先ごろ金融庁から発表された報告書より、夫婦2名が年金収入のみを頼りに65歳から95歳まで平均的な生活を送ると毎月5万円の不足が生じ、合計で2,000万円の自己資金が必要になると発表され物議をかもしました。
しかし年金収入のみで生活が成り立たないとしても、老後生活の大切な柱としての存在は変わりません。
不足する老後費用を賄うための貯蓄の増額や資産運用もひとつの選択肢ですが、老齢給付の支給額を増額することでも同様の効果を得ることができます。
今回はリタイア年齢を遅らせることにより老齢年金の支給額を増額させる繰り下げ支給と、65歳より以前に老齢年金の支給を受ける繰上げ支給のデメリットについて述べさせていただきます。

目次
繰り下げ支給について
老齢厚生年金や老齢基礎年金といった老齢年金制度は、年金の支給開始時期を後ろ倒しにする繰り下げ給付を行うことにより年金支給額を増額できます。
老齢年金の支給開始年齢は現状65歳ですが、1か月繰り下げることにより年金支給額を0.7%増加させられます。
仮に70歳からの支給開始した場合、支給額は42%増加し、その増額は一生涯続きます。
老齢年金の支給額が21万円であった場合、28か月支給開始を遅らせることで毎月5万円の不足額を打ち消せます。
この場合28か月分の生活費を別途用意する必要がありますが、毎月27万円で生活する場合の生活資金は756万円です。
当初想定されていた老後資金2,000万円よりも大幅に必要額を圧縮できます。
繰り上げ支給について
老齢年金は、支給時期を早めることもできます。
しかし繰り上げ支給に関してはデメリットが多く存在します。
代表的なものは支給額の減額です。
65歳の支給開始よりも1か月早めるごとに支給額が0.5%減額され、減額した支給額が一生涯固定されます。
仮に60歳で年金支給を開始した場合は、65歳時の70%の支給額となります。
この他にも
・ 障害基礎年金や寡婦年金の受給権の喪失
・ 遺族厚生年金の65歳までの受給停止
など年金制度の保障範囲が狭まってしまう点を覚えておきましょう。
ストレスなく継続できる方法を選ぶ

老後資金の準備には資産運用も有効な選択肢ですが、投資活動に関して恐怖心を感じる人も少なからずいます。
そこで老齢年金の給付開始を引き下げることでも同様以上の効果を得られることをご紹介させていただきました。
老後資金の準備には貯蓄の増額や資産運用の他にも多くの選択肢があります。
ご自身のリスク志向に基づき、ストレスなく継続できる方法を選び、老後計画を明らかにするとよいでしょう。(執筆者:菊原 浩司)