先日に新聞を読んでいたら、外貨建て保険の販売数が伸びるとともに、これに関する銀行と顧客とのトラブル、特に高齢者とのトラブルが急増しているという記事が掲載されていました。
この原因について調べてみると、
がトップでした。
個人的には、外貨建て保険に関する最低保証を元本保証だと勘違いしたことも、トラブルの原因になっているような気がするのです。
外貨建て保険の解約返戻金や保険金に関する最低保証は外貨ベースになっているため、解約する時や満期を迎えた時などに、加入する時よりも円高・外貨安(例えば米ドル安)が進んでいた場合には元本割れする可能性があります。
その一方で、加入する時よりも円安・外貨高(例えば米ドル高)が進んでいた場合には、解約返戻金や保険金の金額が想定より増えるというメリットがあります。
ですから、外貨建て保険に加入したのなら、例えばニュース番組の最後で紹介される現在の為替レートに関心を持った方がよいのです。
また、円安が進んでいる場合には、円高トレンドに戻る前に解約した方がよいケースもあるのです。
ただ、外貨建て保険を短期で解約すると「解約控除」という手数料が差し引かれ、元本割れする場合があるため、この点には注意する必要があります。
前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。
生命保険の解約は2020年以降にした方がよい理由を順をおって説明します。

目次
一時所得を算出する際には、特別控除額の50万円を差し引きできる
契約者と受取人が同一の生命保険が
・途中で解約して解約返戻金を一時金で受け取った場合
いずれについても一時所得に該当するため、所得税や住民税が課税されます。
ただ一時所得として課税されるのは、支払保険料の合計額と特別控除額の50万円を差し引いて残高があった場合です。
さらに、残高があったとしても、それを1/2にできるのです。
つまり納税者に優位になっているのですが、これまでの流れをまとめると次のような計算式になります。
一時所得 × 1/2 = 課税対象額
このようにして導き出された課税対象額を「給与所得」や「公的年金等に係る雑所得」などの他の所得と合算して、各人の合計所得を算出します。
また、合計所得から各種の所得控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除など)を差し引いて、課税所得を算出します。
そして、課税所得に所得税と住民税の税率を乗じると、それぞれの税金が算出されるのです。

満期保険金や解約返戻金を受け取ったら、国民年金の保険料を追納する
満期保険金や解約返戻金から支払保険料の合計額と、特別控除額の50万円を差し引いた段階でゼロにならなかったとしても、その後に各種の所得控除を差し引いて課税所得がゼロになれば、所得税や住民税は課税されません。
また、所得税や住民税が課税されたとしても、各種の所得控除によって課税所得が低くなれば、納付する税金は少なくなります。
そのため、
のです。
この理由として国民年金の保険料は、
2. 社会保険料控除の対象になる
ため、これを納付すれば課税所得が低くなるからです。
なお、生命保険の解約を2020年以降にすると、特に何もしなくても所得控除が増えます。
この理由は、誰でも受けられる所得控除のひとつである基礎控除の金額が法改正で引き上げされるからです。
年金や給与の金額が少ない場合、使いきれない基礎控除が生じている
2019年までの所得税の基礎控除は38万円、住民税の基礎控除は33万円です。
これが「合計所得が2,400万円以下」という条件付きながら、それぞれ10万円ずつ引き上げされ、所得税の基礎控除は2020年から48万円、住民税の基礎控除は2021年から43万円になります。
ただ、基礎控除が10万円引き上げされると同時に、給与所得を算出する時に差し引く「給与所得控除」が、10万円引き下げられます。
また、公的年金等に係る雑所得を算出する時に差し引く「公的年金等控除」も10万円引き下げられるため、基礎控除が10万円引き上げされても税額は変わらないという意見があるかもしれません。
しかし、例えば65歳以上で、老齢基礎年金や老齢厚生年金の合計額が120万円(2020年以降は110万円)以下の場合、年金に関する所得税や住民税の計算過程で基礎控除を使っておらず、この使いきれなかった分は一時所得の節税のために使えるのです。
のです。

2020年まで待てない方は、「契約者貸付」か「一部解約」を利用する
すぐにお金が必要なため解約の時期を2020年以降にするのが難しいという方は、解約返還金の範囲内で生命保険会社からお金を借りる「契約者貸付」の利用を検討してみましょう。
これを利用した場合には、借入金額に応じた利息を支払う必要がありますが、生命保険の保障内容は以前と変わりません。
ただ、契約者貸付を利用している最中に保険金の支払事由が発生した場合には、そこから借入金や利息が控除されるため保険金が少なくなってしまう場合があるのです。
その他に、生命保険を一部だけ解約してお金を確保するという方法もあります。
例えば、1,000万円の死亡保障がある生命保険に加入している方が、死亡保障を半分の500万円にするというものです。
このように、一部を解約する時点で解約返戻金が300万円貯まっていた場合には、死亡保障の減額に応じた解約返戻金、つまり150万円を受け取れます。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)