精神疾患をサポートする公的制度として、Vol.1では「自立支援医療(精神通院医療費の公的負担)」と「精神障害者保健福祉手帳」についてご説明しました。
ここでは「傷病手当金」と「精神障害による障害年金」について説明します。
目次
傷病手当金
これは会社員や公務員の方など健康保険の被保険者が3日間連続して仕事を休んだ後、4日目以降休んだ日から支給されるものです(国民健康保険の被保険者にはありません)。
この4日目の事を支給開始日と言います。
支給される金額は標準報酬日額の3分の2です。
標準報酬日額とは、支給開始日以前の継続した12か月(満たない場合は、その月数)の標準報酬月額の平均額の30分の1です。
例えば標準報酬月額が24万3,000円の人なら、標準報酬日額は、
になります。(1円未満は四捨五入)
仮に30日間仕事を休むと、傷病手当金は
ですね。
傷病手当金は、仕事ができずお給料がもらえない状態が続くと、最長で1年半受取る事ができます。
精神障害による障害年金
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国民年金・厚生年金、どの年金加入者でも対象です。
障害年金と聞くと、知的障害を含む先天的に障害のある人や、交通事故などで障害者となった人が対象だと思われるかもしれません。
しかしあらゆる病気やケガにより障害が残り、日常生活や労働に大きな制約を受ける場合に受取る事ができるものなのです。
従って、精神疾患も対象です。
障害年金は、障害の原因となった病気やケガで初めて医師または歯科医師の診療を受けた日(初診日と言います)にどの年金制度に加入していたかによって、以下のように種類が分かれます。
障害基礎年金
国民年金に加入。
または、20歳前や60歳以上65歳未満の年金未加入の期間であっても、日本国内に住んでいる間に初診日がある場合。
障害厚生年金、障害手当金
厚生年金保険に加入。
では、概要をご説明します。
障害年金を受給するために満たすべき要件
1. 初診日要件
【初診日の確定】
転医した場合は、対象となる病気やケガで1番初めに診療を受けた日
2. 障害状態該当要件
障害年金の請求(申請)をし、障害等級1級~3級と認定される事(国民年金加入者は1級か2級のみ)
3. 保険料の納付要件
障害基礎年金については、20歳前で国民年金制度未加入期間に初診日がある場合を除きます。
(1) 初診日のある月の前々月までの加入期間の3分の2以上の期間、保険料を払っている事(免除期間がある場合、保険料を払っていた期間に合算)
(2) 初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がない事
ただし、以下の2点をご留意下さい。
・障害認定の基準はあるが、障害年金が認定されるかどうかはさまざまな要因との関係で判断
なお、厚生年金保険加入者が3級より程度の軽い4級に該当した場合は、その障害が治った時に、一時金として傷害手当金を受取る事になります。
また、障害認定の後に障害の程度が重くなった場合や、初めは障害が認定されなかったものの後に該当するようになった場合も、障害年金は請求できます。
仮に請求が遅れても、さかのぼって最大5年分は受給できます。
さかのぼって障害年金を受給した時に、もしも傷病手当金と障害年金の両方を受給する月が出てきた場合は、傷病手当金を返さなくてはならない事も起こり得ます(後述します)。
請求手続きに必要な書類の主なものは以下の通りですが、傷病や家族構成により多少異なります。
・ 住民
・ 戸籍謄本
・ 所得証明書
・ 診断書
・ 受診状況等証明書
・ 病歴・就労状況申立書
・ 障害給付請求事由確認書
・ 障害者手帳
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書類の提出先
・障害厚生年金…お近くの年金事務所
Vol.1でご紹介した制度も含め、全て重複して利用できますが、傷病手当金と障害年金を同一の病気やケガで同時に受給する場合は、傷病手当金が下記のように調整されます。
・傷病手当金の方が障害年金より多い … 障害年金との差額を傷病手当として支給
・傷病手当金の方が障害年金より少ない … 傷病手当なし
障害年金は提出書類や認定されるかどうかなど、ややこしい手続きになるかもしれませんが、ぜひ、提出先や専門家にご相談下さい。(執筆者:金澤 けい子)