大学生のアルバイト収入について「確定申告をするべきか」、「もし親の扶養を外れたらどの程度影響があるか」というご相談を受けました。
確定申告については、「バイト代から税金を引かれているので申告をする必要はない」と思っている方もいますが、確定申告をすれば税金が戻ってくる場合があります。
扶養については、学生の収入が一定額を超え親の扶養を外れると、税金や健康保険料の負担が増える事で、世帯としての手取額が減少してしまう場合があります。
今回は、大学生のアルバイト収入にかかる税金と確定申告、そして学生の収入と世帯手取りの変化について紹介します。
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目次
1. 学生のアルバイト収入にかかる税金と確定申告
高校生や大学生など条件を満たす学生は、「勤労学生控除」を受けることができるため、アルバイト収入が年間130万円以下であれば所得税は課されません。
従って、年収が130万円以下であれば確定申告をする必要はありませんが、バイト代から税金が引かれていたら、確定申告をすることで納め過ぎた税金が還付されます。
税金が引かれているか否かは、アルバイト先から交付された「源泉徴収票」で確認できます。
源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄の金額が1年間の所得税として既に納めている金額です。
年収は「支払金額」欄に記載されています。
「支払金額」が130万円以下で、かつ「源泉徴収税額」に金額の記載があれば、確定申告をすることで所得税が還付されます。
アルバイト先が複数ある方は源泉徴収票の「支払金額」欄と「源泉徴収税額」欄それぞれの金額を合算して、同様にお考えください。
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上記の源泉徴収票から年収は120万円ですが、所得税として8,600円を納めていることが分かります。
このケースでは「勤労学生控除」を受けていませんでしたので、「勤労学生控除」の確定申告をすることで源泉税8,600円全額が還付されます。
「勤労学生控除」を受けているか否かは源泉徴収票の下の赤枠部分で確認できます。
この覧に印がなければ、「勤労学生控除」を受けていないと考えられます。
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このまま放っておくと、所得税を多く払い過ぎているだけでなく、後に賦課される住民税の額も過大になります。
上記の場合、確定申告をしなければ住民税(大阪市)は2万4,800円ですが、「勤労学生控除」を申告することで5,300円と、住民税が2万円近く減少します。
所得税と合わせると2万8,100円分、税金を減らすことができます。
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時給を900円とすれば、2万8,100円は31時間分のアルバイト代にあたります。
国税庁のサイトではスマホでも確定申告ができるように準備されていますので、ぜひトライしてください。
確定申告を通じて、所得税の仕組みを知る事もアルバイト同様、社会勉強になります。
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アルバイト収入が130万円を超えると「勤労学生控除」は受けられません。
収入が130万円を超えて課税されていない場合や給与を2か所以上から受けている場合など確定申告が必要な場合がありますので、詳細は所轄の税務署にお尋ねください。
なお、親元を離れて下宿などしている方の場合、納税地は源泉徴収票に記載されている住所となります。
住民票を異動していなくても、源泉徴収票の住所が居住地であれば、所轄税務署は居住地となります。
2. アルバイト収入の増加と税金と扶養
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学生であっても、収入が一定額以上になると親の扶養から外れます。
扶養から外れると、学生本人の収入が増える一方で、親の税金が増えたり、健康保険料の負担が発生するため、手取額が減少に転じる場合があります。
学生の収入の増加により、税金、扶養関係そして手取額にどのような影響があるか見ていきましょう。
100万円を超えると住民税がかかる
大阪市場合、住民税は下記のように計算され、給与収入が100万円を超えると住民税の均等割5,300円が課税されます。
学生の場合、収入が130万円までは所得割は課税されませんので、103万円を超えて130万円までは均等割のみです。
収入が100万円を超えた場合5,300円分余分に稼げば、手取額は回復します。
自治体によっては収入が98万円を超えると住民税が課されるところもあります。
住民税は自治体によって計算方法が異なりますので、課税の基準や金額についてはお住まいの自治体にご確認ください。
尚、親元を離れて下宿などしている方は、源泉徴収票に記載された住所地の自治体にご確認ください。
103万円を超えると親の税金が増える
学生の収入が103万円を超えると、親の所得税の計算上の扶養から外れることになります。
例えば、父親が大学生の子(年末時点の年齢が19歳~22歳)を扶養している場合、「特定扶養控除」として子一人につき65万円(住民税は45万円)の控除を受けることができます。
子の収入が103万円を超えると、父親は「特定扶養控除」を受けられなくなり、所得税、住民税とも増加します。
その結果、子の収入が増えても世帯としては手取額が減少します。
いくら税負担が増えるかは、下表のように所得によって異なり、所得が高い人ほど増税額は大きくなります。

親の課税所得金額は次の方法で確認できます。
(A) 会社員や公務員等給与所得者の場合
源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」と「所得控除の額の合計額」を用いて次のように課税所得を算出することができます。
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上記の場合は、
436万円 - 221万円 = 125万円
が「親の課税所得金額」です。
子のアルバイト代が103万円を超えると、親の税金負担が約7.8万円増えます。
(B) 個人事業主、フリーランス、副業がある親の場合
確定申告書の26番「課税される所得金額」が「親の課税所得金額」に該当します。
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上記の場合、937万円が「親の課税所得金額」になります。
子のアルバイト代が103万円をこえると、親の税金負担が約26.4万円増えます。
130万円以上になると健康保険料の負担が増える
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健康保険の扶養関係は親が加入している健康保険制度により異なります。
(A) 親が会社員や公務員等の場合
親が会社員や公務員で健康保険や共済保険に加入している場合、子のアルバイト収入が130万円以上になると、健康保険上の扶養を外れます。
そのため、子は別途、国民健康保険に加入しなければなりませんので、健康保険料が発生することになります。
例えば大阪市の場合、世帯主の年収が500万円で子の年収が130万円であれば、子の国民健康保険料は10万8,000円と計算されました。
子の収入が130万円を超えると11万円近く手取額が減少することになります。
国民健康保険の保険料は各自治体により異なりますので、お住まいの自治体にお尋ねください。
尚、親元を離れて下宿などしている場合も、国民健康保険は住民票がある自治体で加入します。
(B) 親が個人事業主の場合
親が個人事業主など国民健康保険に加入している場合は、世帯収入が増えるのに応じて一定の割合で保険料が上がります。
そのため、子の収入が増える以上に保険料が増加することはありません。
また親の国民健康保険料が上限に達している場合は子の収入が増えても保険料が上がることはありません。
従って、親が国民健康保険に加入している場合、これにより手取額が減少することはありません。
130万円を超えると所得税が課税される
学生の収入が130万円を超えると所得税が課税されます。
この場合「勤労学生控除」を受けることができなくなりますので、基礎控除以外に控除がない場合、所得税と住民税合わせて5万円以上になることでしょう。
その分手取額は減少に転じてしまいます。
3. アルバイト収入の変化と手取額の変化
前述の税金と扶養の関係を踏まえて、学生の収入の変化と手取額の変化の特徴を見ていきましょう。
(A) 親が会社員等健康保険に加入、年収500万円(所得税率5%)の場合
大学生のアルバイト収入の増加と世帯手取額の増加の関係は次のグラフのようになります。
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学生の収入が103万円を超えると、税制上の扶養を外れ親の税金が増え、世帯として約8万円手取額が減少します。
大学生の子が税制上の扶養を外れた場合、手取額を回復させる収入の目安は110万円以上となります。
学生の収入が130万円を超えた場合、学生自身に所得税が課税され、国民健康保険に加入することから、世帯として約18万円手取額が減少します。
子が税制上の扶養を外れた場合、手取額を回復させる収入の目安は146万円以上となります。
(B) 親は個人事業主等で国民健康保険に加入、所得937万円(所得税率33%)の場合
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学生の収入が103万円を超えると、税制上の扶養を外れ親の税金が増え、世帯として約25万円手取額が減少します。
大学生の子が税制上の扶養を外れた場合、手取額を回復させる収入の目安は129万円以上となります。
学生の収入が130万円を超えた場合、世帯として約3万円手取りが減少します。
子が税制上の扶養を外れた場合、手取額を回復させる収入の目安は135万円以上となります。
4. 学生のアルバイトについて思うこと
塾講師のアルバイトをしている大学生の親御さんからこんなご相談を受けたことがあります。
という内容のご相談でした。
大学の授業料はバブル崩壊後も上昇を続け、バブル絶頂期の30年前は30万円程だった国立大学の授業料は現在54万円です。
この間、親の収入は上がらず、増税や社会保険料負担増により手取額は減少しました。
その結果、現在大学生(昼間部)の約半数が奨学金を利用して大学に通っています。
特にマイナンバーが導入されてから「アルバイトで学費を稼ぎたい。でも扶養を外れると…」というジレンマをお聞きすることが多くなりました。
学費をバブル期の水準に戻すことができなければ、せめて「学生は所得の多寡に関わらず扶養を外れない」というような、学生の自助努力を応援する税制や社会保険制度の改正を期待したいと思います。(執筆者:小谷 晴美)
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