脱税に関するニュースを多く目にするようになってきています。
と考えている人もいるのではないでしょうか?
そこで今回は、脱税をしてしまった場合
・ どのような罰則を受けるのか?
・ 量刑はどうなっているのか?
を解説します。

目次
脱税とは?
脱税について条文には、「偽りその他不正の行為」(所得税法第238条、法人税法第159条)により税を免れ又は税の還付を受ける行為とされています。
わかりやすくいいますと、偽装行為や隠ぺい行為などの不正な手段で税負担の軽減を図る行為といえます。
税金とは、売上から経費などを差し引いた額に対して課せられるものなので、それを免れる脱税の方法としては大きく分けて2つあります。
具体例としては、売上をごまかし、過少申告する行為です。
・ 経費を増やす方法
例えば領収証などを偽装・改ざんし経費を水増しする、架空の人物の人件費をプールする行為などが挙げられます。
どうして脱税はバレてしまうのか?
脱税は、主に税務署による税務調査、または国税局査察部(いわゆるマルサ)による査察調査により発覚します。
税務署も国税局も、数々の脱税の手口について熟知しており、その判別方法についても精通しているので、調査が入った場合には基本的にバレないということはありません。
たとえば、脱税の方法にあった「売上の過少申告」などは、取引先の請求書を調べることで売上と対応していないことを確認します。
さらに架空の人件費については、実際にその人物がいるかを確認するなどの方法によって判別できます。
なお、ドラマなどでよくみられる、突然会社にズカズカ上がり込まれ、社内中を荒らしまわって調査されるようなことは、国税局査察部による査察調査といい、調査全体の0.01%ほどしかありません。
よく聞く脱税調査というと、税務署による税務調査で、任意のものがほとんどで、事前に「何日にいく」との通知も行きますし、税関係書類等も調査を受ける人が自分で提出するという形になります。
脱税がバレてしまったらどうなるの?

脱税がバレてしまった場合、まずは、本来納めるべきだった税金と実際に納めた税金の差額である追徴税を払うことになります。
そして、さらに脱税をしたペナルティーとして国税通則法という法律に則って行政処分がくだされ、定められた「付帯税」が課されることになります。
付帯税には以下の6種類があり、実際に行われた脱税の態様に従って、どの税が課されるかが決定されます。
付帯税の6種類
1. 過少申告加算税
申告期限内に申告をしていたものの、実際に納税すべき額より過少申告だった場合に課税されます。
2. 無申告加算税
申告期限までに申告をしなかった場合に課されます。
3. 不納付加算税
源泉所得税を納付期限までに納付しなかった場合に課税されます。
4. 重加算税
納税額を意図的に仮装・隠ぺいした上で無申告、過少申告を行い悪質な脱税と判断された場合に他の加算税に代わり課税されます。
5. 延滞税
期限までに納付されない税金にかかる延滞金のような税金で、納付期限の翌日から発生し、納付された日数に応じて加算税とは別に課税されます。
6. 利子税
納税するさいに一括で納税できない場合、一部だけ納め、残りを定められた期日までに納める「延納」に対して課税されるものです。
これらの、追徴税や付帯税は、行政処分として脱税がなされた場合に必ず課されるものです。
悪質な場合は刑事罰も

さらに、脱税の態様が悪質である場合に、国税局による告発を通じて検察官が公訴提起することで、刑事罰に処されることもあります。
具体的には、所得税法第238条違反や、法人税法第159条違反となり、「10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金又はその両方」に処されることになります。十分に気をつけましょう。
脱税で逮捕されてしまうケース
そもそも逮捕とは捜査機関が行うものであり、税務署も国税局も逮捕権限はありません。
そのため、税務署による税務調査や国税局による査察調査がされた場合に、その調査中に突然逮捕されるようなことはないのです。
しかし、先ほど悪質な場合は刑事罰もあり得るとお話ししたように、脱税の態様が悪質なものである場合、国税局により捜査機関に告発されることがあります。
いかなる場合に態様が悪質と判断され、告発されるかは、事案によって異なります。
以前は脱税額が3年間で1億円以上というのが1つの目安とされていましたが、最近ではその額が下がっている傾向にはあるようです。
逮捕されるまでの経緯
まず、告発された後、主に捜査機関が脱税に関する証拠収集を行います。
その際、捜査機関により必要性があると認められれば逮捕や勾留がなされます。
逮捕勾留が必要かどうかの判断は、主に逃亡又は罪証隠滅(証拠隠滅)のおそれがあることです。
ただし、逃亡のおそれについては、告発される脱税の場合は、ある程度社会的身分が高い人によって行われる犯罪であることから、自己の存在や情報を社会に知られているがゆえに、逃亡を企てる可能性が少ないと考えられるために、あまり問題になることはありません。
どちらかというと問題になるのは罪証隠滅(証拠隠滅)のおそれがあることです。
脱税自体を否認したり、捜査に非協力的な態度をとっていたりすると、罪証隠滅(証拠隠滅)のおそれがあると考えられ、逮捕勾留がなされる可能性が高くなります。
実際にあった脱税の事例
これまで実際にあった事例をいくつか紹介します。
2015年横浜市と千葉県市川市の薬局2社の実質的な元経営者が法人税約8,700万円を脱税したとして刑事告発。
2018年大阪城公園内でのたこ焼きを売っていた茶屋の店主が所得税約1億円を脱税したとして告発。
なお、現在ニュースで騒がれている「青汁王子」こと三崎優太容疑者は約1億8,000万円の脱税をしたとして逮捕され、2019年3月4日に公訴提起されました。
うっかりの場合と計画性があった場合とでは違うのでしょうか?
脱税に対する罰則については、先ほどお話しましたように、行政処分たる追徴税や付帯税の賦課、さらに態様が悪質な場合に刑事罰が処されます。
ですので、計画性があった場合、態様が悪質であるとの判断に傾き、刑事罰に処される可能性が高くなるでしょう。
一方、計算ミスや税法の解釈の誤りによる過少申告、所得を得ていることを知らなかった場合、申告の手続きが遅れてしまった場合など脱税の意図がないケースは、「申告漏れ」と呼ばれ、脱税とは区別して呼ばれています。
したがって、これらのうっかりといえる「申告漏れ」の場合には、刑事罰まで処されることはありません。
脱税という違法な手段はやめましょう

脱税は調査が入った場合には、必ずと言っていいほどバレてしまうものです。
そして、一度バレたら少なくとも行政処分、態様が悪質だと判断されれば、付帯税と刑罰を同時に処される可能性もあり、本来払うべきであった税金の二倍以上もの額を払わなくてはいけなくなることもあります。
少しでも税額を低くしたいというのは、誰しもが思うことでしょう。
しかしながら、その手段として脱税を選んでしまったら、結果としてより多くの額を払わなくてはならなくなるうえに、前科までつくこともあります。そうなってしまっては本末転倒です。
脱税という違法な手段以外にも納付額を抑える手段はさまざまあります。
確定申告の方法を変えるだけでも納付額が安くなることもありますし、扶養者控除や配偶者控除など法律に基づいた負担軽減を図る節税方法も数多く存在します。
「払わなきゃいけない税金を減らしたい!」と思ったら、脱税を考えるのではなく、税理士にも相談した上、節税の方法を模索するようにしてみてはいかがでしょうか。(執筆者:刈谷 龍太)
弁護士。1983年千葉県生まれ。中央大学法科大学院 修了。弁護士登録後、都内で研鑽を積み2014年に新宿で弁護士法人グラディアトル法律事務所(https://www.gladiator.jp/)を創立。代表弁護士として日々の業務に勤しむほか、メディア出演やコラムの執筆などをおこなう。
男女トラブル、労働事件、ネットトラブルなどの依頼のほか、企業法務においても顕著な活躍を残す。
アクティブな性格で事務所を引っ張り、依頼者や事件に合わせた解決や提案力などに力がある。