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筆者27歳のときにはじまった「相続」
父が病院で癌の宣告を受けました。
定年間際に受けた検診での結果でした。
結果を聞いたのは、本人を除く母と姉の3人でした。
当時は、癌の告知は、本人にはしないことが多かった昭和の時代です。
と3人のうち誰だったか質問したところ、
と回答されたのをはっきりと覚えています。

筆者27歳の時でした。
頭が真っ白になり、茫然と帰ったのは昨日の事のようです。
そこからが我が家の相続の始まりです。
バブル時代で相続税もとんでもないことに

当初は「父が亡くなる=自分が家長としてやっていかなくては…」といった重圧で何も考えられない状態でした。
しかし時間が経つに連れ、しだいに見えてきた我が家の一番の問題は相続税のことでした。
週刊誌などでは、土地持ちの相続税破産の記事が踊っています。
我が家は、先祖代々から引き継いだ土地はあっても預金はありません。
問題は
だったのです。
3か月の宣告を受けた父でしたが、実際に父が亡くなったのは、その10年後でした。
その間、相続税について悩み、考える日々でした。
二次相続まで考えた相続対策とは
父が入退院を繰り返していた時のことです。
母が病院で倒れ、精密検査を受けたところ、血液の癌であることが判明しました。
そこで筆者が頭に浮かんだのは、不謹慎ですが、
ということです。
母は専業主婦でしたので預金もありません。
母名義の不動産もなく母の相続税は心配ありません。
ところが母が父より先に亡くなれば、父の相続時には、相続税の基礎控除も1人分減ります。
さらに配偶者の税額軽減も適用できないため、相続税の金額だけでいえば、母が父より長生きしてくれた方が安くなる訳です。
但しこれは子供の相続税のみを考えた話です。
そんなことを考える自分自身、嫌な気持ちでした。
両親どちらにも長生きして欲しいと思っているのも本心です。
具体的に数字で説明してみます
※母には固有財産はないとします。(現在の税率で計算)
1. 父が先に亡くなった場合
母は50%相続し、配偶者の税額軽減の適用を受けたとします。
父の相続時、子供2人では315万円の相続税が発生します。
次に二次相続です。
母は父より5,000万円相続しているため、母の固有財産がなかったとしても80万円の相続税が発生します。
合計で395万円(315万円+80万円)です。
2. 母が先に亡くなった場合
母の死亡時には相続税はかかりません。
次に、父が亡くなった時の相続税は770万円です。
なんと375万円の差が出ます。
このケースの場合、父が先に亡くなった方が相続税は、お得になります。
さらに、一次相続時に母がどれだけ相続するかでも、2回の父母トータルの相続税が変わります。
この場合(下の図)、母が4割相続するのが一番お得のようです。

実際には、小規模宅地の評価減が2回とも適用できるか否かにも左右されますし、財産は変動しますのでなかなか思うようにはいきません。
しかし、そんなことを考えている自分自身自己嫌悪に陥ります。
問題は、かかる納税資金をどうやって捻出するかです。

不動産の売却は考えられなかった
当時、長男である筆者は
と考えていたため、先祖代々の不動産の売却は選択肢にありませんでした。
物納も同じことです。
しかも、後日の知識で分かったのですが、我が家の所有している土地のほとんどが調整区域の農地で、売却には制限がある土地でした。
そもそも相続発生時、平成5年のバブル崩壊しつつあった時代です。
母も
と言ってくれました。
真逆に考えていた「きょうだいの想い」

「相続税のことが心配」といいますが、それは自分の払う相続税のことです。
父の遺産は、母が農地等を維持管理してくれた賜物です。
ところが父の遺産の分け方について、母の気持ちを聞く余裕があったのだろうかと、今振り返って思います。
筆者は、姉と2人きょうだいです。
相続が無事終了後、筆者が
という話をしたら、姉は
と真顔で答えます。
見る人の立場でこれだけ思いも違います。
これも父の相続で知ることができました。(執筆者:橋本 玄也)