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2回目のマクロ経済スライドが発動

11月末の日経新聞電子版で、「2018年は、通年で消費者物価が1%を超えるアップとなる見込みとなり、結果、2回目のマクロ経済スライドが発動される可能性が高まった」という報道がありました。
マクロ経済スライドとは、公的年金減額措置です。2004年に導入されました。
本来、公的年金は物価の変動に連動するカタチで増減することになっています。
物価が大きく変動しても、年金を受給する高齢者に一定の購買力を残しておくためです。
マクロ経済スライドによる年金の減額は、物価がアップした時の年金増額を抑制することで、相対的に価値を低下させるといった手法が取られます。
年金支給額を直接カットするわけではありません。
マクロ経済スライドの実施は過去1回だけ
残念ながら、2004年に制度は導入されたものの、実際にマクロ経済スライドによる年金減額が実行されたのは、これまで2015年の1回だけです。
理由は
です。
マクロ経済スライドが実行されるには、物価の上昇が継続していることが条件です。
想定していたのと真逆の事態だったわけです。

年金をもらい過ぎる状態が続きました
物価が継続的に下落するデフレ経済は、公的年金制度が始まって以来経験したことのない異常事態でした。
結果、
この影響を受け、以後、想定していたよりも多額の年金支給が継続することになりました。
異常な事態が収束し、正常な状態に回復したのは1回めのマクロ経済スライドが実施された2015年になってからです。
マクロ経済スライドは失敗した政策?

と、聞かされれば、マクロ経済スライドはデフレ経済を予測できなかった失敗政策になってしまいます。
しかし、この場合、ずっと間違ってきたのは経済政策の方です。
マクロ経済スライドが想定していたのは、物価が継続的に上昇を続ける状態です。
すなわち、成長する経済です。
日本以外の主要国は、順調に経済成長を続けています。
異常だったのは、日本のみです。
異常事態は今も続いています。(執筆者:金子 幸嗣)