iDeCoの給付金や企業年金を受け取る際、一時金として受け取ったほうが有利だとよく言われます。
税務上退職所得に該当するからですが、具体的に有利な点を税制の他に、保険料まで見ていきましょう。
目次
退職所得の税制メリット
退職所得の計算式は、原則として下記の通りです。
(退職所得の収入額 – 退職所得控除額)÷ 2
退職所得控除額は、下記のように計算されます。

※いわゆる退職金の場合は、掛金拠出年数 → 勤続年数
退職金と同じ年に受け取ると、合算して退職所得を計算しなければなりませんし、4年以内に受け取っても重複期間の年数分だけ退職所得控除額が下がります。
上記に当てはまらない場合は、年間40万円以上かけている自営業者(その他国民年金第1号被保険者)でもない限り、一時金受取で退職所得自体が発生しません。
退職所得がプラスになったとしても、2分の1をかけることによる所得軽減効果もあります。
プラスになった場合は、実は下記のような特典もあります。
住民税の合計所得金額算定除外
金融機関に「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば、退職所得が発生した場合に所得税・住民税が徴収されます。
この場合退職所得は現年分離課税で完結しますが、住民税計算を行う上での合計所得金額には算入されません。
マイナポータルで参照できる個々人の課税証明書情報でも、分離課税の退職所得は参照項目にはありません。
合計所得金額に算入されないことで、退職所得以外の所得で扶養の範囲内にあるか判断されたり、あるいは所得制限付きの制度利用で有利になったります。

公的保険料の算定対象外
地方自治体や広域連合が運営する国民健康保険・後期高齢者医療保険・65歳以上介護保険においても、保険料の算定基準にそもそも分離課税の退職所得は含まれていません。
このような保険料まで考えると、所得税が最低税率の5%だとしても、住民税・保険料あわせて通常20%を超える負担率になり、年金として毎年もらう場合は手取を大きく減らす要因と言えます。
今後の退職所得をめぐる税制改正には注意

退職所得をめぐっては、20年超の控除額が長期雇用優遇を前提にしており、働き方が多様化している時代にそぐわず過大だという指摘が以前からされているため、今後の改正で控除額の縮小もしくは計算式が変わってしまうことが考えられます。
年金形式でもらった場合の税制優遇と言える「公的年金等控除額」についても縮小が検討され、実際に令和2年(2020年)から一律で10万円、高所得者はさらに縮小されます(代わりに基礎控除額が10万円プラス)。
今後の退職所得や公的年金等に係る雑所得の改正を見ながら、一時金・年金どちらで受け取るかの判断をしていくことになります。(執筆者:AFP、2級FP技能士 石谷 彰彦)