銀行窓口と聞いて、皆さんが抱くのはどんなイメージでしょう?
「やたらと勧誘されてわずらわしい」
銀行員としては、申し訳ないものもありますが、どれも正解です。
でも1番多いのは「銀行の窓口ではものすごく待たされる!」ということではないでしょうか?
毎日いろいろ忙しく、誰でも銀行窓口では待たされたくないし、できれば行かずに済ませたいです。
銀行窓口に行かなければならない用事とは、例えば住所などの各種変更手続きを思い浮かべる人も多いと思います。
しかし、現在では銀行に行かなくても手続きができます。
そこで今回は、各種変更手続きについて、今と昔の違いなども盛り込みながらお話ししていきますので、ぜひ参考にして下さい。
目次
昔のお客様:銀行に預ければ金利で増える

私が入社した30年前は、まだ昔ながらの銀行スタイルが色濃く残っていました。
時はまさにバブル絶頂期、銀行窓口には大金を定期預金にしようとお客様が並んでいたものです。
銀行に定期預金でお金を預けるだけで利息がたくさんもらえた時代で、タンスに隠しておくよりも銀行へ、そして少しでも金利が高い銀行へ預けたいというお客様で銀行窓口は大盛況でした。
銀行も利鞘((りざや)預金より高い金利で融資して、その差額が銀行の利益になる)で稼げた時代です。
窓口に来るお客様はまさに「カモがネギを背負ってやってくる」ようでした。
現在のお客様:金利はあてにならないが、安全のために銀行へ
限りなくゼロに近い預金金利をあてにするお客様はいません。
それでもタンスに置くのは物騒なので、仕方なく預けているというのが本音でしょう。
現在の銀行の本音
預金、融資両方の金利が低くなり、必然的に利鞘で儲けることができなくなったので、その代わりに投資信託や保険商品を売り込んでくるのです。
窓口で銀行員がこのように勧誘する時代です。
銀行員としては内心複雑な思いがあります。
「投資信託や保険をやらない預金客は銀行にとって来店不要」とは言い過ぎですが、これに近い現状であることをまず知ってください。
現在、預金を預けに来る客を銀行は「ありがたがっていない」のが本音です。
このように、窓口での預金客への対応は時代により変化してきましたが、昔も今も変わらず銀行にとって「儲けにならない仕事」が住所などの各種変更手続きです。
変更手続きはタダ働き

変更手続きで手数料を取られたことがありますか?
顧客の住所、電話番号、氏名など各種変更手続きは銀行にとって重要な処理です。
転居したことを知らなければそのうち郵便が届かなくなりますし、電話番号の変更をしなければ本人へ連絡が取れません。
ダイレクトメールやチラシならまだ良いでしょうが大事なお知らせ、特に住宅ローンなど借金に関連する連絡が本人に伝わらなくなると銀行は困ります。
また、住所や電話番号変更を銀行に言わない人というのは、往々にして連絡が届かなかったことで自分が困った場合、一方的に銀行を責める傾向があるのも事実です。
このように変更手続きは銀行にとって大事ですが、手数料をもらうことができない「タダ働き」なのです。
変更手続きは顧客と銀行、両方がイヤイヤやっていること
住所などの変更手続き、銀行員の私が正直申し上げますが本当に手間がかかります。
お客様に用紙へ記入してもらい、確認資料を見て、内容をチェックしてパソコン処理をする。
1人の手続きを終わらせるのに1時間以上かかる時もあります。
もちろんお客様にしても待たされる処理なのは言うまでもありません。
自分の変更を他の銀行窓口で頼んだことがありますが、お客様がどれだけ待たされているのか初めてわかったという経験があります。
また現在は機械化が進み、昔ほど待たされることはなくなりましたが、それでも体感的待ち時間はまだまだ長いと思います。
銀行に行って手続きしないといけないので仕方なく来店するお客様と、必要な仕事なのでタダ働きとわかっていても対応している銀行員。
このように変更手続きはお互いイヤイヤやっているのが本音でした。

変更の届け出をしないとどうなる?
ここで大事なポイントは自己責任の原則です。
銀行と取引していて、住所や電話番号が変わったが、そのことを届け出なかったために損害を被っても銀行に責はありません。
すべては自己責任なので、上記したような自分勝手な言い分も最終的には通りません。
例えば住宅ローンの契約書には住所などが変更になった場合すみやかに銀行に届け出ること、届け出を怠った場合に生じたトラブルについて銀行には責がないということが書いてあります。
ぜひ覚えておいてください。
スマホで手続きする場合の効力
顧客、銀行双方に負担となってきた変更手続きも、今ではスマホやパソコンで完結できるようになりました。
来店せずスマホで手続きしても、銀行窓口で銀行員を目の前にして手続きすることと効力は変わりません。
スマホの場合、IDやパスワードで本人確認をすると同時に、変更内容について顧客が同意しているとみなすので、窓口で手続きすることと何ら変わりがありません。
変更手続きで入力を間違えたり、ワケありでウソの住所を使ったりした場合、当然その責任は顧客本人が負わなければなりませんので、この点は注意してください。

スマホでできないこと
・ カードローン以外の融資取引(事業資金融資、住宅ローン)
・ 当座預金
・ 投資信託
・ 金融商品
・ 非課税制度(マル優、マル特)
を利用している人はスマホで手続きできませんので、来店が必要です。
特に融資取引では、住所や電話番号などの変更については、万一延滞や支払不能となった場合に備えて窓口で手続きが必要になります。
印鑑の変更(銀行印、実印の改印)も原則来店が必要ですが、銀行によって対応が違いますので確認してください。
スマホ手続きの見分け方
預金、公共料金自動引き落とし、カードローンや自動車ローンなど預金印で申し込める小口融資もこちらに含まれます。
いっぽう実印と印鑑証明が必要だった取引は、窓口でないと変更できません。
事業資金融資、住宅ローン、アパートローンなど実印を押した融資取引が該当します。
またマル優は国の制度に基づく非課税制度で、変更を簡素化できないので来店が必要になります。
投資信託などリスクを伴う商品を利用している場合も、変更手続きは簡素化しないのが一般的なので来店が必要になります。(執筆者:加藤 隆二)