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バイオに対する「ほどよい期待」とは?
窪田製薬ホールディングスにそーせいグループ、ラクオリア創薬、サンバイオと、投資家からの注目度が高いバイオテクノロジー銘柄は多い。
そしてバイオ関連の株価は材料が出るとしばしば大きく変動する。
2019年に入ってからは「サンバイオ・ショック」ともいわれる関連銘柄の急落局面があった。
このように激しい値動きのリスクをはらむバイオ関連について、今回は業態独特の「治験・承認」の確率について簡単に説明し、各リリースが出た際の「ほどよい期待」について話したい。

各治験と商品化への確率
基本的にバイオ業種はかなりハイリスクな業種だ。
医薬品製品を世に売り出すまでに研究・調査から始まり、開発をへて治験を通過するという厳しいプロセスがあるからだ。
医薬品開発の上市(世に売り出すこと)までの確率に関する海外の研究によれば、商品として承認される統計的な確率は下記のようになる。
リード物質判明後に最適化された物質 7%
前臨床試験終了の物質 8%
第1治験終了の物質 12%
第2治験終了の物質 22%
第3治験終了の物質 63%
医薬品承認申請終了の物質 91%
(参考元:CanBas)
この数字、読者の皆さんはどう受け取るだろうか?
第1治験を通過した物質が医薬品として世に出回る確率は12%。
だいたい8候補あるうち1候補のみが最終的に消費者に届き、売上高に寄与するということになる。
第3治験を突破した物質でさえ、3候補のうち1候補は商品化できないというのも多少驚きではないだろうか?
さらに、商品としての承認を申請するまでに至った物質でも10候補のうち1候補はボツとなる。
こうした確率の感覚を頭に入れてから各リリース後の株式市場の反応を見ると「さすがに買われ過ぎでは?」と感じざるを得ない場面がしばしば見受けられる。
確率センスのもと理性のある投資をしよう

このようにバイオテクノロジー事業の最も重要なKPIは「確率」といっても過言ではない。
そして、上市される前と後ではキャッシュフローの動きが全くの別物となるので、正直なところファンダメンタルズ分析の効能も限定的となってしまう。
しかし、とはいってもやはり数値をもとに投資の可否を考えるのは重要だ。
各バイオ企業に対して今どれほど期待が持てるステージなのかについては前述の確率表をもとにイメージできるだろう。
例えば、第2治験パスという材料を受けて時価総額が1,000億円を超えるほどにまで膨らむ反応を見せる場合には、その過熱感を慎重視することで冷静に「買うのはやめておこう」と判断することもできる。
バイオ関連に投資しようとする時は「ほどよい期待」を意識しよう。(執筆者:高橋 清志)