皆さんはアベノミクス政策の3本の矢を覚えておられますか?
3本の矢の1つである大規模な金融緩和は2013年から始まり、黒田日銀総裁が就任してから6年たってもなお継続されています。
その政策の中心にあるのは、日銀による日本株式の購入です。
そして今年2月末の衆院財務金融委員会、黒田総裁がその日本株式(ETF)購入に関し注目すべき発言がありました。
日銀も企業と同じく決算がありますが、その採算株価はいったいいくらでしょうか?
今後の株価への影響と合わせ、検証してみます。

目次
日銀のETF購入、その採算株価は?
日銀のETF購入は年間6兆円、累計24兆円にのぼり、日本の景気回復を支えるアベノミクス政策の大きな柱となっています。
就任してから6年がたち、世界景気の低迷も重なって日本も景気減速が意識されるようになった今、最大の投資家となっている日銀の採算株価に黒田総裁が答えました。
日銀のETF購入政策はいつまで続く?
現在の日銀は個別銘柄の株式を直接購入するのではなく、ETFと呼ばれる上場株式投信を購入することで、間接的に上場企業の株主となっています。
政策の詳細は省きますが、2013年から5年連続で上昇し続ける株式相場では「含み益」が出ていました。
が、昨年2018年は初めて年間で下落しました。
今年10月に予定されている消費税増税による景気減速が収まるまでは政策を継続することが見込まれ、株式相場が下がっても買い続けることに疑問が投げかけられています。
採算株価は「TOPIXで1350」
2月末の衆院財務金融委員会で、黒田総裁が立憲民主党末松義規氏の質問にこう答えました。
「TOPIXが100ポイント下がるごとに含み益は1.6兆円減る」
3/8のTOPIX終値は1,572.44、あと14%ほど下落すると採算株価となってしまう水準です。
日経平均でいうと、1万8,400円付近。1万7,700円を切ると、日銀が債務超過となってしまいます。
通貨「円」の信頼性に影響

14%という幅は、株式相場の変動率から見てもギリギリといった水準でしょう。
日銀はETF購入をTOPIXに絞っている訳ではないのですが、最も多くの金額をTOPIXに投入しています。
もちろん採算株価を切ったからといって、直ぐに何か不都合が起きる訳ではありません。
しかし政策の継続性が問われると、どこかで購入規模を縮小したり保有している株式を売却する、といった「出口政策」が議論されます。
その議論がなされること自体、株価の下落を招きます。
そして次に議論されるのが、通貨「円」の信任問題です。
日銀は日本銀行券を発行する中央銀行ですから、その中央銀行が赤字になると発行券への信任が低下するのは当たり前です。
ちょっとどころではない、歯止めの利かない円売り(円安)になる可能性があるということです。
物価が急上昇して、年率10%を越えるハイパーインフレが発生することも考えられるのです。
今年から来年は株式投資するには慎重になる時期
今すぐに円の信任が揺らぐほどではありませんが、個人が投資する株式相場では「TOPIX1350」が世界的に注目される水準であることは知っておいてください。
その水準になると、急落する恐れがあるからです。
そんな相場環境になることを望んでいる訳ではありませんが、今年から来年にかけては政治および経済イベントが多く、株式投資するには慎重になるべきだと考えます。
世界的な相場環境に関心を持ち、大きな利益を狙わず、ヒット&アウェイの戦法でコツコツと利益確定を続けていきましょう。(執筆者:中野 徹)