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タバコがやめられない

かつて「私はこれで、タバコをやめました!」が流行しましたが、禁煙の意思はあっても、実現するには難しいのが現実です。
禁煙をうまく実行するには、禁煙につきものの障害や問題を理解し、それに対する効果的な対処方法を熟知しておくことが大切です。
原因1:ニコチン依存症
禁煙できないのは意志の問題ではなく、「ニコチン依存症」という「脳の病気」のためです。
喫煙するとニコチンが脳に瞬時に届いて快楽物質(ドーパミン)を出してすぐに消えます。
消えると「イライラやストレスを感じる」禁断症状(離脱症状)から「タバコを吸いたくなる」を繰り返します。
これが「ニコチン依存症」です。
ニコチン依存症から抜け出すのは、ヘロインやコカインなど麻薬をやめるのと同じくらい難しいと言われています。
原因2:禁煙の障害/ニコチンの禁断症状
禁煙するときには、イライラやストレスなど禁断症状が引き起こされることを覚えておくことが大切です。
禁断症状は禁煙後2~3日あたりがピークで、通常1週間、長くても2~4週間で消失します。
・ イライラ、落ち着かない
・ 不安、頭痛、身体がだるい、眠い など
・ 集中力の低下
・ 食欲や体重の増加
吸いたい気持ちをコントロールする
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ポイント1:喫煙と結びつく生活習慣を変えましょう
・ 朝一番の行動の順序を変える(洗顔・歯磨き・朝食など)
・ 脂っこい食べ物を控えたり、食べ過ぎない。
・ 食後は早めに食卓を離れる。
・ コーヒーやアルコールを控える。
・ ストレス、過労、夜更かしを避ける。
ポイント2:喫煙のきっかけとなる環境を改善しましょう
・ タバコ、ライター、灰皿などを処分する。
・ 吸いたくなる場所(パチンコ、喫茶店、居酒屋など)を避ける。
・ タバコが吸えない場所(映画館、図書館など)を利用する。
・ タバコが購入できる場所に近寄らない
・ タバコを吸う人の周囲に近づかない
ポイント3:タバコを吸いたくなったら「代わりの行動」をしましょう
・ 深呼吸をする。
・ 水や氷を口にする、シュガーレスガムや仁丹、干し昆布を噛む。
・ 口寂しさを軽減するため、禁煙パイプや禁煙飴を利用する
・ 散歩や体操・ヨガなどの軽い運動をする
・ 手を動かす(机の引き出しなどの整理、庭仕事、ストレスボール)
禁煙方法1: 自力
・ 期日を決めて一気に禁煙を実行する
・ 自分が禁煙していることを周囲の人に告げる。
・ 一定の禁断症状を覚悟する
・ 喫煙と結びつく生活習慣を変える
・ 喫煙のきっかけとなる「環境」を改善する
・ タバコを吸いたくなったら「代わりの行動」をする
費用
8週間… 約2万8,000円 たばこを1日1箱ずつ吸い続ける
8週間… 5,600円 シュガーレスガム1日1個100円
禁煙方法2:ニコチンパッチやニコチンガムを使用
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(1) に加えて、薬局・薬店で購入でき、スイッチOTC医薬品対象です。
ニコチンパッチやニコチンガムは、喫煙の代わりにニコチンを吸収させ、イライラ・集中困難・不安・だるさ・眠気などの禁断症状を軽くし、まずは生活習慣を改善させます。
その後ニコチンの摂取量を徐々に減らして禁煙に導きます。
ただし、心筋梗塞、脳卒中を起こした直後や、重症の不整脈、出血している胃・十二指腸潰瘍、妊娠中や授乳中などの場合は使えません。
必ず医師や薬剤師に相談してください。
費用
8週間… ニコチンパッチ 約2万1,200円 ※メーカー希望小売価格、
12週間… ニコチンガム 1個70~100円 1日4~12個 約2万9,000円
禁煙方法3:禁煙外来/禁煙治療プログラム
「ニコチン依存症」には、カウンセリングなどの行動療法およびニコチンパッチなどの薬物療法による治療が効果的といわれています。
健康保険を利用した禁煙治療は、12週間で5回の診察を基本としています。
5回の診察すべてを受けた人では、治療終了時で約75%、治療終了9か月後でも約50%の人が禁煙に成功しています。(平成29年度ニコチン依存症管理料による禁煙治療の効果等に関する調査報告書)
費用
5回の診療と薬代を含めた治療費用は、自己負担3割の場合1万3,000円~2万円程度(禁煙補助薬服用による差)
たばこを12週間1日1箱ずつ吸い続ける金額(約4万2,000円)よりも安くなります。
また、終了した本人や家族に対して補助金を支給してくれる協会健保もあるようです。
禁煙治療プログラムとは
・ a~fまで 1回目受診(初診)
・ c~fまで 2回目受診(2週間後)、3回目受診(4週間後)、4回目受診(8週間後)、5回目受診(12週間後)
a. ニコチン依存症を判定するテストなど、禁煙外来の保険適用条件を満たすかを確認
b. 禁煙開始日の決定と「禁煙誓約書」へのサイン
c. 医師の診察およびカウンセリング
d. 呼気一酸化炭素濃度の測定
e. 禁煙実行、継続に向けてのアドバイス
f. 禁煙補助薬の処方
禁煙補助薬
禁煙のための補助薬であるニコチンパッチ、ニコチンガムまたはバレニクリンを使います。
これらの薬は禁煙後の禁断症状をおさえ、禁煙を助けてくれます。
バレニクリンは喫煙による満足感も抑えます。
ニコチンパッチ、ニコチンガムを使うと禁煙成功率が各々約1.7倍、1.4倍、バレニクリンを使うと約2.3倍高まります。
健康保険で禁煙外来を受診できる条件
以下の条件すべてに該当することが必要です。
1) 直ちに禁煙しようと考えていること
2) ニコチン依存症のスクリーニングテスト(TDS)で、ニコチン依存症と診断(10問中5点以上)されていること。
3) ブリンクマン指数(1日の喫煙本数 × 喫煙年数)が200以上であること〈35歳未満はこの要件を満たさなくても可〉
4) 禁煙治療について説明を受け、禁煙治療を受けることを文書により同意していること
※高校生などの未成年者の場合は、「依存状態等の医学的判断+本人の禁煙の意志+家族等との相談」によって禁煙治療を受けられます。
※過去に健康保険で禁煙治療を受けたことがある場合は、前回の治療の初回診察日から1年を経過していないと、自由診療となり、健康保険での受診はできません。
禁煙外来・医療機関は日本禁煙学会で確認してください。
私の「禁煙治療プログラム」
1回目が、結構簡単に成功したせいか、2回目は禁煙を決意しても、1日や数時間で挫折するありさまでなかなかうまくいきませんでした。
当時禁煙外来科ができ始めたことや、ニコチンパッチが治療に有効というニュースを聞き、医療機関で受診することにしました。
当時は忙しく、通院は2回で自主終了しました。
結果、口さびしいのを我慢するためにガムや飴を食べていたせいもあり、トータル15キロも太ってしまいました。
禁煙治療プログラムでは、カウンセリングで体重の増加に対するアドバイスも受けられるので安心です。
私が治療を始める前にしてよかったことは、部屋のヤニを残らずきれいにしたことです。
部屋をきれいに保ちたいという気持ちが、タバコを吸いたい気持ちを抑えられました。
禁煙することのメリット
今から禁煙しても決して遅すぎることはありません。
禁煙による3つのメリットを紹介します。
1. 健康と生活の質(QOL クオリティ オブ ライフ)が向上
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2. お金と時間に余裕
(1) 貯蓄が増える
1日500円、1か月1万5,000円、年間18万円
(2) 時間に余裕ができる
1本5分、1日20本で1時間40分
3. 会社や家族、社会でのコミュニケーションが広がる
(1) 家族や友人とどこでも行けるので、関係も改善できます。
(2) 喫煙のために仕事を中断する必要がなくなり、生産性も高められ、会社の健康経営に貢献できます。
(3) 自分の子どもが喫煙を始める可能性が低下し、すでに喫煙していても禁煙する可能性が高くなります。
(4) 家族や友人・知人、ご近所の人たちに、二次喫煙や三次喫煙の被害をださない。
(5) イライラしないようになり、「ニコチン依存性」を乗り越えられたという自信が持てます。
もしも上手くいかなくても
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禁煙が失敗に終わっても、次回はどうすればもっとうまくできるかを学びます。
禁煙に成功するまで、何度もやり直すのが普通だということを知っておきましょう。
失敗してもみんな口に出さないだけです。
「あきらめず続ければ、必ず最後には成功する」どんなことにも、言えることです。
禁煙で印象に残る歯医者さんの言葉
「毎日こういう汚れた歯を見ているので、自分は絶対にたばこを吸わない。また、強く禁煙を勧めている」
25年前に注意を受けたのですが、耳に痛い言葉だったので今もよく覚えています。
医療関係者や教育関係者は、こういう信念で禁煙に臨んでいただきたいです。(執筆者:京極 佐和野)