実は確定申告を提出している人は、意外と多いです。
平成30年分の所得税の申告書の提出件数は2,222万件で、日本人の5人に1人は確定申告をしている計算になります。
出典:平成 30 年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について(国税庁)
税務調査は無申告の人も対象となりますが、多くは申告内容に誤りがあった場合の指摘です。
しかし、指摘を受ける割合は非常に低く、そもそも、申告書の提出件数に対しての3%しか税務調査をしていません。
では、どうしてそこまで調査割合が低いのか、ご説明します。
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税務署は慢性的な人手不足で調査する職員がいない

所得税の申告書は、毎年2,000万件以上提出されます。
所得税の担当する部署は、税務署の個人課税部門の職員で、全国に1万人程度在籍しています。
1万人と聞くと多い感じもしますが、年間2,000万件の申告を処理しなければなりませんので、単純計算でも1人2,000件は申告書をチェックをすることになります。
また、申告書のチェックが終われば税務調査をすることになりますが、1日1件が限度です。
200日間調査をしたとしても、年間200件が1人当たりの調査件数の上限ですので、申告件数に対して調査割合が低いのは、調査をできる人員が不足しているからであり、今後も解消されることはありません。
所得税の税務調査は年間62万件行われている
税務調査の割合はわずか3%ですが、平成29事務年度に行われた調査件数は62万2,637件です。
また、申告書の提出件数は年間2,000万件を超えますが、多くは還付申告や納税額がない申告書です。
納税申告に限定すれば、申告書の提出件数は630万件程度となります。
つまり、納税申告のみに調査をしたと仮定すると、納税申告630万件のうち約62万件と、約1割の人が税務調査を受けた計算になります。
実際には還付申告の人も調査対象ですのが、税務調査を行っている件数自体は決して少なくはありません。
税務調査を受けた6割の人は修正申告書を提出することになる
調査対象になった場合の非違事項(間違い)の指摘割合は6割です。
出典:平成29事務年度 所得税及び消費税調査等の状況(国税庁)
税務署は実施できる調査件数が限られていますので、効率的な調査を心掛けています。
具体的には、調査によって指摘事項が明確である申告を優先的に調査します。
調査の指摘事項が明確であれば、申告の非違事項(間違い)の確認が容易ですので、指摘を受けた部分の修正申告書を提出してください。
調査に基づく修正申告には本税以外にもペナルティ(附帯税)が発生するので、余計に税金を納めることになります。
適正に申告すれば税務調査を怖がる必要はない

自営業をやっている人は、特に税務調査に敏感になると思います。
しかし、税務調査は面倒ですが怖くはありません。
なぜなら、税務署の指摘する内容は法律に基づくものであり、処分を下す場合でも理論的な根拠が必要だからです。
なんでもかんでも経費に入れている人は税務署の指摘を受けますが、経費に入れた理由を説明できれば税務署が無理やり経費を否認することはありません。
自分の身を守れるのは自分だけです。
税金は難解ですが、自分のために知識を身に付けましょう。(執筆者:平井 拓)