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どっちを買ったら、お買い得だと思いますか?
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同じ国内株式の市場平均を対象とする投資信託が2種類あります。
値段(基準価額)はそれぞれ次の通りです。
・ 2万円
・ 5,000円
どっちを買ったら、お買い得だと思いますか?
それともどっちでも同じでしょうか?
正解は
です。
なぜでしょうか?
それは、基本的には「同じ国内株式の市場平均を対象とする投資信託」なら、2種類でも5種類でも、値動きは同じだからです。
投資信託は基本的に1万円から始まります。
です。
つまり、どっちを買っても表面上の金額は違えども、今後の値動きは「どっちを買っても同じこと」です。
同じ投資対象の投資信託なら、どれを買っても基本的に同じ値動きになる(コストなど無視していますが、厳密にはコストが低い方がより良いです)。
対象が市場平均の場合、現在の価格(基準価額)が高いものが良いわけでもないし、低いものが悪いわけでもありません。
選好の逆転:同じ人でも、好きなモノの順番が入れ替わる
「選好の逆転」とは、同じ人であっても、条件などによって、好きなモノの順番などが入れ替わってしまう現象です。
例えば、お肉が好きなAさんがいたとします。
Aさんはお肉が好きですから、食事のときはお肉を好んで食べていました。
しかし、ある時テレビの健康番組で「魚が体に良い」という情報を得ました。
翌日からAさんは、魚を好むようになりました。
このように、状況によって好みや順序が変わってしまったりする現象を行動経済学では「選好の逆転」と呼びます。
こんな時に選好の逆転が起こりやすい
好景気時に先ほどの問題について、どう思いますか?
好景気時でも同じ「同じ国内株式の市場平均を対象とする投資信託」なら、価格(基準価額)の値動きは同じです。
しかし、安い方を見つけると「こんなに他の金融商品が高い価格(基準価額)なのに、割安だ!」とついつい勘違いします。
不景気な時にはどうでしょうか?
不景気な時は多くの投資信託の価格が下がりますから、高い方を見つけると「より高い価格(基準価額)の方が成績は良さそう!」とこちらも勘違いしてしまいます。
もちろん、好況不況を問わずに、どちらを買っても、同じように損をしますし、同じように得をします。
値動きは基本的に景気次第だからです。
それにも関わらず、選好の逆転が働き、同じ値動きをする投資信託であっても状況によってどっちを選ぶかが変わってしまうことがあります。
投資の基本は「安い時に買い、高い時に売る」ですが、それは単純に値段(基準価額)の高い安いだけでは判断できない時があるのです。
「市場全体が安い時(不景気な時)に買い、(長期保有して)市場全体が高い時(好景気時)に売る」がより正しい表現かもしれません。
投資信託の場合、価格(基準価額)の高い安いは必ずしも判断基準になりません。
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人間だから、選好の逆転が起こることはよくある
どれを買っても下がる時は下がるし、上がる時は上がります。
その時に選好の逆転が働くと、勘違いして損をするかもしれません。
選好の逆転は、ひょっとすると、損をしやすい原因の一つになるかもしれません。
例えば、基本的に「市場平均を対象とする投資信託」では次のようなことはないと考えられます。
・ ずっと運用成績が良い
・ ずっと運用成績が悪い
つまり、基本的に、何を買っても成績が良くなる可能性があるわけですし、永遠に成績が悪いものありません。
良くなったり悪くなったりするのが自然です。
自分が「これが良い」と選んだものでも、価格(基準価額)が下がるのが普通です。
下がるたびに「選好の逆転」が働き、「これはダメなものだった」と頭の中の順位が変わってしまい、売っていては、結果としてやっぱり「高く買って、安く売る(損する)」になってしまいます。
「選好の逆転」に左右されすぎていては、何を買っても損をしやすいのかもしれません。
問題はそれが「感覚」による根拠のないものか、数値的に正しいものか、冷静に判断することです。
そうすると少し合理的な投資に近づくかもしれません。(執筆者:佐々木 裕平)