国際的な交流が活発化し、海外で生活されている方も年々増加しています。
海外在留邦人数調査統計(外務省・平成30年)によると、長期滞在者、永住者の合計額は、平成元年には約58万人だったのが、30年には約135万人にも上っているようです。
皆さんのなかにも、いずれ海外で働かなければならない、海外で生活してみたいという方もいらっしゃるかもしれません。
そうなった場合、日本の年金制度に加入し続けることはできるのでしょうか。
確認してみましょう。
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目次
その国の制度に加入するが、問題も…
原則は、滞在している国の年金制度に加入します。
会社員が海外に赴任となった場合は、会社との使用関係が存続している限り、厚生年金にも引き続き加入します。
日本と海外の両方の保険料を二重に負担しなければならないということです。
また、年金を受け取るためには、一定の加入期間が必要です。
日本とアメリカは10年。スペインなら15年にもなります。
最低加入期間を満たすことができないと、保険料の掛け捨てになってしまうという問題もあります。
社会保障協定発効済みの国なら、どちらかの制度に加入すればOK
このような不利益もあることから、日本は、アメリカやオーストラリアなど21か国と社会保障協定を結んでいます(2018年8月時点。うち18か国は発効済み)。
協定発効済みの国とでは保険料の二重負担を防止するため、加入するべき制度を二国間で調整しています。
さらには、保険料の掛け捨てとならないために、日本の年金加入期間を、その国の年金制度に加入していた期間とみなして取り扱い、年金を受給できるようにもしています。
日本の年金制度に加入し続けることができるかは、派遣期間によって異なる
社会保障協定発効済みの国に居住する場合は、日本の年金制度に加入し続けることができるとお伝えしましたが、派遣期間などによって異なります。
・ 派遣期間が5年を超える → 原則として派遣される国の制度のみ加入
・ 現地採用 → 採用される企業のある国の制度に加入
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社会保障協定未発効の国の場合は、原則として派遣される国の制度のみ加入。
日本企業との雇用関係が継続していれば、日本の年金制度にも加入します。
海外で自営する場合は、日本の年金制度に加入できるの?
社会保障協定発効済みの国なら、自営業者は引き続き日本の年金制度に加入できます。
しかし、長期間に及ぶ場合や、日本で自営業をしていない人が、その国で初めて自営を行う場合は、相手国の制度に加入します。
日本の制度に継続して加入し、相手国の免除を受けるには、以下の条件を満たすことが必要です。
・ 日本で行っていた自営活動と同一のものを一時的に相手国でも行う
・ 就労期間が5年以内
国民年金に任意加入もできる
海外に居住することになった場合は、国民年金の強制加入被保険者ではなくなりますが、日本国籍のある20歳以上65歳未満なら、国民年金に任意加入できます。
しかしながら、保険料を二重に払ってまで、何かメリットがあるのでしょうか?
・ 海外在住期間に死亡した時には、遺族基礎年金が支給される
・ 病気やケガで障害が残った時には、障害基礎年金が支給される
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なるほど。そんなメリットがあるのですね。
しかし、問題は誰が保険料を払ってくれるかです。
実家など協力者がいれば、保険料を送金してその方に払っていただくと良いでしょう。
日本に銀行口座があれば、口座引き落としで納付できます。
任意加入の手続きや届け出、保険料納付の窓口は?
日本に、手続きや保険料納付をしてくれる人がいるのかいないのかなどによって異なります。
■協力者がいる場合
日本における最終住所地を管轄する市区町村の国民年金担当部署
■協力者がいない場合
日本おける最終住所地を管轄する年金事務所
■海外に転居する前に手続きを行う場合
住んでいる市区町村窓口
帰国して国民年金の強制被保険者となる場合は、転入した市区町村役場で、あらためて加入手続きが必要となりますので、ご注意ください。
公的年金は、老後の生活の支えとなる大切な制度です。
海外に居住することになったら、社会保障協定発効の国なのか、どのような手続きや書類が必要なのかなど、しっかり確認するようにいたしましょう。(執筆者:横井 規子)