この記事の最新更新日:2020年11月25日
「子どもの年齢やいつまで入れるのか、人数も関係してくるのでしょうか?」
「例えば我が家の場合なら夫と私のどちらに扶養を付けた方がお得なのか知りたいです。」
こんな質問を読者の方から受け付けました。
目次
家族を扶養に入れるなら
「扶養」とは… 「助け養うこと、生活の面倒を見ること」です。
「扶養義務」とは… 「親子や兄弟姉妹など親族が負う法律上の生活保障義務」のことです。
実際に配偶者や子供、親などを扶養に入れる場合に多いのは、税金、年金、健康保険でしょう。
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扶養に入れるメリット
扶養に入れるとさまざまなメリットがあります。
所得税・住民税で家族を扶養に入れれば、年末調整や確定申告で所得税・住民税が還付されることがあります。
健康保険なら家族の分まで健康保険料を払わなくても、家族は病院等で健康保険を使えます。
20歳以上の配偶者を厚生年金の扶養に入れれば、配偶者は年金保険料を支払った扱いになります。
扶養に入れるデメリット
あまり見当たらないように思いますが、配偶者の場合、扶養されることにこだわると収入をセーブするなど仕事上影響が大きいことでしょうか。
税金、年金、健康保険、扶養に入れる条件が異なる
税金(所得税・住民税)と社会保険(厚生年金・健康保険)では、扶養される家族の条件が異なることは意外と知られていませんので、確認していきたいと思います。
1. 税金の扶養の条件は、生計同一、所得が基準以下、6親等内血族、12月31日の年齢で判断
税金(所得税・住民税)も社会保険(厚生年金・健康保険)も家族を扶養に入れるには、生計を同じく(財布が同じ)している必要があります。
ただし、社会保険で「家族を扶養に入れる」ことができるのは会社員だけで、自営業者は、原則家族の人数分、国民年金保険料(20以上60歳未満の家族)や国民健康保険料を支払う必要があります。
税金(所得税・住民税)で扶養にいれる家族には、年齢制限はありませんが、生計を同じくしていて、なおかつ年収要件があります。
年収要件は60歳以上、60歳未満により異なります。
扶養に入れたい家族の年齢によって、扶養控除の額が異なりますが、年齢も扶養したい家族の人数も12月31日時点で判断します。
例え年収が少なくても家族が「青色専従者」として、報酬をもらう形で働いていると、所得税・住民税の扶養に入れません。
納税者の6親等内血族(配偶者の親族は3親等内)まで扶養に入れられるので、従兄弟(4親等)でも仕送りなどしていれば、扶養控除を受けられるということになります。
2. 社会保険(厚生年金・健康保険)の扶養の条件は、主に生計維持されている、所得が基準以下、3親等内親族
会社員の加入する厚生年金は20歳以上60歳未満の配偶者を扶養に入れると、第3号被保険者となり、配偶者自身が年金保険料を支払ったのと同じ扱いになります。
会社員の加入する健康保険は配偶者が18歳未満でも60歳以上でも扶養に入れられますが、年収制限(130万円未満)があります。
会社員本人と配偶者の3親等内親族(配偶者、子、孫、父母、祖父母、兄弟姉妹、叔父伯母、甥姪)まで健康保険の扶養に入れますが、配偶者の親族だと同居でなければ扶養に入れません。
配偶者を扶養に入れたい
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最初に、配偶者を扶養に入れたい場合を考えて見ましょう。
多いのは夫が妻を扶養に入れる場合だと思いますので、そちらで確認しましょう。
1. 所得税・住民税の配偶者控除・配偶者特別控除を受ける
所得税・住民税の扶養は、生計を同じくする、所得が48万円以下の妻(12月31日時点で70歳以下)を夫は扶養に入れ、偶者控除38万円(夫の所得900万円以下の場合)から13万円(夫の所得950万から1000万円以下)を受けられます。
所得48万円超えても、妻の所得は133万円まで配偶者特別控除を受け、所得税・住民税を節税できます。
妻が70歳以上なら「老人控除対象配偶者」として夫は自身の所得に応じて48万円から16万円の老人控除対象の配偶者控除を受けられ、より節税になります。
妻の所得が48万円超えても妻の所得(48万円超から133万円)に応じて、夫は自身の所得(900万円以下)に応じた「配偶者特別控除」(38万円から1万円)を受けられます。
配偶者控除は夫の所得により異なり、38万円の配偶者控除を受けられるのは夫が900万円以下の所得の場合です。
所得税・住民税で扶養に入るための38万円以下の所得には、失業手当含まれません。
夫の健康保険厚生年金扶養に入るには妻は自身の失業等手当の中から国民年金保険料や健康保険料を支払うので失業手当をもらい終わってからになります。
失業手当等を収入としてカウントするか否かが所得税・住民税の扶養と社会保険の扶養では異なります。
2. 厚生年金・健康保険(社会保険)で妻を扶養に入れる
夫が妻を健康保険の扶養にすると、妻も夫と同じ保険者の健康保険証(協会けんぽまたは組合)を使えます。
妻が夫の社会保険で扶養に入るには、妻は将来に向かって概ね年収130万円未満であることが必要です。
妻は自分の退職後、失業手当を受けている間は自分で健康保険料・国民年金保険料を支払い、受け終わってから、夫に扶養に入ることとなります。
夫が会社員を続けたまま65歳になると妻(60歳未満の場合、年収130万円未満)の健康保険は夫の扶養でいられますが、年金は夫の扶養から外れることとなり妻自身が60歳まで国民年金の保険料を払わなければなりません。
妻が夫より年上の場合、妻が先に60歳になりますが、その際年下夫が会社員でも妻の年金は夫の扶養(第3号被保険者)から外れます。
妻(60歳以上の場合、年収180万円未満)が先に60歳になっても、健康保険は夫が会社員の間は扶養でいられます。
60歳過ぎると国民年金保険料は払わなくても大丈夫なのですが、もし年金を増やしたい場合や、年金年数が足りない場合は、妻が60歳以降も国民年金に任意加入できます。
税金も健康保険も年金も、妻が夫を扶養に入れられます。
年齢や年収の要件は妻が扶養に入る場合と同じです。
税金の扶養は入籍した「法律上の配偶者」しか入れられません。
厚生年金・健康保険は、入籍していなくても「内縁の配偶者」も扶養に入れられるので、ここが最大の相違点でしょう。
子供を扶養に入れたい
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税金や健康保険で子供を両親のどちらの扶養に入れるか、共働きの家庭なら迷ってしまうかもしれません。
1. 所得税・住民税で扶養控除を受ける
15歳まで(12月31日時点に)の子供は児童手当の対象者なので、所得税・住民税の扶養控除は受けられません。
子供が16歳以上では38万円の「扶養控除」が、高校卒業後(19歳から23歳まで)は63万円の「特定扶養親族控除」を受けられます。
所得税・住民税など税金の扶養に子供を入れるには、両親のうち所得の高い方で入れた方がいいでしょう。
所得が高い人の所得税率が高いので、節税額も大きいからです。
子供が2人以上で夫婦が同じくらいの年収、共に会社員の場合は、夫が1人、妻が別の1人など別々に扶養するよう、会社に交渉してみる手もあるでしょう。
子供が大きくなり、アルバイトでも始めた場合
所得48万(年収103万)超えると、親が扶養控除を受けられなくなり、子供本人が所得税・住民税を払う必要がでてきます。
学生の場合、単身者で所得118万円を超えると、国民年金保険料学生納付特例を受けられなくなります。
子供のアルバイトのしすぎには気をつけましょう。
2. 親が子供を健康保険の扶養に入れる
親が会社員なら、子供は生まれたときから、健康保険の扶養に入れます。
健康保険の扶養の条件は「主として生計を維持されていること」です。
必ずしも同居でなくても、子供が留学している場合など、親が仕送りしているのも「生計維持」となります。
子供が大きくなってアルバイトした場合、年収130万円(税金は年収103万円)超えると子供本人が国民健康保険料を払う必要がありますので要注意です。
子供が成人してからも、年収130万円以下なら、親の健康保険の扶養になることは可能です。
3. 子供が学生で20歳になったら、国民年金保険料猶予の手続きを!
子供が20歳になり、学生で本人の所得118万円(年収約183万円)までなら、学生課もしくは市区町村役場で、国民年金保険料を1年間猶予してもらえます。
20歳の誕生月に猶予手続きをして認められても、その後毎年4月に猶予手続きをする必要があります。
4. 大学を卒業して、子供が低収入の場合は、若年者年金保険料猶予・免除の手続きを!
成人して子供が低収入(年収130万円未満)の場合、健康保険は何とか親(会社員の場合)の扶養に入れられるのですが、国民年金保険料は必ずしも親が支払わなければならないというわけではありません。
子供本人の所得58万円(収入約123万円)以下なら、全額年金保険料が猶予されますが、申請が必要です。
他にも1/4免除、半額免除、3/4免除があるので、支払いが厳しければ毎年申請してみましょう。
親を扶養に入れたい
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親を扶養に入れる場合は、実父母か義父母かによって条件が異なります。
1. 税金(所得税・住民税)で父母や義父母を扶養に入れたい
3親等内の親族なので、所得48万(年収103万)であれば、父母や義父母も扶養に入れられます。
税金で扶養に入れるときの所得には遺族年金は含まれません。
必ずしも同居である必要はなく、老人ホームなどに入居していて、子供が親に生活費援助をしている場合でも「老人扶養親族控除」(同居で58万円、別居で48万円)を受け、節税につなげられます。
2. 健康保険で父母や義父母を扶養に入れたい
会社員の実父母か義父母が60歳以上なら、年収180万円未満であることが健康保険の扶養の条件です。
税金で扶養に入るには所得48万円(年収103万円)以内なので健康保険と異なります。
健康保険で父母義父母を扶養にいれるときの収入には「遺族年金も含まれる」点が税金の扶養と異なる点です。
実父母は同居でなくても扶養に入れられますが、義父母は同居が扶養に入れる要件となります。
3. 父母も義父母も75歳になると健康保険の扶養から外れる
親が75歳になると「後期高齢者医療保険」に入るので子供の健康保険の扶養からは外れます。
兄弟姉妹を扶養に入れたい
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兄弟姉妹を援助している人も多いでしょう。
2親等なので、税金でも健康保険でも扶養に入れることは可能です。
1. 税金の扶養に入れられるのは1人のみ
複数の兄弟で1人の兄弟を援助していたとしても、所得税・住民税の扶養に入れられるのは1人だけです。
援助される兄弟は所得48万円以下が条件です。
2. 兄弟姉妹を健康保険の扶養に入れたい
会社員本人の兄弟姉妹なら、年収130万円未満で、主として会社員に生計を維持されている(税金より要件は厳しい)のであれば、健康保険の扶養に入れられます。
配偶者の兄弟姉妹の場合、健康保険の扶養に入れるには、同居であることが必要です。
その他世話になっている親族を扶養に入れたい
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祖父母、伯父伯母、叔父叔母、甥姪、従兄弟など他の親族の場合を確認して見ましょう。
1. 納税者本人の6親等内の親族を税金の扶養に入れたい
生計を一にしていれば同居でなくても扶養控除は受けられますが、所得48万円以内が要件です。
仕送りの記録、通帳などを税務署から求められることもあります。
配偶者の3親等以内の親族でも扶養控除が受けられることもあります。
納税者本人の従兄弟なら可能ですが、配偶者の従兄弟は扶養に入れません。
2. 会社員の3親等以内の親族を健康保険の扶養に入れたい
会社員に主に生計を維持されている、年収130万円(60歳以上は180万円)未満の3親等内の親族は、健康保険に入れられます。
配偶者の3親等内の親族は会社員と同居してなければ、扶養に入れることはできません。(執筆者:社会保険労務士 拝野 洋子)