昨今話題の投資テーマとしてESG投資というものがあります。
本記事では、
・話題のESG投資でも、あまり利益が出ないと考えられるのはなぜか?
について考察します。
それでは詳しく見てまいりましょう。
目次
1. ESG投資とは?
最初にESGについてです。
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ESGは
の頭文字をとってESGと言います。
ESG投資というのは、ザックリ言いますと「環境・社会・統治」がしっかりしている企業に投資をする、というものです。
もっと平たく言いますと、
というスタンスです。
ESG投資をすると、投資で有利になると考えられる背景
さて、このように「環境にやさしくて、みんなのためになって、企業内もしっかりしている」企業だと何が期待できるでしょうか。
一つに成長が期待できるという考えがあります。
早い話がESG企業は良い会社だから、その企業に投資をすれば良い結果になるのではないかというものです。
ちなみに株価とは、考え方として「未来の利益を割り引いたものが、いまの株価」という考え方があります。
これをふまえて単純に考えるなら、「良い企業は未来の利益が高いから、今買えば儲かるだろう」という考え方になります。
2. ESG投資をしても、運用成績が市場の平均を超えられない?
ところが、現実的にはESG投資などのテーマ型の株式投資や、投資信託を購入してもあまり良い成績にならないことがあります。
長期的に見て、いわゆる市場平均に勝てないという現象が起こります。
この市場平均というのは、初歩的な理解としては、株式市場全体などの平均的な成績だと思っていただければよいかと思います。
どうしてESG投資のような魅力的なテーマ型の投資成績が市場平均に勝てないと考えられるのでしょうか。
ESG投資の問題点
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前述のように、ESG投資はいわゆる「良い企業」に投資をします。
しかし、ESGの対象企業が「良い企業」であることはすでに市場の参加者のほとんどの人が知っていることだと考えられます。
ということは、何が起こるでしょうか?
このように「誰もが知っている情報は株価にあらかじめ織り込まれる」ということが起こると考えられます。
平たく言いますと、
と考えられます。
思考実験 「もし凄い人気で安いアイテムがネットオークションにあったらどうなる?」
ちょっとお話が難しくなりましたので、身近な例に例えましょう。
たとえば誰でも参加できるネットオークションで、人気のアイテムが売りに出されることになった、とします。
そしてそれがとても安い、とします。
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この状態では非常にこのアイテムは魅力的です。
もし、このままのとても安い価格で購入できればとても嬉しいです。
しかし、このアイテムがお買い得であることは、参加者全員が知っています。
そうなると皮肉なことに、この魅力的でとても安いアイテムは、あっという間に価格が上昇してしまいます。
こうなると、先ほどあった魅力的な価格は、そうではない価格になってしまいます。
これがいわゆる情報が価格に織り込まれている状態です。
現実の株式市場でもこのように、仮にESG投資が有効であるならば、その情報はすでに株価に織り込まれてしまっていて、市場平均などに対して特段に良い成績を上げることができないと考えられます。
ESG投資などの魅力的なテーマ型に対しては、冷静に考える
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また、現代の市場平均というものは、世界中の機関投資家などの専門家が「割高なものを売り、割安なものを買う」ということを行った結果であるとも考えられます。
そのため、ESG投資のみならず、テーマ型投資は長期的に見た場合、市場平均に劣るということになる可能性があります。
もし投資家の方が魅力的な投資テーマを見つけたとしたら、次のことを考えると冷静さを取り戻せるかもしれません。
・自分だけが気がついているなんて、ちょっとムシが良くないかな?
・割安に見えるけど、もうみんなが買っていて、適正な値段になっているんじゃないかな?
・ひょっとしたら、必要以上に評価されて、逆に割高になっていないかな?
ESGの考え方そのものは素晴らしいものです。
ただ、
という冷静な考え方も必要かもしれません。
本記事が読者の方の合理的な資産形成の一助になれば幸いです。(執筆者:佐々木 裕平)