市場関係者の間で挙がっている2019年の合言葉が「QT(Quantitative tightening) = 量的引き締め)」です。
リーマンショック以後の金融市場では「QE(Quantitative easing) = 量的緩和」が主要国で行われてきましたが、こうした政策が世界全体で転換点を迎えようとしています。
日米欧3中銀の合計の資産規模は、QEの実施により10年間で4倍の14兆ドルに達しています。
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一定の効果の後は副作用の方が懸念されている
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リーマンショックによる世界的な信用収縮を乗り越えるために行われたQEは一定の効果を示したといえます。
しかし量的緩和が金融市場へのリスクマネーを呼び込んでいた時期に比べると、現在は金融政策の効果が限られており、資産バブルが生じるなど副作用の方が懸念されています。
QEは伝統的に行われていた金利のコントロールではなく、通貨量のコントロールによる金融緩和を行います。
中央銀行が国債や手形などの資産を市中銀行から購入することにより、市中銀行が保有する中央銀行の当座預金残高量を拡大させて金融緩和を行います。
の押し下げを通じて、リスク資産の価値を相対的に高めます。
反対にQTではこうした買い入れ額を減らしていくことで資産を圧縮し、通貨量を平常時に戻していきます。
資産圧縮 → 通貨量減少 → 金利の引き上げを行うこととなるため、副作用としてリスク資産への投資が抑制される懸念があります。
FRBは資産圧縮の継続を示唆
FRB(米連邦準備理事会)は資産の減少幅を月最大500億ドル(約5兆5,000億円)とし、資産圧縮の継続を示唆しています。
ECB(欧州中央銀行)は12月末で新たな資産の購入を停止し、量的緩和を終了します。
日銀の資産拡大のペースもじわじわと弱まっています。
主要国の中央銀行の資産購入ペースが弱まることで、金融市場に大きな影響があると警戒を強めています。
現在の米国の状況では、株式から流出した資金は安全資産とされる米国長期国債に流入しています。
長期金利には低下圧力がかかるため、QTの影響はある程度は相殺されていると言えます。
さらなる株安を招くというシナリオも
ただし株安の勢いが強いと、金利低下が追い付かなくなるため、金利が高止まりし民間債務に負荷がかかり、さらなる株安を招くというシナリオも懸念されます。
過剰流動性相場の中で投資先として拡大をみせたハイイールド市場も、金融引き締めの影響にさらされています。
加えてエネルギー関連銘柄を多く含むことから、原油価格急落が石油関連企業の業績に対する懸念を意識させています。
QE・QTとも金融市場では初めての試みです。
中央銀行は市場との対話を続けながらこの「ナロウパス」を進まなければなりません。
2019年は市場への影響を抑えながらQTをどのように行われていくかに注目が集まります。(執筆者:相川 隆)