日常生活では「もったいない精神」は美徳とされることが多いです。
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ですが、お金を増やす際には、この「もったいない精神」が困った存在になることがあります。
今回は「コンコルド効果」をふまえつつ、知らないうちに損をする仕組みを見てみましょう。
目次
分かっているけど、やめられない!? コンコルド効果
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コンコルドとは、イギリスとフランスの会社などが共同で50年くらい前に開発したとても速い旅客機です。
かなり昔の旅客機ですが、現在の旅客機よりもずっと早く飛べるスゴイ飛行機です。
しかし2003年以降、生産を終了して飛んでいません。
理由は「採算が合わない」という単純なことです。
わかっていたのに、やめられなかった…
「採算が合わない」というのは割と早い段階から分かっていて、続けるほどに赤字が拡大するのに、延々と開発・量産をしていました。
合理的に考えるなら、
「じゃあ、途中だけど計画を中止にしよう。」
となると思われます。
しかし、コンコルドの場合、
「でも、ここまで高額の開発費をつぎ込んだから、やめるにやめられない。」
「赤字になるのは分かるけど、つぎ込んだお金や時間・努力がもったいないからやめられない」という状況です。
そのため、行動経済学などでは「途中で赤字が見込まれていたのに、投入した費用が巨額過ぎて、やめるにやめられない状態」をコンコルド効果(またはシンクコスト・埋没費用)と呼んでいます。
コンコルド効果一例 こんな時に起こっているかも…
コンコルド効果は一見すると、笑い話のようですが、身近で誰にも起こりうるお話です。
こんな例が挙げられます。
・高額のエステクラブに入会した。費用対効果が今一つなので、やめたい。しかし、いまやめると入会金が「もったいない」。だからやめられない。
・ある料理教室に通っている。あまり役に立たないのでやめたい。しかし、ここまで頑張ってきたのにやめるのはなんだか「もったいない」。
・投資で、ある個別の金融商品に高額の資金をつぎ込んだ。しかし、買った時の値段よりも大幅に下落している。このままでは今後も赤字は確実、もうイヤだ。しかし、ここで売ると大きな赤字だけが残るので「売りたいけど売れない」。
・ある企業で働いている。人間関係がイヤでやめたい。しかし…。
筆者も同じような経験がたくさんあります。
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コンコルド効果から最小ダメージで抜け出すには?
上記コンコルド効果の一例で、絶対に赤字が決定している・今後も永遠に回復の見込みがないとした場合、どうしたら良いでしょうか?
正解は、
です。
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投機的な手法では「損切り」と呼ばれる行為です。
コンコルドの時もそうでしたが、赤字が継続して発生するのに、延々と続けてもどんどん赤字幅が拡大してしまうだけです。
「もったいない精神」があるゆえに苦しいですが将来の大きな痛みから脱却するには、いま、痛みを覚悟しないといけないのかもしれません。
人はコンコルドの誤りの一例を見ると「非合理的なことををするものだ」と思います。
しかし、多くの場合、自分も同じように行動をしているかもしれません。
長期分散投資の場合
見極めるのは難しいですが、注意する点は「なんでもサッサとやめれば良い」ということです。
長期分散投資などでは、価格が下落した時は「安く買う」チャンスです。
「損切り」してはかえってチャンスを失います。
長期分散投資では、安く買うことでその後の値上がり益が期待できます。
長期分散投資の場合は、投資対象が「コンコルド」なのかどうかをじっくりと考えてから、行動をしてはいかがでしょうか。(執筆者:佐々木 裕平)