マンションやアパート、戸建てなどの投資用不動産を購入したのはよいものの、都合よく借り手が見つかるとは限りません。
物件が古くなってくると1年以上借り手が付かないケースもよくあります。
空室・空き家を長期間放置すると思わぬトラブルが発生し、法的責任を追及されることもあります。
そうなると、赤字経営の痛手だけでは済まず、多大な経済的損失を被ることにもなりかねません。
空室・空き家の問題は、利回りだけを考えていたのでは見逃しがちになります。
この記事では、不動産投資においても意外に重要な「損切り」について考えてみたいと思います。
目次
空室・空き家を放置するのは非常に危険

空室や空き家を放置すると、建物や設備の劣化が急速に速まります。
誰かが住んでいれば、無意識のうちにも必要最低限のメンテナンスが日常的に行われるので劣化はさほど進みませんが、誰もいなくなると劣化が進むのです。
劣化すると資産価値が下がって借り手が付きにくくなり、家賃も下げざるを得なくなるでしょう。
しかし、問題はそれだけにとどまりません。
戸建てであれば、以下のような問題が起こりやすくなります。
・ 屋根瓦や壁の崩落
・ 不法侵入
マンションやアパートであれば戸建てよりは安心ですが、それでも水回りのトラブルはよくあります。
排水管内の水が干上がってしまうことで、配管が劣化して漏水事故が発生したり、下水が上がってきて悪臭が発生するといったケースです。
問題は、これらのトラブルによって近隣住民など他人に損害が発生した場合には、その損害を賠償しなければならないことです。
このような場合、民法717条1項によって所有者は無過失責任を負わなければなりません。
空室や空き家を放置することにはこんなにも大きなリスクがあるのです。
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。
ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
賃貸経営は「投資」 損切りの視点が重要

マンションやアパートの賃貸経営も不動産投資という「投資」です。
どんな投資にも損切りの視点は必要不可欠なのですが、こと不動産投資においては損切りの意識が薄い人が多いようです。
「長期的に見れば収益が出そうだから」
「売却するのも大変だから」
このような理由で損切り(売却)することに二の足を踏む人が多いと思われます。
たしかに、空室や空き家が発生したからといってすぐに売却していたのでは賃貸経営は成り立ちません。
しかし、不動産投資をする目的は収益を上げることにあるはずです。
節税や老後の年金代わりなどの目的を持っている人もいると思いますが、収益の上がらない物件を持っていても目的を果たすことはできません。
不動産投資において収益を左右する最大のポイントは、何と言っても物件選びです。
です。
特に空室や空き家状態が続く場合は、収益の低下に加えて損害賠償という法的リスクも抱えていますから、なおさら損切りの決断が重要になります。
損切りのタイミングは早い方がよい
投資における損切りは、以下の2点がポイントです。
2. 設定したルールを守ること
このように決めて、機械的に運用することで「あと少しだけ様子をみてみよう」と考えているうちに損失を拡大させてしまうことを防ぐことができるのです。
空室・空き家の損切りルールとその理由
不動産投資で空室・空き家が発生した場合の損切りルールとしては、
ということです。
賃貸には年に何度かの繁忙期がありますが、1年間通して借り手が付かなければその後も借り手が見つかる可能性は低いからです。
賃貸の繁忙期がいつなのかについては諸説ありますが、一般的には春の前(2~3月)と秋の前(8月下旬~10月上旬ころ)の年2回が繁忙期と考えられています。
特に2~3月の繁忙期に借り手が付かないのであれば、売却を考えてもよいかもしれません。
したがって
不動産は築年数が長くなればなるほど資産価値が下がるので、売却するなら早いに越したことはありません。
そう考えると、空室・空き家の損切りルールを設定するなら、
というのがおすすめと言えるでしょう。
投資金額の大きい不動産投資に「損切り」によるリスク回避は不可欠
空室・空き家対策としては、リフォームや設備の増設などによって物件の資産価値を高めることによって借り手を見つけるという方向性もあります。
もちろん、手持ち物件の状況や各自の資金計画に応じて利益の最大化を追及すべきなのですが、不動産投資は他の投資に比べて投下する資金が大きいため、失敗した場合のリスクが高くなります。
それだけに、損切りによってリスクを回避する必要性が高いことは忘れないようにしたいところです。(執筆者:川端 克成)