはありません。
施設で介護を受けるということに変わりはないので、どうせ同じように施設でお世話になるなら安いほうがいいと考えるでしょう。
在宅介護で担当するケアマネジャーの立場
どちらかと言うと、本人や家族に近い立場です。
要介護1よりも要介護5の方がサービスの選択の幅も拡がりますし、何より家族の意向・要望に対応しやすいです。
仮に要介護5から要介護3になるなど軽くなった場合は、家族から
「あの調査員大丈夫かしら?」
「ケアマネさんなんとかならないの?」
などの意見を家族から言われることが多いので、嬉しくないのが本音です…。
サービスを提供する事業所の立場
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在宅介護サービス事業所
例えばデイサービスを3日間利用するとすれば、要介護3よりも要介護5の方が一日の単価が高くなるので嬉しいです。
しかし、この場合だと状態が悪くなったということで、デイサービスよりもショートステイの方が家族の負担軽減になると考えられた場合、デイサービスの利用を控えて他のサービス(ショートステイ等)に移行する可能性もあるので、その時にならないと分からない部分もあります。
施設介護サービス事業所
施設介護の場合、要介護3で30日利用するよりも、要介護5で30日利用する方が報酬は高くなるので嬉しいです。
実情と認定にズレがあると感じた場合の対応
不服申し立てをする
正直これは自治体がかなり嫌がります。
家族が窓口に行ってはっきり言えばスムーズに話が進むかもしれませんが、代わりにケアマネジャーが行って、家族の代わりに申し立てをすると簡単ではありません。
自治体としての責任があるので…。
ちなみに、不服申し立てをした後の訪問調査は、一人でなく二人で来たというケースもありました。
調査員もプレッシャーがかかります。
区分変更届けをする
不服申し立てと違い、一度その結果を受入れて、すぐに変更届を出すという方法です。
なので形としては、「新しく出た結果に異論はありませんが、その時と状況が変わったのでもう一度審査をして下さい」ということになります。
自治体の方はこちらの方法を使って貰う方がありがたいと考えています。
現行の介護保険制度の問題点
私達プロからすれば、「実情と認定のズレ」は昔から改善されていない問題点のひとつだと思います。
訪問調査を実施するケアマネジャーの資格を所持してなければできません。
しかも、調査員専門に研修を受けますので、正しい調査ができるように最善の努力はしているでしょう。
しかしながら、現実には「明らかにズレがある」と感じている家族や担当ケアマネジャーがいることは事実です。
ズレがあると感じてからの対応もなかなかスムーズではありません。
昔に比べると調査員の意識の変化も感じます。
本文中のなかでも述べたように、調査の際には鋭く突っ込んできて、厳しい結果になることが増えています。
今回は実情と認定のズレにスポットを当てて、私なりに考えてみました。
今後何かの参考になれば幸いでございます。(執筆者:陽田 裕也)