葬儀は、大切な亡き人をあの世に送り出すための儀式です。
厳粛に行われるべきものですが、もめごとが起きることもしばしばです。
葬儀には普段なかなか顔をあわせることのない親族同士が同じ場所に集うため、どうしてもトラブルが起こりやすいという側面があります。
一体どのような揉めごとがあるのでしょうか。
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葬儀費用の支払いをめぐる揉めごと
葬儀費用は喪主が支払うものですが、であるならば、そもそも誰が喪主になるのかという点で、まず揉めてしまいます。
配偶者や子がいれば必然的に喪主は決まるのですが、故人が単身者の場合、兄弟や親戚の誰かが喪主を務めなければなりません。
筆者の経験では、亡くなったのが三人兄弟の次男。長男と三男はそれぞれ妻子がいましたが、故人様は単身者でした。
そのため、長男か三男のいずれかが喪主を務めなければならないのですが、これがいっこうに決まりません。
ふたりはお互いに押し付けてあって喪主を回避しようとするばかり。
喪主が決まらないことには死亡届の提出もできませんし、葬儀を進めることもできません。
故人様を取り残したまま、状況は停滞したままでした。
最終的には泣く泣く長男が喪主を務めたのですが、葬儀費用については完全に折半。
通夜の開式前に長男が三男に見積もり金額の半額を手渡し、「これ以上の追加の支払いには応じない」という誓約書を交わしたほどです。
儀式上の喪主は長男が務め、支払いは三男が行うという、なんとも後味の悪い葬儀でした。
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家族葬をめぐる揉めごと
昨今では、家族や親族だけで執り行う家族葬が一般化しています。
家族葬では、どこまでの人に故人の死を知らせるか、誰に参列してもらうかなど、喪主の裁量によって決まります。
あるご家族の葬儀では、直系親族だけ、つまりは故人様の子や孫だけが集まって家族葬として執り行いました。
しかしどこから葬儀の話を耳にしたのか、故人の兄弟筋が通夜開式直前に式場に駆けつけたのです。
通夜式が終わり僧侶が会館を後にしてから、故人の兄弟たちが喪主を叱責するという事態になりました。
喪主としては故人である親の「誰にも知らせないでくれ」という遺志を尊重して家族葬にしたのですが、故人の兄弟たちからすれば、最期の最期くらい顔を拝んで焼香したいと考えるのは自然なことです。
翌日の葬儀・告別式も、親族間がいがみ合う中での出棺となりました。
生前の関係性はそのまま葬儀にも反映されがちです。
大切なのは、いかに普段から良好なコミュニケーションがとれているかどうかではないでしょうか。
とはいえ、人間社会にもめごとはつき物ですが、せめて葬儀の時は、普段のいがみあいをいったん納めて、故人様の最期を見送りたいものです。(執筆者:五十嵐 信博)